『2008堀場雅夫賞』受賞者決定/授賞式は10月14日

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─社外の「分析計測技術」研究者の奨励賞─

当社は、国内外の大学または公的研究機関の研究開発者を対象とした、「分析計測技術」に関する研究奨励賞『堀場雅夫賞』の2008年受賞者をこのほど決定しました。この賞は2003年に創設され、5回目となる今回の選考テーマは、“内燃機関”です。本年4月から5月にかけて公募し、海外含め18件の応募がありました。“内燃機関”分野で権威の先生など7名で構成する審査委員会が、将来性や独創性、ユニークな計測機器への発展性に重点を置いて評価し、以下の4名に受賞者を決定しました。受賞記念セミナーならびに授賞式は学究界からの参加者もご招待し、10月14日(火)京都大学芝蘭会館にて行います。

 

受賞者と受賞研究内容

(2008堀場雅夫賞受賞者)

  • 明治大学 理工学部機械情報工学科
    相澤 哲哉(あいざわ てつや)氏
    『ディーゼル噴霧火炎内すす生成過程のレーザー計測』
     
  • 米国 ニューヨーク州 ブルックヘブン国立研究所
    オルファート・ジェイソン氏
    (Brookhaven National Laboratory
    Dr. OLFERT, Jason)
    『内燃機関から排出されるナノ粒子の質量分析装置の開発』
    (「A New Instrument to Measure the Mass of Nano-particles from an Internal Combustion Engine」)
     
  • 米国 ウィスコンシン州
    ウィスコンシン大学マディソン校
    ロサマー・デイヴィッド氏
    (University of Wisconsin-Madison
    Dr. ROTHAMER, David)
    『HCCI 燃焼における残留ガスおよび温度の同時可視化』
    (「Simultaneous Imaging of Exhaust Gas Residuals and Temperature During HCCI Combustion」)
     

(特別賞受賞者)

  • 岡山大学大学院 自然科学研究科
    河原 伸幸(かわはら のぶゆき)氏
    『点火プラグ実装型燃料・残留ガス濃度計測センサシステムの開発』

 

参考資料

堀場雅夫賞について

本賞は計測技術発展のため、2003年5月に当社創業者の名前を冠して創設した、社外対象の研究奨励賞です。毎回、対象テーマを計測の要素技術から選定し、単なる助成金にとどまらず受賞研究の実用化を支援するのが特徴です。HORIBAグループの主力製品群となっている自動車排ガス分析装置と関わりの深い「内燃機関」を本年のテーマとすることで、学術的・産業的にも価値の高い同技術の可能性を追求しました。本年4月1日から5月30日まで公募し、計18件(国内11件/海外7件)の応募がありました。

2008年の受賞者4名(特別賞受賞者を含む)は、その応募の中から、画期的でユニークな分析・計測技術の創生が期待される研究開発に従事し、将来の分析計測技術発展の担い手になるという観点で、実績と将来性を審査委員会で審議し選考されたものです。

 

[2008堀場雅夫賞 審査委員会 委員一覧](敬称略、順不同)

名誉審査委員長:
 堀場 雅夫(株式会社 堀場製作所 最高顧問)
審査委員長:
 堀場 厚(株式会社 堀場製作所 代表取締役社長)
副審査委員長:
 神本 武征(かみもと たけゆき)
 東京工業大学 名誉教授
審査委員:
 藤本 元(ふじもと はじめ)
  同志社大学 理工学部 教授
 大聖 泰弘(だいしょう やすひろ)
  早稲田大学大学院 創造理工学研究科 教授
 手崎 衆(てざき あつむ)
  富山大学大学院 理工学研究部 教授
 米国 ウィスコンシン州
 ウィスコンシン大学マディソン校 教授
  デイヴィッド・イー・フォスター氏
  (Prof. David E. Foster, Phil and Jean Myers Professor of Mechanical Engineering, Engine Research Center, University of Wisconsin Madison)
 足立 正之
  (ホリバ・インターナショナル社(米国) 社長)
 木原 信隆
  (株式会社 堀場製作所 自動車計測開発部部長)

 

授賞式について

本賞の授賞式は、創業者堀場雅夫の母校で、創業当時「産学連携」の礎となった京都大学の施設内(芝蘭会館)で行います。受賞者による講演やポスターセッションを通じて、研究内容を広く社会にアピールする予定です。

日程:
 2008年10月14日(火)
場所:
 京都大学芝蘭会館
 (京都市左京区吉田牛の宮11-1/TEL 075-771-0958)

