2021堀場雅夫賞:募集分野と受賞者について

野口 慎太郎* | |   技術論文

*株式会社堀場製作所 

2021年の堀場雅夫賞は「ライフサイエンス分野の分光分析・計測技術」をテーマとして開催することになりました。本来は昨年開催予定でしたが,2020年初めから世界的に大流行したCOVID-19の影響で延期となり本年改めて開催するという異例の出来事でした。本稿を執筆している現在では先進国を中心に少しずつワクチン接種が進んではいるものの,まだまだ世界的な危機的状況は続いています。COVID-19の蔓延は社会的にも様々な変化をもたらし,我々の日常生活,ビジネス形態なども大きく変わりました。その過程で,研究者だけでなく世界中の人々が感染症や生命,ワクチン,医薬品に関する事柄に従来とは異なる大きな関心を持つようにもなりました。そのような状況で,ライフサイエンスに関連した研究を堀場雅夫賞の募集対象に設定したことに大きな意義を感じながら活動してきました。
今回の堀場雅夫賞の対象領域はCOVID-19の蔓延以前から社会的ニーズとなっている,バイオ医薬品を始めとした新しい医薬品モダリティの開発と生産に加え,COVID-19の蔓延によって大きな関心事となったワクチンや治療薬の開発と生産に関する研究としました。この領域は人間の健康や生命に直結するものであり,世界的に関心と投資が集まっている領域でもあります。今回の賞がこの領域の研究開発を加速させるためのネットワークの構築や拡大に繋がるきっかけとなることを期待しています。また,技術面ではライフサイエンス分野で汎用的に使用されている分離分析や質量分析などとは異なる分光技術に焦点をあてました。さらに,研究開発と生産という2つの重要な要素が繋がることによって初めて広く世界の人々の健康な生活に貢献できるものになると考え,研究内容が社会実装に繋がることも重要なポイントとして掲げました。具体的な趣旨と対象技術分野は以下の通りです。