サービス > 受託分析・試験サービス > 機能性材料/先端材料 > 金(Au)薄膜の分析
金属の光学定数(n&k)には多くの文献値が存在しています。しかし実際に作製した金属のn&kの値は状態によって大きく変わり、文献値とは異なることが殆どです。特に膜厚が約10nm以下になると、n&kの値は全く違う材料になってしまったかのように大きく変化することがあります。ここでは金(Au)薄膜を例にして、n&kが膜厚によってどのように変化するかについて紹介しています。
分光エリプソメトリーは、入射光と反射光の偏光状態の変化を波長ごとに計測し、得られた測定データをもとに光学モデルを作成、フィッティング計算をすることにより薄膜の膜厚および光学定数(屈折率n、消衰係数k)を非破壊、非接触で求める分析手法です。この手法を行う装置を分光エリプソメーターといいます。
図2に得られたAuの屈折率(n)、図3に消衰係数(k)を示します。膜厚が20nmのとき、n&kはBulkと似たような値を示します。これはAu薄膜の状態が、バルク(連続膜)になっていることを表していると考えられます。膜厚が10nmになると、n&kは20nmの値から変わります。これはAu薄膜の状態が島状(不連続膜)に変化したことによるものと推測されます。膜厚が5nm以下になると、n&kの値はさらに変化し、2eV付近で消衰係数(k)のピークが見られるようになります。これはAuが粒子状になり、kに表面プラズモンの影響が現れたものと推測されます。
Ref. T. Nakamura, et al., Jpn. J. Appl. Phys., 53, 045201 (2014)
分光エリプソメーターを用いることで、膜厚が異なる金属薄膜のn&kを非破壊・非接触で評価することが可能です。