■固体高分子型燃料電池の一酸化炭素被毒性を評価
一酸化炭素(CO)は、固体高分子型燃料電池(PEFC)の発電性能に対して顕著な影響を及ぼします。これはアノード白金触媒の表面がCOに覆われることで後続の水素酸化反応を阻害する、いわゆる「CO被毒」が起こるためです。PEFCに供給される水素は様々な方法で製造されていますが、家庭向けPEFCにおいては水蒸気改質法によって都市ガスや液化石油ガス(LPガス)から生成された主に改質水素が用いられています。これらの改質ガスにはCOが含まれており、通常はCO変成反応器や選択的CO酸化触媒などによりCO濃度を低減する処理が施されています。しかし、これらの処理を経た後であっても、ガス中には数ppm~数十ppmのCOが残留する場合があるため、PEFCのCO被毒性を把握することは重要です。
ここでは燃料電池評価装置/Evaluator C50-HT(堀場製作所製)に単セル(電極面積25 cm2)を接続し、試験項目に従ってアノード白金触媒のCO被毒性を評価しました。アノードに対し、COが10 ppm含まれる水素を2時間供給した結果、 Fig.3に示すように明確な発電性能の低下が見られました。さらに、CO被毒前後の特性評価の結果比較から、Fig.4においては①I-V特性の低下が確認され、Fig.5においては②水素吸着量の減少および③CO酸化に由来するピークの出現が認められました。これらの結果から白金触媒表面へのCO吸着により電気化学的表面積(ECSA)が減少し、それに伴ってPEFCの発電性能が低下したと考えられます。
