「従業員の健康推進は、日々の仕事のなかで社是『おもしろおかしく』を実現するために必要なこと。その施策こそおもしろおかしくなければ」と語るのは、HORIBAグループ(以下、HORIBA)の健康経営推進の中核を担う福利厚生会社ホリバコミュニティの上村 芳加。
堀場製作所は2020年に2年連続で健康経営銘柄の認定を受け、2021年には5年連続で健康経営優良法人の認定を受けました。
今回はHORIBAが健康経営に力をいれる背景やその取り組みについて、上村に聞きました。
株式会社ホリバコミュニティ 取締役統括部長 上村 芳加
HORIBA Talk:HORIBAが健康経営に力を入れたきっかけを教えてください。
「健康経営」は今では馴染みのある言葉ですが、私が堀場製作所の総務部で安全衛生担当をしていた10年程前は、社内での認知度はそれほど高くなく、安全衛生は一部の管理部門が担う業務と認識されていました。しかし、働くうえで安全や健康を維持することは、従業員にとっても会社にとっても重要なこと。「まずは現場の意識を変えなければ」と、関係者や経営トップと問題意識を共有しました。
そして、2012年に従業員の心身の健康を大切にし、明るく活気ある職場づくりの推進をめざす「こころとからだの健康づくり」宣言が経営トップによって発布されました。創業時から「人」を大切にする文化が根付いていたこともあり、本宣言を機に社内の意識改革が進み、健康推進に対する取り組みが一気に加速したのです。当時、経営トップ自らが従業員の健康推進の指揮を取るのは珍しいことでした。
HORIBA Talk:健康推進のために、どのような施策を行っていますか。
生活習慣の見直しと改善のきっかけづくりを目的とした全社活動のヘルスアップチャレンジや、食堂から健康づくりをサポートする給食委員会の設立、心身のリフレッシュとして自社農園「HORIBA Blueberry Farm」での農作業体験といったさまざまな施策を行っています。
HORIBA Talk:ヘルスアップチャレンジについて詳しく教えてください。
2011年から始まったヘルスアップチャレンジは、毎年3~5ヵ月で、運動の習慣化、禁煙、メンタルヘルス対策など参加者自身がテーマを設定して取り組みます。
活動開始から10年目の節目である2020年はさらに取り組みを強化し、約2,000人が参加する活動となりました。日々の活動結果をポイント制として獲得ポイントを競うなど、楽しく活動ができるように趣向を凝らしています。
参加者全員が本活動を象徴するロゴマークを名札に付けて取り組み、「どのような活動をしているの?」と従業員同士のコミュニケーションにつながる仕掛けも。
ヘルスアップチャレンジのロゴマーク
「Up」の持つ上向きのイメージで取り組みの効果をポジティブに表現
さらには、ヘルスアップチャレンジに取り組む経営層のインタビュー記事を社内のイントラネットで紹介することや、際立った従業員の活動を奨励する役員賞を設けました。経営トップも本気で従業員の健康推進に取り組んでいることを伝えたいというおもいからでした。
応募テーマはさまざまですが、家族で取り組まれる事例も多く見られました。運動不足を解消するためフラフープやランニングを家族みんなで行うことで、共通の話題ができ、コミュニケーションが深まったという嬉しい話も聞かせてもらいました。
グループCEOの堀場厚と健康経営について意見交換
ヘルスアップチャレンジに取り組む役員の様子も社内イントラネットで共有し、一体感を醸成(写真は腹八分目に取り組む役員)
HORIBA Talk:給食委員会についても詳しく教えてください。
給食委員会とは、2008年から始まった食堂から健康づくりを促進するためのHORIBA独自の委員会です。給食委員会はHORIBAグループ各社の総務部門や安全衛生担当者、労働組合などの職場の代表者、ホリバコミュニティ、食堂業者、健康保険組合、健康管理室、の「6人7脚体制」で構成され、2か月に1度、食堂の利用状況や従業員の要望を共有するほか、新メニューの提案、改善点などを議論しています。
HORIBAの食堂では、健康に良いものを食べて健康改善につなげたいという考えのもと、毎日650±30キロカロリーの範囲でバランスの良い定食メニューを提供しています。実際に活動量計で測定した数値を参考にして、食事で必要なカロリーを計算しています。食堂におけるカロリーコントロールについては、大学との共同研究によって、食堂を利用する 20-30 代の男性肥満者のうち、食堂の定食購入頻度が高い社員の体重増加率が低いという結果もでています。
テレワークが中心となる者や食堂のない拠点に勤務する者に対して、社内のイントラネットでの健康推進コラムや個別の健康推進サポートも行っています。
給食委員会の様子
HORIBA Talk:コロナ禍において従業員の健康をサポートする取り組みはありますか?
社内のイントラネットで、テレワークに適したデスク周りの環境整備やストレッチ方法といった健康推進に関するコラムを定期的に紹介しています。メンタルヘルスケアを行うため、定期的なアンケートや研修、相談窓口も設けています。
また、先ほどお話ししたヘルスアップチャレンジでもテレワークが増えたことによって、自主的に運動不足解消をテーマに挙げる従業員が多くいました。
HORIBA Talk:健康経営を推進するうえで大切にしていること、今後の展望を教えてください。
従業員の健康は、社是「おもしろおかしく」を実現するための土台です。その施策こそ、おもしろおかしくなければ、続かないと思っています。従業員があっと驚くようなこと、今まで他の企業が行っていなかったことなど、関係者と協力し合って健康経営の面でもパイオニアになれると良いなと思っています。
また、我々の働き方が多様化してきたことに伴って、一口に健康といっても、人それぞれ健康に対する考え方や取り組み方が異なります。一律に「運動をしよう」「食事に気をつけよう」と言うだけではなく、介護や育児、コロナ禍による影響など、個々のバックグランドに応じた多様なニーズに応えられるアイテムを準備していきたいですね。より多くの従業員と一緒に施策を考え、実践していきたいです。
株式会社ホリバコミュニティとは
1978年に福利厚生の公平分配という理念のもと発足したHORIBAの従業員を対象とした福利厚生会社です。株主の多くがHORIBAの従業員であることも特徴です。「食」の観点から従業員の健康をサポートする「給食委員会」、福利厚生や研修機能をもつ自社農園の運営、保険、旅行代理店機能などを有しています。HORIBAグループで連携しながら社是「おもしろおかしく」を実現するための重要な役割を担っています。