特集論文:マイクロプラスチック汚染の把握と環境影響評価

ブリジェット オードネル* | |   54

*Manager of Raman Applications HORIBA Instruments Incorporated (HII)
人々が日常的に用いるプラスチックの生産量が増大するとともに,それらをどのように廃棄するかという課題が付きまとうようになってきた。生産されるプラスチックのうちの僅かなものは再利用されるが,残りの大半は埋め立てられるか,マイクロプラスチックとして知られる小さい断片となって我々の環境中に残留することになる。マイクロプラスチックは海洋や大気などあらゆる環境に存在するのみならず,生物の組織にも存在している。そして,生体に存在するマイクロプラスチックの物理的,或いは化学的毒性についての報告例が挙げられる。この問題に関する理解を深める為には,サンプリング方法,抽出方法,そしてプラスチック種類の同定方法の標準化が重要と言える。加えて,実験室レベルでの研究は,人体や環境に影響を与えるマイクロプラスチックの量を理解する上で欠かせない。トロント大学はマイクロプラスチックの環境や生体にあたえる影響や脅威について,最先端の研究を進めている研究機関として世界的に知られている。本項では,この分野における幾つかの報告事例について,主にトロント大学Chelsea Rochman教授による研究成果を中心に紹介する。