HORIBAでは、開発、生産、営業、サービスなどすべての社員が「お客様のお悩みを解決したい」というおもいで、製品やソリューションの開発・提供に取り組んでいます。
ここでは、お客様がお持ちの課題を解決するために取り組んでいる社員のインタビューをご紹介します。同じお悩みをお持ちの皆様にとって解決の一助となれば幸いです。
今回は、大気環境をリモートでモニタリングするソフトウェア「Eco-WEB」を搭載した「PM2.5自動成分分析装置 PX-375」の製品納入を担当した開発者の香川に話を聞きました。
化学物質の「多点発生源の可能性」と「膨大なデータ量」に対応するために
今回納入したお客様の工場では、約2年前から「PM2.5自動成分分析装置 PX-375」を使用されています。PX-375を用いて操業区域内の大気環境を測定し、環境保全や市街地への化学物質の移流を防ぐ対策をとられています。PX-375納入前は、24時間測定を行い、1日に1回、手分析で結果を取得されていました。しかし、工場の操業状態が常に変化するなかで、1日に1回の手分析ではどの時間帯にどこでどんな物質が発生したかの特定が困難とのお悩みをお持ちでした。そこでPX-375をご提案したところ、1時間おきに測定結果を自動保存できる機能に興味を持たれ、ご購入いただきました。
PX-375をお使いいただくなかで、対象となった物質の発生源特定時に、「多点発生源の可能性」と「膨大なデータ量」が課題となりました。1台だけでは追跡が難しく、市街地付近の傾向監視用として新たに1台を追加購入いただきました。
「多点発生源」に対し、1台は市街地付近の事務所に固定して測定、新規の1台はお客様の軽自動車に搭載し、工場および工場から市街地間の敷地内を移動しながら測定することとなりました。
しかし、2台で測定すると「膨大なデータ量」に対し、「データ解析が追い付かなくて困る」とお客様からお悩みの声をいただきました。このお悩みを解決するため、2020年10月に発表したソフトウェア「Eco-WEB」を搭載することになりました。
移動局測定の様子
お客様が見たいときに見たい情報を提供
「Eco-WEB」は、計測装置と管理用パソコンをつなぎ、本ソフトウェアを使用して遠隔地から大気環境のデータ収集、管理、可視化、レポート作成を可能にします。今回、お客様はPX-375に加えて、大気ガス分析装置AP-370や風向風速計のデータも同時に「Eco-WEB」上で表示することを希望されました。この希望を叶えるために課題となったのは、「Eco-WEB」と通信する、さまざまな計器が持つデータ時間を揃えることです。簡単に聞こえますが、AP-370と風向風速計は秒単位の連続した情報を取得し続けるのに対し、PX-375は1時間に1データといった不連続な情報です。特にPX-375は質量分析結果と成分分析結果が数十分程度ずれたタイミングで出力され、それらと毎秒出力のデータを自由な時間、つまりお客様の見たいタイミングで出力することが困難でした。そこで、データ通信時に、計器の測定データと合わせて、不連続測定における遅延の時間情報も一緒に通信することで解決へ導きました。(特許出願済)
ほかにも、オフィスにいながら見たいデータを瞬時に取得し、さまざまなグラフスタイルで表示できるようにしました。移動局が多地点で測定したデータを地図上で表示、風向風速計から得られるデータを加えることで、どの位置で、どのような方向から物質が移流するかを捉えやすくしています。
また、測定データには機密情報が多く含まれるため、決してデータ漏洩がないように閉域網のモバイル回線を導入しました。「Eco-WEB」は専用アプリケーションを追加インストールする必要がなく、ネットワーク上のウェブブラウザから閲覧できることもひとつの特徴です。
お客様の課題を一緒に解決し、ご要望をカタチに
移動局のPX-375を事務所でリモート操作できるようになり、お客様に大変喜んでいただきました。具体的な手段を提供すればお客様に満足していただけることを実感しています。
お客様の「次の世代のため、事業を継続していくためにやっている」というお言葉が印象的でした。周辺環境や職場環境の悪化が操業に直結する課題であり、お客様はこの課題に真摯に向き合われています。
今後は、お客様のご要望を理解し、お客様と一緒に課題解決につながる次世代の製品をつくっていきます。
私たちもつくっています!
PX-375開発メンバー(左より):株式会社堀場製作所 環境プロセス開発部 山渡 翔太、米谷 康弘、山口 佳津紀、IoT & Data Analytics 比嘉 一志(上)、薮下 広高(下)