中長期経営計画「MLMAP2028」がスタートした2024年、HORIBAの株価は5月に過去最高値を更新し、時価総額は一時的に7,000億円に迫りました。半導体産業の成長につながるHORIBAの事業成長をご評価いただきましたこと、関係各所にお礼申しあげます。一方、HORIBAは早急に改善が求められる課題にも直面しています。積極的に投資を進める水素関連事業では、事業規模拡大のなかで生産管理などに課題が露呈し、体制の立て直しが急務です。こうしたなか、MLMAP2028における「エネルギー・環境」、「バイオ・ヘルスケア」、「先端材料・半導体」の3つの注力分野では、社会課題解決をめざした事業推進に舵を切り、グローバル市場に大きな変化をもたらしています。これまで培ってきた技術やサービスが新たなフィールドで開花することで、HORIBAの真の力強さを実感しています。
2004年の「HORIBA Group is One Company.」宣言以降、5事業セグメントでのビジネスオペレーションを通し、HORIBAは大きな成長を遂げることができました。MLMAP2028では、5セグメント制から3フィールド制へと組織構造の大きな見直しに踏み切りました。HORIBAを取り巻く社会や市場環境の変化のなかで、さらなる成長を見込んで実施したこの大きな変革は、組織の連携がより強化され、これまで接点が少なかったお客様との新たな関係性が生まれているだけでなく、社内組織間のコミュニケーションが活発になり、各部門や会社を越えた活動がグローバルで盛んに行われています。これは、一つのマーケットに対して、事業セグメントの垣根を超えて一体となる強固な体制を築き上げた成果であると実感しています。それと同時に、組織として常に変化と成長を意識することの重要性を改めて認識しました。今日のHORIBAは、それぞれが持つ高度な技術を、世界中のニーズに活かし、新たなビジネスを創造し続ける動きに拍車をかけています。私たちはこの動きをさらに加速させ、「顧客のニーズ×グループの技術力」で、新たなソリューションを提供し、社会課題の解決に積極的に貢献してまいります。
3つのフィールドを柱に、新たな産業やお客様へのアプローチを通して、HORIBAは今後より一層グローバルなビジネス展開を遂げ、持続的にスケールアップしていくことを確信しています。そのために私たちが最も大切にすべきことは、HORIBAのバリューやおもいをHORIBAのグループ会社を通じて現地マーケットに浸透させるとともに、各国の異なる文化や価値観を尊重し理解しながら、事業を推進することです。
お客様と「ほんまもん」の信頼関係を築くためにはまず、社是「おもしろおかしく」をはじめとしたHORIBAのフィロソフィーや「ほんまもん」を追求するスピリットを共有することはもちろん、それぞれの文化や考えを尊重し合う姿勢が必要不可欠です。私はかねてから「オープン&フェア」という言葉を大切にしています。この価値観を軸に、人財交流を積極的に行い、グローバルな視点や多様性を持つ人財、そして世界で活躍できるホリバリアンの育成に努めています。私たちの目標は、新たな地域・産業・お客様において、HORIBAの文化と双方が持つ技術やチャンスと共鳴し、世界各地で新たな価値を生み出すことです。その実現に向け、HORIBAが一体となって総合力を発揮し取り組んでまいります。
ビジネス拡大の鍵となるのは、これまで磨き抜いた技術を他分野で応用し、多角的な視点でHORIBAにとって新たな市場の開拓に挑戦することです。
我々は、その時々の社会の動きや運を味方に、様々な製品を生み出してきました。自動車事業を牽引したエンジン排ガス測定装置は、人間の呼気の測定装置を転用し、業界のデファクトスタンダードと呼ばれるまでに成長しました。また、半導体製造装置内でガスの流量制御を司るマスフローコントローラーの原点は、半導体産業の成長を見据えて、当時のHORIBAの技術の粋を集めて新規参入したことにあります。半導体事業の黎明期には苦労もしましたが、現在では高い利益率を誇り、HORIBAを代表するビジネスにまで成長しました。
このように、HORIBAの技術には、新規ビジネスや新たな市場を切り拓く力があります。今後も各分野での技術を磨き、エンジン排ガス測定装置やマスフローコントローラーに次ぐ、新たな柱となるソリューションを創出し、さらなる市場拡大をめざします。
