カーボンニュートラル社会に向けた各国の動きやニーズ、戦略、技術的期待(過去の記事)

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グローバル: Energy Efficiency推進に向けた政策パッケージ(IEAレポート)

ウクライナ危機を背景に、エネルギーの効率化に関するより強力な行動を支援するための政府向けの政策ツールキットが、IEA(国際エネルギー機関)主催による「7th Annual Global Conference on Energy Efficiency」会議で発表されました。このツールキットは、効果的な政策措置の設計、政策決定の支援、政策措置の実施において政府を指導することにより、エネルギー効率に関する行動を加速させるための実践的なアプローチを提供するものです。規制/情報/インセンティブを組み合わせ、経済的/社会的/環境的便益の確保、DXの推進、国際連携の強化など10の戦略的原則に基づき政策を設計し、即効性の高い運輸と建築部門、また自国民の行動変容から早急に誘導すべきと啓蒙しています。(2022年6月) 

参考リンク:IEA「Policy Toolkit


特許からみる水電解技術動向(IRENAレポート)

欧州特許庁(EPO)と国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が共同で、2005~2020年期間の水電解(槽)に関する出願特許動向を調査したレポートが発表されました。
国内出願と国際特許を合わせた全体傾向として、出願数は年間平均18%の増加、国別には中、日、韓、米、独、仏の順となっており、中国は国内出願が圧倒的に多いとされています。国際特許だけでの比較では、日、米、独、韓、仏、中の順となっており、技術別には非貴金属による触媒技術が2018年に貴金属を逆転、アカデミアを中心に光電解技術が増加しています。
全体総数の約半分を占める欧日の傾向としては、欧州では電解槽(分野内のシェア41%)、電極触媒材料(34%)、セルの動作条件と構造(31%)が上位であり、スタック技術で先行、日本は光電解(39%)、セパレータなどセル構成技術(34%)が多い傾向とされています。特にセパレータ技術では、セラミクス膜の日本企業国際特許出願が上位を独占し、その他、電解槽のコスト削減技術の増加、米国は幅広い分野で出願する傾向があるとされ、各国・各社の技術戦略を窺い知ることができます。(2022年 5月)

参考リンク: IRENA 「Patent insight report - Innovation trends in electrolysers for hydrogen production


ドイツに学ぶ電池政策(NEDOレポート)

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から、「再生可能エネルギー時代における資源獲得競争 -ドイツのリチウムイオン電池政策を例に-」というレポートが発行されました。
趣旨は、「局在する化石エネルギーと比較して再生可能エネルギーは地球上に遍在する利点がある。このためカーボンニュートラル時代のエネルギー安全保障は、それを補完する蓄電池などの産業政策とともに大きな転換期を迎える。一方で蓄電池の製造にはレアアースなど希少材料が必要となるが、これらは化石エネルギー同様に局在するジレンマがある。ドイツ政府はこの問題を回避するため、グローバルな電池産業を誘致し、レアアースを国内で循環させる政策をとる。現在欧州の車載電池需要は中国をしのぐ伸長を見せており、その中心はドイツ。2025年のLIB製造能力は米国を抜き中国に次いで世界二位となると予想される。同時にリサイクル・リユースというサプライチェーンを国内で構築し始めており、循環経済にも先手を打つ」とされています。
ドイツは2017年に日本政府との間でバッテリー分野に関する二国間科学技術協力のMOU(基本合意書: Memorandum of Understanding)も結んでおり、将来を見通して戦略的に産業政策を打っていることが窺えます。本レポートでは、資源から産業・社会まで、すべてを包括的に政策を組み立てていくドイツの手法は示唆に富んでいると結んでいます。(2022年 4月)

参考リンク:NEDO「海外トレンド:再生可能エネルギー時代における資源獲得競争 ―ドイツのリチウムイオン電池政策を例に―


再生可能エネルギー技術開発の進捗動向(IRENAレポート)

太陽光、太陽熱、洋上風力、陸上風力などの再生可能エネルギーを「つくる」技術、また水電解槽、家庭用蓄電池などエネルギーを「ためる」技術に関し、コスト低減や現在の技術課題、2050年に向けた性能見通しなど、現在のステータスをまとめたレポートが国際再生可能エネルギー機関(IRENA)から発行されました。当レポートは、産業と学術研究を結びつけることを狙いとした欧州委員会(EC)の「Horizon 2020」(https://ec.europa.eu/info/research-and-innovation/funding/funding-opportunities/funding-programmes-and-open-calls/horizon-2020_en)の成果として、2021年に調査されたもの(TEIIFプロジェクト)です。
昨今 特に注目が集まっている「水電解槽」については、主にアルカリ型とPEM型が比較されています。両者とも概ね15年間で60~70%のコストダウン、変換効率は技術が成熟したアルカリ型が若干有利とありますが、発展途上のPEM型はプロジェクトごとのバラつきが大きく、またコストダウンの傾きもPEM型が大きいとされ、結論が出るまでにはまだ時間がかかるとしています。価値の高い特許出願数は日米独がリードしており、全体としては、大規模化が共通の課題とされています。詳しくは、下記のリンクよりレポートをご参照ください。(2022年 3月)

参考リンク: IRENA「Renewable Technology Innovation Indicators: Mapping progress in costs, patents and standards


