微生物と最先端設備を用いて 土と生態系を活かした有機農場を運営

京都で有機農法・自然農法による野菜作りと生産技術開発を行う株式会社オーガニックnico(以下、オーガニックnico)様では、ワケンビーテック株式会社が販売する菌根菌と自社開発の最先端設備、技術を用いて、環境負荷が少なく、品質、生産性の高い有機農場を運営されています。どのように微生物を活用されているか、オーガニックnico アグリサイエンス部長、首席研究員である鷲田治彦様にお伺いしました。


京都・大原野の有機農場

当社の圃場(ほじょう)は有機JAS認証を取得しており、化成肥料は使用していません。有機JAS認証圃場で、有機JASで使用を認められた資材を用いて栽培されたものをオーガニックと表示することができます。認証を取得するためには、3年以上化成肥料および化学農薬を使っていない、1m以上他の畑から離れているなど、非常に厳しい管理が求められます。殺虫・殺菌用資材も有機JAS認証機関が指定するものに限られ、また、年に1度、認証機関による検査を受ける必要があるため、有機栽培で品質・量ともに確保し、収益も得て農業として営んでいくことは一般の農家にとって非常に高いハードルになっています。オーガニックnicoの名の由来は、国内有機農産物のシェアを現在の1%から25%まで引き上げて有機農産物が当たり前になるようにしようという取り組みを、2525(ニコニコ)運動と呼んでおり、その「ニコ」からnicoという名前にしました。これを達成するための施策の一つが微生物の利用です。

ベビーリーフのトレイ栽培では、収穫した土は微生物で分解しており、土を循環させて使用しています。冬は1か月、夏は3週間ほどで水はけと通気性の良い豊かな土に変わります。微生物ごと野菜を食べるので、人の健康に良い影響があるかもしれません。

また、環境制御装置「Harmony」を自社開発しました。太陽光を上手く取り入れ、温度など植物の成長に必要な光合成に適した環境、条件を整えます。これにより、同じように管理し、肥料をあげていても収穫量が増加します。また、収穫量予測システム「nico cycle」では天気、温度などの気象データから日射量の予測をすることもできます。

他にも土の状態や生産量などさまざまなデータをとって管理しており、HORIBAのコンパクト水質計 LAQUAtwin(ラクアツイン)では、土のpH、電気伝導率(EC)を測定しています。土壌の栄養は窒素量にも依存しており、ECと窒素量は相関性があり、ECを測ればおおよそ土に含まれる栄養度がわかります。例えば、いちごの栽培地で土壌のECを1週間に一度測定し、EC値の推移とイチゴの生育状況、天候などを照らし合わせ、施肥量および導入タイミングを決めています。


コンパクト水質計LAQUAtwin(ラクアツイン)

有機栽培農家として生計を立てていくためには、他の農家さんと同様に収穫量を多く、コストを下げて利益がしっかり出ているということが非常に大事です。管理技術や設備の向上で、品質や収穫量も向上してきました。微生物などを用いながら、試験、研究を繰り返して試行錯誤しながら取り組んでいます。今後も微生物や測定データなどを活用して、環境負荷が少なく、さらに品質と生産性を高めるとともに、自社の管理技術や設備を他の農家さんにも展開していきたいと思います。

 

オーガニックnico様の有機野菜を購入できるお店、ウエブサイトは下記で紹介されています。
オーガニックnico 販売店情報

自社農場「HORIBA Blueberry Farm ‟Joy and Fun(ジョイアンドファン)”(滋賀県高島市安曇川)」で行っている微生物を用いた土壌改良の実証実験については、以下記事をご覧ください。
自社農場で微生物を用いた土壌改良の実証実験に協力

 

微生物で分解中の土                      
環境制御装置「Harmony」を導入したビニルハウス       
トレイ栽培をしているベビーリーフ。 柔らかく、しっかりした味で評判です。   

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