巻頭言: 多様なコア技術をベースに,激動する市場の変化に柔軟な対応を

足立 正之* | |   50

* 株式会社 堀場製作所 代表取締役社長
博士(工学)

本年よりスタートした弊社の新体制において,現在の中長期経営計画の更なる強化を目指しています。なかでも,激動する市場環境の中で,HORIBAグループの持つ多様性を最大限に活用する為に,5つのビジネスセグメント(自動車/環境・プロセス/医用/半導体/科学)の融合を意味する“クロスセグメント”というスローガンを掲げています。例えば,弊社の主力製品である自動車排ガス分析計は,そもそも医用の呼気ガス分析計をカスタマイズして始まっていますし,双璧となる主力製品の半導体製造装置向けマスフローコントローラは,ガス分析計の濃度校正装置が起源です。既成概念にとらわれず柔軟な対応を実現した故に事業が発展した好例となっています。5つのビジネスセグメントには,それぞれのコア技術や顧客とのコンタクト,そして生産やサービスを含む多様性に富んだビジネスリソースがグローバルに展開しています。これらのリソースをビジネスセグメントの隔てなくHORIBAグループとして最大限に活用し,急速に変化する市場に新しい価値を提供しようとするのが,このクロスセグメントという概念です。

言うまでもなく,近年のデジタル技術の圧倒的な革新によって,人々の生活や産業が大きく変化しています。同様に,本号の「低炭素社会と環境改善」というテーマに関した社会変化を見ると,発電・送電・蓄電と,家や工場・オフィスでのハイブリッド化が進み,モビリティの世界を含めコネクテッド社会やバッテリマネジメントが広がると見られています。

途上国では石炭火力が増える見込みであるものの,先進国の燃焼によるエネルギー変換には減少傾向が見えています。HORIBAグループでは,発電の側面で,環境・プロセス事業における計測制御が重要な役割を果たしています。また,蓄電の側面では,素材・表面を分析する科学セグメントの先端分析装置がバッテリー技術の進歩に役立っています。そして,自動車の電動化では,2015年に買収したホリバMIRA社が,バッテリマネジメントやサイバーセキュリティなどの技術を,パワートレーンや車両のエンジニアリングに加えて幅広く展開しております。

このようにHORIBAグループは,化石燃料の燃焼から多様なエネルギー源と電気を媒体にした次世代エネルギーマネジメントに欠かせない存在になろうとしています。環境エネルギー分野に限らず,激動する市場の変化に対し,グローバルで柔軟・迅速に対応していくことが大きなテーマとなります。半導体生産プロセスの微細化や立体化,自動車・医療・各種産業プロセスにおけるAI(人工知能)の導入,IoT(Internet of Things)化は,HORIBAグループのビジネスに直接大きく影響します。HORIBAグループが持つあらゆる可能性を高い視点から見直し,新たなステージへ突入したいと思います。