水素輸出入の地政学的考察(IRENAレポート)

現在、グリーン水素(再生エネルギー由来の電力で製造される水素)は大半がオンサイトで生産/消費されるローカルなビジネスであるが、今後は国際的に取引される商品となる可能性が高いと見込まれています。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、地政学的な側面から国際的な水素の調達リスク/オポチュニティに関し、再生可能エネルギーの生産ポテンシャル、水電解装置に使われるレアアースの調達リスク、パイプライン網、技術開発など、考慮すべき地政学的要因をレポートにまとめています。
その結論では、水素の急速な普及と脱炭素化への長期的な貢献のためには、国際的な協力が必要と訴求されています。特にアフリカ地域をはじめ、途上国における再生可能エネルギーとグリーン水素の普及を支援することは、エネルギーシステムの脱炭素化に不可欠であり世界の公平性と安定性に貢献すると結んでいます。詳しくは、下記のリンクよりレポートをご参照ください。(2022年 2月)

参考リンク:IRENA「Geopolitics of the Energy Transformation: The Hydrogen Factor


2022年のエネルギー市場トレンド予測

2022年、特に日本国内において、CO2 排出総量削減のための LCA (ライフサイクルアセスメント)への動きが加速する可能性が高まっています。
その背景として、環境省が開示する「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」があります。近年、企業の自社排出量の把握が定着しており、CSR強化の観点から「自社の排出」から「サプライチェーン全体の排出(GHGプロトコル Scope3)」へ移行/加速する可能性が高いとのこと。
Scope3では、サプライチェーンに関わる他事業者による排出削減も自社の削減とみなされることから、業界全体で加速させていく仕組みとなる構造です。(2022年 1月)

参考リンク:環境省 「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム


電気自動車のバッテリーリサイクルや自動運転による環境負荷低減への議論

電気自動車(EV)について、「バッテリリサイクル」や「自動運転による省エネ技術」が論議されています。
バッテリリサイクルについては、欧州域内での電池市場囲い込みを目的に LIB 電池規制に向けた動きが活発化しています。日本でも、リサイクル材料の含有義務やリサイクル率の数値目標が掲げられ、それを後追いする形で“リチウム 70 %以上、ニッケル 95 %以上、コバルト 95以上を回収する技術”を制度的枠組みを含めて開発する案が検討されています。
また自動運転による省エネ技術に関しては、コネクテッド技術と併用した渋滞低減や加減速の抑制技術や、自動車センサの電力消費マネジメント等によるCO2削減効果を見積もるシミュレーション技術の開発が進められていく見込みとなっています。ただし、たとえばエンジン自動車では高速道路で ACC (オートクルーズコントロール)を使うと燃費が10% 程度改善すると言われている一方で、高エネルギー効率で高燃費速度が低いEVでは必ずしもあてはまりません。また充電インフラも併せて考えると、全体的な効率を系統電力需給とセットで論じる必要もあり、効果見積りに対する検討の難易度は高いと考えられます。(2021年 11月)

参考リンク:経済産業省「産業構造転換分野ワーキンググループ


COP26に向けた各国の動き(NEDOレポート)

COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議、2021年10月31日から11月12日にかけ開催)に向け、10月22日、カーボンニュートラルに関する主要国(米・中・ EU ・英)の取り組みを整理したレポートが国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から発行されました。
特に米国・ EU ・英国では、研究開発だけでなく、インフラや施設の設備事業、雇用創出への支援を含んでいることが特徴となっています。詳しくは、下記のリンクよりご参照ください。(2021年 10月)

参考リンク:NEDO 「COP26に向けたカーボンニュートラルに関する海外主要国(米・中・EU・英)の動向


カーボンニュートラルに向けた各国の動き - 水素閣僚会議を終えて

経済産業省およびNEDOの主催で、水素社会にコミットする各国・国際機関および各企業の代表者を集めた水素閣僚会議が2021年10月4日にオンラインで開催されました。「水素閣僚会議」は2018年から日本で始まり、今回で4回目になります。
ニュージーランド、アルゼンチン、オーストラリア、チリ、 EC(欧州委員会)、ドイツ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、サウジアラビア、スペイン、 UAE 、 IEA 、 IPHE (国際水素・燃料電池パートナーシップ)、Hydrogen Council、 JH2Aの閣僚級が参加するととも に、韓国、ロシア、カナダ、 DoE 、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)など 14ヵ国/機関の責任者がビデオメッセージを寄せていました。日本の福島県浪江町、山梨県、米国カリフォルニア州ランカスター市などの地方自治体や民間企業からも参加し、「サプライチェーン」「地域モデル」「FC モジュール」「水電解」 の 4 つのセッションに分けパネルディスカッションが実施されました。
数多くの議論の中でも、欧米を中心に水素社会を早く実現しないと気候変動は待ったなしとの主張が強く行われ、一方でまだ市場経済に乗らない水素の取引価格や、柔軟な民間とスピーディな政策の同期、各国の特性/地域差を補完する国際協調が重要との検討が行われました。
水素戦略の策定は現在17カ国まで拡大してきており、策定中の国々を含め、グローバルな動向およびスタンスが明瞭になってきています。(2021年10月)

参考リンク:経済産業省・NEDO 「水素閣僚会議 会議総括


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