【2008 堀場雅夫賞授賞式プログラム(予定)】

第一部:
 受賞記念セミナー(15:00~)

  • 受賞者講演:受賞者の4名
  • 堀場雅夫講演:当社最高顧問 堀場雅夫 医学博士
    (堀場雅夫賞 名誉審査委員長)
  • ポスターセッション
    (受賞者の研究内容についてのポスタープレゼンテーション)

 

第二部:
 授賞式 (17:30~)

  • 受賞研究紹介
  • 賞状・副賞授与

 

第三部:
 受賞記念パーティー(18:15~)

 

受賞者ご紹介

  • 明治大学理工学部機械情報工学科
    専任講師 相澤 哲哉氏(38歳)
    「ディーゼル噴霧火炎内すす生成過程のレーザー計測」
    レーザ誘起蛍光(LIF)法およびレーザ誘起赤熱(LII)法を用いてディーゼル噴霧火炎中のすす前駆物質とすす粒子の同時2次元可視化をおこない、すすの生成領域・時期を特定した。さらに、多波長レーザを光源とする励起発光マトリクス(EEM)法を新たに開発し、これを噴霧火炎に適用した。これにより、燃焼の進行に伴って多環芳香族炭化水素(PAH)の多環化、すす粒子への転化がおきることが明らかになった。本計測法により得られる知見は、すす排出予測モデル構築の基礎として重要であり、低エミッションエンジンシステムの実現に大きく貢献することが期待される。
     
  • 米国 ニューヨーク州 ブルックヘブン国立研究所
    研究員 オルファート・ジェイソン氏 (30歳)
    (Brookhaven National Laboratory, Research Associate
    Dr. OLFERT, Jason)
    「内燃機関から排出されるナノ粒子の質量分析装置の開発」
    「A New Instrument to Measure the Mass of Nano-particles from an Internal Combustion Engine」
    エンジンから排出されるナノ粒子の質量分布を計測できる、クエット遠心粒子質量分析(Couette CPMA)法を開発した。この方法は、従来のエアロゾル粒子質量分析(APM)法にクエット流れを導入する改良を加え、粒子ロスの低減を実現したものである。Couette CPMAで得られる質量データを微分型電気移動度分析法(DMA)などで得られる粒子径データと組み合わせることで、粒子の有効密度とフラクタル次元を求めることができる。ナノ粒子の排出質量計測手法として非常に有用であり、ナノ粒子の健康影響評価や後処理装置の開発などに大きく貢献する可能性がある。
     
  • 米国 ウィスコンシン州
    ウィスコンシン大学マディソン校
    准教授 ロサマー・デイヴィッド氏(31歳)
    (University of Wisconsin-Madison
    Dr. ROTHAMER, David)
    「HCCI 燃焼における残留ガスおよび温度の同時可視化」
    「Simultaneous Imaging of Exhaust Gas Residuals and Temperature During HCCI Combustion」
    2波長のレーザを用いた平面レーザ励起蛍光(PLIF)法を予混合圧縮着火(HCCI)エンジンに適用し、エンジン筒内の残留ガスと温度の分布を連続的に計測する技術を確立した。この技術によれば、筒内の排気再循環(EGR)の状態や温度の変化を、吸気から圧縮・膨張工程にわたって2次元画像として可視化でき、バルブ動作のタイミングなどのパラメータによる影響の解析も可能である。高効率と低エミッションを両立しうる次世代エンジンとして注目されるHCCIの研究に対して、実用化に向けた燃焼解析手法を提供できる技術として期待される。
     
  • 岡山大学大学院自然科学研究科
    准教授 河原 伸幸(38歳)
    「点火プラグ実装型燃料・残留ガス濃度計測センサシステムの開発」
    光ファイバ・サファイアレンズ・金属ミラーを組み合わせ、エンジン点火プラグ近傍の燃料濃度・CO2濃度を計測できる点火プラグ埋め込み型赤外センサシステムを開発した。このセンサシステムをロータリーエンジン、高過給ディーゼルエンジンなどの実用機関に適用し、点火プラグ近傍の燃料・空気の混合気形成過程、点火時期での燃料濃度と初期燃焼期間などを明らかにした。本手法では、エンジンを改造することなく、燃焼に大きく影響するプラグ近傍の燃料濃度・CO2濃度を計測できる。エンジンの熱効率を飛躍的に向上させるための研究開発への応用が期待される。