原子分解能電子顕微鏡解析で先導する新しい窒素還元サイトのデザイン

佐藤 勝俊* | |   技術論文

*東海国立大学機構 名古屋大学

高活性な新規触媒の開発のためには,活性点の構造と化学状態を詳細に解析して作用機構を明らかにし,新しい活性点のデザインへと結びつける必要がある。我々は近年進展が目覚ましい収差補正透過型電子顕微鏡と各種分光検出器による観察・分析技術に注目し,大気非暴露分析の手法を組み合わせて,「触媒の活性点そのものを原子レベルの分解能で直接解析」する手法として確立した。この手法を用いて,再生可能エネルギーの利用を志向したアンモニア合成触媒のための窒素還元サイトの研究に取り組み,高活性な窒素還元サイトの実現に必要な構造と化学状態の相乗的な作用機構を明らかにした。さらには顕微解析の結果から着想を得て,実用に適した酸化物系の材料をベースにした世界最高レベルの活性を示す触媒を複数開発した。これらの触媒の開発はアンモニアの水素キャリアとして利用拡大と,水素流通ネットワークの構築につながるものであり,将来のカーボンニュートラル社会構築に資する重要な成果である
といえる。