特集論文:チップ増強ラマン分光法 増加するバイオ分野での研究事例

Marc CHAIGNEAU*1,Maruda SHANMUGASUNDARAM*2,Fran ADAR*2 | |   49

*1 HORIBA FRANCE SAS,*2 HORIBA Instruments Inc.
ラマン分光法は,分子構造に対応する情報を物質の指紋として取得できるという特徴があるが,生物学,医学などの分野では,①ラマン散乱光の本質的な微弱さにより十分なS/N比が得られない,②光の回折限界(空間分解能〜0.5λ)に制約されるといった課題がある。実際,回折限界を超えるナノメートルレベルの高い空間分解能が必要なケースは多く,これが実現すれば分子一個を見分ける空間分解能で化学的情報を取得できる可能性がある。チップ増強ラマン分光法(TERS)と呼ばれる手法によって,こうした空間分解能の向上が実現できるようになった。