HORIBAは、次なる事業成長の中核となる分野として、水素関連市場、製薬をはじめとするバイオ関連市場、そして半導体関連では光を活用した検査分野での市場創出に向け、積極的な投資を進めています。私たちが戦っているグローバル市場は、最先端の技術開発と競争が激しい環境です。特に半導体分野においては、日本企業が苦戦を強いられるなかでも、HORIBAはグローバルシェアNo.1を維持してきました。これは、必要となる技術の見極めと、長期的な視点での継続的な研究開発投資の賜物であると実感しています。
HORIBAには、お客様の課題解決に寄り添うなかで、新しいソリューションを見出し、デファクトスタンダードとなった製品が複数あります。注力する3つの分野においても、市場を牽引していくお客様に複数のコア技術を組み合わせた独自のソリューションを提案することで、確固たる信頼関係を構築しビジネス機会を創出できると確信しています。
HORIBAがグローバル市場で勝ち抜くために必要なのは、「的確な判断」と「継続」そして「スピード」です。課題と正面から向き合い、HORIBAのめざす「ほんまもん」の力をどのように活用するか、スピード感を持って判断し、信じた道を貫くことで、未来に役立つ技術力をさらに培っていきます。
HORIBAでは、グループで働くすべての社員を、ファミリーであり大切な財産だと考え、「ホリバリアン」と呼んでいます。人財育成においては、個々の力を高めていくことはもちろんのこと、個性を持つ多様な人財がチームとなり協力して働くことで大きな成果や新たな価値を創出していきます。
自動車の運転技術には教本がありますが、経営やマネジメントに唯一の正しい教科書は存在しません。教本に沿って模範的な運転をするドライバーには、フォーミュラ1で最速を争える強いチームを牽引できないことは容易に想像できると思いますが、同様のことを私たちの人財育成にも当てはめることができるでしょう。経験を積み重ね、技術はもちろん冷静かつ迅速な判断力を持つドライバー、様々な役割をこなすスタッフ、パワーユニットやレーシングカーの開発を行うエキスパートたち、それぞれが各分野のプロフェッショナルとなり、サーキットでの役割を果たしています。まさに、勝負の世界で勝ち抜くためには、一人ひとりが才能を発揮し、最強のチームワークを築くことが必要不可欠です。ホリバリアン一人ひとりが専門分野で活躍し個性を発揮することで、社是「おもしろおかしく」のもと追求してきた「ほんまもん」の「チームHORIBA」ができあがります。「ほんまもん」の「チームHORIBA」を築き上げることが次なる10年の重要ミッションであり、世界市場の最前線でNo.1になるための道を切り拓いていきます。
2025年、HORIBAは創業80周年を迎えました。京都で生まれ、ベンチャー企業として分析技術を軸に数々の革新的なソリューションを生み出してきました。
この長い歴史を振り返り、改めて感じるのは、一人ひとりがやりがいを持って「おもしろおかしく」仕事をすること、そして「ほんまもん」の技術を見極め、追求していくことがHORIBAの神髄であり、成長の基盤です。
HORIBAは世界市場で多様なお客様とともに新たなビジネスを生み出し、確実に成長を遂げていますが、半導体産業の急成長により、株式市場から寄せられるHORIBAへの期待も日々変化しています。HORIBAが大切にしてきたフィロソフィーは揺るぎないものですが、ステークホルダーの皆様からの期待を正確に把握し、相互理解を深めていくことが市場での競争力を支える鍵となると考えています。
また、急速なグローバル化により、HORIBAを取り巻く環境も日々変容しています。世界中のホリバリアンがいきいきと働ける環境をつくるため、多様な価値観や文化を尊重し、新しいアイデアや挑戦を受け入れる柔軟性を持つことが求められています。
私たちは、多角的な視点を持ち、瞬時に課題を捉え、スピード感を持って迅速に対応する一方で、じっくりと対応を積み重ねていく粘り強さも持ち合わせる努力をしていきます。課題と真摯に向き合う揺るぎない姿勢で、HORIBAは未来へと歩み続けたいと思います。
今後もHORIBAは、多様な人財が自らオーナーシップを発揮し、挑戦を続けながらグローバル市場で大きく飛躍し、さらなる成長をめざします。ステークホルダーの皆様においては、引き続き、変わらぬご理解とご支援をどうぞよろしくお願い申しあげます。
※ホリバリアン : HORIBAで働くすべての人を同じファミリーであると考え、ホリバリアンという愛称で呼んでいます
2025年5月
代表取締役会長 兼 グループCEO 堀場 厚
