特別寄稿:海水中のマイクロプラスチック分析

エーミー ラシャー* | |   54

*Norwegian Institute for Water Research

〜比較データ生成のために〜

マイクロプラスチックによる環境汚染について科学的に検証し,適切な規制の制定や社会の関心に答えるためには,マイクロプラスチック試料を適切に分析・評価することが重要である。適切な分析・評価のためには,分析品質が担保されている統一した手法が重要であるが,特に海洋マイクロプラスチックの試料採取は今まで様々な手法で行われてきたため,そのままデータの比較ができないことも多い。例えば,最も広く利用されている野外での試料採取の手法である表層水のネット採取法(Surface Net Sampling)では,直径300μm未満の粒子のデータ比較を行うことができない。サンプリングポンプ等を用いて自動化を図る場合には,手法(メソッド)の検証と他の手法との整合性(調和)が必要になる。さらに,検出限界,採取作業費用,装備の技術的レベルが異なる様々な分析アプローチが存在する。手法の違いによるデータの相互比較が容易でないという問題は,海洋環境におけるマイクロプラスチックのグローバルレベルでの理解をより難しくしている。しかし,比較検証を意識した上で,より自動化された採取方法,前処理方法,最終分析手法の改善が日々継続的に行われており,今後の成果が期待される。比較検証できるデータを取得するためには,最低でも採取パラメータ,分析プロセス,そしてデータ処理を高レベルの品質保証/品質管理(QA/QC)を細心の注意を払って行う必要がある。