AI駆動型の高速細胞形態ソーター群とその応用開発

太田 禎生* | |   技術論文

*東京大学

たくさんの細胞を,高精度かつリアルタイムに形態情報解析しながら分離を行うセルソーター※1の実現が,長い間望まれてきた。しかし従来顕微鏡を用いた細胞分離は低速であり,既存フローサイトメトリー技術※2で得られる情報は光強度総量に限定されているため,その両立は容易ではなかった。そこで私たちは,「人を介さない画像解析には画像は必ずしも必要ない」という逆転の発想に基づいた,ゴーストサイトメトリー法を着想し,実験的に実証した。マイクロ流路中の細胞の動きを利用して細胞画像情報(信号)を計測した上で,画像の再構成は行わずに直接AIで高速判別すると言うアプローチにより,高速・高精度な細胞の分離を実現した。本技術は,希少細胞を用いた医療診断,細胞解析に基づく創薬スクリーニングなど,バイオ・細胞医療分野への幅広い応用を,期待できる。

※1 セルソーター : 種々の細胞をそれぞれの特徴に基づき選択的に分取する装置。
※2 フローサイトメトリー技術 : 流体中を流れる細胞に光を当て,光散乱強度や蛍光強度を用いて分析してきた技術群の総称。