3月22日、HORIBAは経済産業省と東京証券取引所が共同で実施する「なでしこ銘柄」において、「準なでしこ」に選定されました。HORIBAでは2014年にダイバーシティを推進する「HORIBAステンドグラスプロジェクト※1」を立ち上げ、その活動の一つとして女性活躍推進にも取り組んでいます。
プロジェクトのワーキングメンバーであり、自身も仕事と子育ての両立をし、また管理職としても活躍する堀場製作所 グループ開発基盤強化部の鹿島 優子(かしま ゆうこ)に話を聞きました。
育児と仕事の両立で悩んだことや困ったこと、取り巻く環境の変化はありましたか?
第1子を出産し復帰した2012年当時は、現在のように共働きの親を支援する制度や仕組みが整っておらず、情報交換の場もありませんでした。育児と仕事の両立、働き方が全くイメージできておらず、自分が思い描く働き方の理想と現実に随分と苦しみました。ジレンマを感じながらも、成果を出せるように日々奮闘していたなかで、何気ない言葉に傷つくこともありました。時短勤務や頻繁に休みを取ることで、周りに迷惑をかけているだけで役に立っていないのでは…と自信がなくなり、好きだった仕事が楽しめなくなりました。そんなとき、心の支えになったのは社内の先輩方の存在でした。ママランチ会など、育児と仕事の両立のための工夫を共有する機会を作り、職場で困っていないかなど話を聞いてもらえました。成果を出しても、時短勤務ということで評価がされにくいことや育児時短制度についてなど、働き方や周囲との関係に悩んでいる女性は私だけではないと心強かったです。
第2子出産後に復帰した2014年にはステンドグラスプロジェクトが立ち上がり「ダイバーシティ」という言葉が社内でも使われるようになりました。国としても2015年に女性活躍推進法が制定され、第3子を出産して復帰した2017年は、制度面や社内の仕組みも、また職場の雰囲気も、制約があっても働きやすい環境が整ってきたことを実感しました。
管理職に就いたとき、不安や心配はありましたか?
管理職へ挑戦する話をいただいた時は、末っ子がまだ3歳でした。育児時短勤務中でもあり、「管理職が務まるのか、私でいいのか」という不安が頭をよぎりました。同じく子育てしながら管理職をされている女性上司が「誰かと比べるのではなく、自身の強みを活かしたマネジメントを磨き、貫けばよい」と背中を押してくれました。今でも悩んだときは相談しています。
育児と仕事の両立をするうえで、日々の生活で心がけていることやコツは?
日々の生活ではモードの切替えを大事にしています。お仕事モードとお母さんモード、それぞれのモードでベストを尽くす。これは私のメンタル面で非常にいい作用をしていて、仕事で嫌なことがあったときはお母さんモードに、家で嫌なことがあったときはお仕事モードに切り替えて忘れます。一回すっきり忘れることで、再チャレンジする元気が戻ってきます。あとは、徹底的な優先順位づけです。限られた時間のなかで最大の成果を追求するため、「やるべきこと」「やらなくてもいいこと」は潔く決めています。
ステンドグラスプロジェクトや会社の制度の活用エピソードを教えてください。
これまで、ステンドグラスプロジェクト主催の社外講師を招いたセミナーや研修にいくつか参加してきました。そのなかで、女性だから、子育て中だからと「無意識の偏見」で見えない壁を作って仕事にブレーキをかけていたのは、自分自身だという大きな気づきがありました。何かあれば、打ち合わせはリスケすればいいし、困った時は誰かに助けてもらえばいい。その代わり、平常時は周囲のサポートも引き受けて、全力で働く!アクセルが踏めるとわかってからの仕事は充実し過ぎて困るほどですが、毎日支えてくれる家族や職場の皆さんに感謝しながら過ごしています。
会社の制度や雰囲気が変わっていく様子をリアルタイムで感じてきたので、先輩方が違和感に声を上げ、切り拓いてくださった道を、今度は私が後に続く世代のために、切り拓いていく番だと思っています。
~これからのカギは、「無意識の偏見」を互いの理解でどう克服するか~
女性活躍やダイバーシティで感じる課題やこれからの働き方に必要なこと、めざすことをお願いします。
女性活躍やダイバーシティの取り組みについて「フルタイムで働けない事情がある人たちに配慮、支援するための活動」と感じている人が一定数いるように思います。また、「女性のための活動」と思っている人もいるかもしれません。実は私がそうでした。さまざまな意見や価値観、考え方があるなかで、私自身も女性活躍やダイバーシティを論じることの難しさを常々感じています。これまでのステンドグラスプロジェクトの取り組みで、Good Place勤務制度※2(テレワーク制度)や、時間単位有休など、多様な働き方を支える制度も整い、ダイバーシティは重要だという理解も広がっています。しかし、思い込みや先入観は、「無意識の偏見」として依然存在し続けているように思います。
今後は女性に限らず、あらゆる個性に対し、このような「無意識の偏見」をいかに克服し、思い込みや先入観に捉われない働き方、職場づくりで、ダイバーシティ&インクルージョン(組織内にいる誰もが「その組織に受け入れられ、認められていると実感できる状態」)を実現できるかがカギとなると考えています。現在、私はステンドグラスプロジェクトのワーキンググループで活動をしています。めざす姿は「一人ひとりがホリバリアンであることに誇りを持ち、お互いを認め合い、新しい働き方(ワークライフバランスやリモートワーク)に合った 「おもしろおかしく」を発揮できる組織風土が、不確実性が高まる社会のさまざまな変化・逆境を乗り越え、成長し続ける原動力となっている状態」です。今後求められるのは、ダイバーシティの先のインクルージョンです。インクルージョンを実現するためには、お互いの価値観を知り、認め合うための相互理解が欠かせません。ここで軸になると考えているのは、年齢的にも立場的にも中間に位置する世代。「組織風土は日々のできごとを通して生まれるもの、感じるもの」と仮説を立てて、ワーキンググループのメンバーとともに、この層にアプローチできる施策を考えてきたので、今後実行に移していきます!
(注釈)
※1 HORIBAステンドグラスプロジェクト:さまざまな色や形、大きさのステンドグラスが集まり1枚の美しい絵になるように、社員一人ひとりの強みや個性、才能を発揮することで、より強い組織を実現することを本プロジェクトの目標としています。2014年に発足し、2017年に組織化しました
※2 Good Place勤務制度:本制度は、2019年よりスタートしたテレワーク制度です。
詳細はこちらをご覧ください。国内グループの全社員にテレワーク拡充 - HORIBA
Profile
(株)堀場製作所 ビジネスインキュベーション本部 R&D Planningセンター
グループ開発基盤強化部 R&D Process&Searchチーム
チームリーダー 鹿島 優子(かしま ゆうこ)
入社15年目。約10年、開発業務の効率化に取り組み、その間に3度の産前産後休暇・育児休暇を取得。復帰後も開発プロセス改革業務に従事。HORIBAのダイバーシティを次のステージに進めるべく、ステンドグラスプロジェクトワーキンググループの一員としても活動。2021年1月から管理職。