顕微レーザラマン分光法によるラット頭頂骨無機質成分の測定

田村典洋*1 筧 光夫*1 伊藤久昭*2 横山政昭*3 | |   技術論文

*1明海大学、*2城西大学、*3株式会社堀場ジョバンイボン

生体アパタイトの形成過程において、その前駆物質としてamorphous calcium phosphate(ACP)、brushite、 octacalcium phosphate(OCP)の存在が指摘されている。しかしながらこれらの前駆物質の生体試料内での存在確認はほとんどなされていない。生体アパタイト前駆物質のin vivo試料での検出・確認を目的として、異なる成長段階のラットの頭頂骨を試料として顕微レーザラマン分光法による検討を行った。ラット頭頂骨試料および合成標準試料ともに低温プラズマ灰化処理を行ったhydroxyapatite(HA)、β-calcium pyrophosphate(β-CPP)およびβ-tricalcium phosphate(β-TCP)ではプラズマ灰化処理による変化はみられなかった。一方、OCPおよびbrushiteの場合は灰化処理により変化が観察された。プラズマ灰化処理した胎児および新生児試料から得られたラマンスペクトルは、同様に灰化処理したOCPのラマンスペクトルとよく一致した。また、6日齢の試料ではHAに類似したスペクトルが得られ、12週齢の試料ではHAに特徴的なスペクトルが得られた。さらに1000℃熱処理した新生児試料のスペクトルはHAに基づくピークおよびOCPを1000℃で熱処理したときに得られるβ-TCPに基づくピークを示した。本研究においてラット頭頂骨の形成初期にはHAの前駆物質としてOCPの存在を示唆する結果が得られた。