特別寄稿:カリフォルニア州におけるマイクロプラスチック法規制と規制推進体制

スコット マーティンデール*1,スティーブン B ワイスバーグ*2,スコット コフィン*3 | |   54

*1 *2 Southern California Coastal Water Research Project Authority, Costa Mesa, CA
*3 California State Water Resources Control Board, Sacramento, CA
マイクロプラスチックは,環境中の至るところに存在し,生物はプラスチック粒子にさらされ続けていると言える。マイクロプラスチックの健康に対するリスクは未だ十分には解明されていないが,食物摂取により生体内に蓄積し,その表面に付着した汚染物質を体内に取り込む媒体として働くことも考えられ,サイズの小さいマイクロプラスチックにおいては,組織や臓器にまで取り込まれる可能性がある。これらの環境リスクを包括的に評価するため,マイクロプラスチックの発生からその末路を的確に把握してゆくことが重要である。カリフォルニア州は,環境モニタリングの軸となる測定技術を精査,標準化し,実装するという国際的な取り組みを牽引している。例えば,水路のごみ削減のため米国内初のTMDL(Total Maximum Daily Load:1日の最大負荷量)規制制定や,多くの発生源対策の実施など,あらゆる種類のごみ汚染に対策を行ってきた。このような歴史に裏付けられるように,カリフォルニア州はマイクロプラスチック問題においてもリーダーシップを発揮している。2018年,カリフォルニア州議会は,マイクロプラスチック管理戦略の開発を行う法案を,「飲料水」と「カリフォルニア沿岸海域」のそれぞれを対象にして可決した。この2件の法律は,国際的な科学コミュニティが,カリフォルニア州のマイクロプラスチック管理戦略に沿った,明確で実用的な推奨事項を策定するための行動を促すものになっている。すでに,水,堆積物,および組織マトリックス中のマイクロプラスチックレベルを測定するためのさまざまな手法と機器を比較・評価するために,1年にわたる研究が開始されている。カリフォルニア州は,この研究を進めることで多様な水棲環境でマイクロプラスチックを効果的に管理するための,科学に基づいた包括的な手法で策定を進めようとしている。