開発ストーリー:粒子を「はかる」技術で、材料の開発・製造を新たなステージへ

左から、株式会社堀場製作所 固体・粉粒体計測開発部 マネジャー 立脇 康弘、株式会社堀場製作所 マネジャー 森 哲也(ホリバ・UK社(英国)出向中)

粒子の大きさや形状は、さまざまな商品の性能を左右する重要な要素の一つです。
たとえば、チョコレートは、原料であるカカオニブや砂糖の大きさによって口当たりのなめらかさが変化し、医薬品は、粉末の大きさなどが薬効や効果の出やすい体の部位に影響します。そのため、食品をはじめ医薬品、半導体、二次電池など原材料に「粉」を用いる研究施設や工場では、粒子を高精度、かつ、効率よく測定する高度な技術が求められています。

HORIBAは、新たなフラッグシップ製品であるレーザー回折・動的画像式 粒子径・形状解析装置「Partica(パーティカ)」を2025年1月に日本で先行発売し、2026年春からグローバル市場にも販売を開始します。業界トップクラス※1の高精度およびワイドレンジ測定に加え、レーザーと画像を用いた2つの測定原理によって粒子の同一箇所を同時に測定することで、わずか1分で粒子の大きさや量、形状情報など、より詳細な解析を実現しました。Particaの販売を通じて、多様な分野の材料開発や品質管理体制の強化に貢献することをめざしています。
今回は、新製品Particaの事業戦略責任者の森 哲也と、開発責任者である立脇 康弘に開発ストーリーを聞きました。

※1: 当社調べ(2024年8月1日時点)

フラッグシップ製品「Partica」の開発プロジェクト始動!

森:
HORIBAは40年以上にわたって粒子径分布測定装置を手がけ、国内シェアを大きく伸ばしてきました。世界の粒子測定装置市場の規模も年々拡大し、当社が強みとするレーザー回折式というレーザーを用いた粒子径分布※2の測定に加え、形状解析、自動化、データインテグリティなど測定ニーズの多様化が進んでいます。特にアメリカでは、粒子をカメラで撮影して形状などを解析する動的画像式という原理を用いた測定需要が高く、当社でも数年前から既存製品に付属できる測定ユニットを開発して対応していました。お客様からは好評でしたが、性能や操作性の向上、自動化を含めた新しいニーズに対応していくためには、これまでの製品の優位性をしっかりと引き継ぎながらも、ソフトウェア・ハードウェアともに刷新した新たな製品開発が必要だと決断し、開発の立脇さんに本格的にバトンが渡りました。

※2: 粒子径分布:試料の粒子の大きさと頻度を示す指標

苦難の先に見えた光

立脇:
Particaの開発で最も大きな課題は「2つの測定原理を両立させる」ことでした。Particaの製品特長の一つが、レーザー回折式と動的画像式という高度な測定原理で、試料の同一箇所を同時に測定できる点です。それを実現するには、試料にレーザーを当てながら、カメラで試料の画像を撮影する必要があります。ただし、例えば、画像を撮影するために必要な部品でレーザーの光を遮ってしまうと、レーザー回折による測定結果に影響が出てしまいます。そのため、レーザーが通る光の道を確保しつつ、画像も鮮明に写る最適な配置を見つけなければいけません。装置を大きくすれば簡単ですが、これまで当社製品を使っていただいていたお客様にも引き続き使用いただきたいという願いから、従来製品のサイズを維持することも譲れないポイントの一つでした。
設計をし、実際に配置を変えて測定と撮影をして……と何度も仮説と検証を繰り返した後、試料とカメラ、レーザー、照明などすべてのバランスがここしかない、というベストな配置を見つけることができました。
 

グローバルメンバーでお客様の嬉しさを徹底追求

Particaの開発について議論する様子(左がアンダーソン)

森:
Particaは、フラッグシップ製品として海外市場でのシェア拡大を強く意識した製品です。本製品の開発拠点は日本ですが、開発過程には多くの海外メンバーが協力してくれました。特にHORIBAグループの米国拠点でセールスマネジャーを務めるアンダーソン ボノン(Anderson Bonon)が重要な役割を果たしました。頻繁に日本を訪れ、顧客視点での気づきを我々にインプットし、ソフトウェア、ハードウェアともにお客様満足を徹底的に追究した開発を共に進めました。
また、2年程前には世界の各拠点で開発、戦略、営業を担うメンバーが一堂に日本に会し、試作機をもとにビジネスの方向性などを議論し、発売に向けて準備を進めてきました。
 

立脇:
アンダーソンはパッションが強く、開発への要求が飛びぬけて多かったです。
彼の中で膨らむお客様のために実現したいことに、一生懸命ついていきました。大変でしたが、彼の顧客視点でのフィードバックがなければ、Particaの最終性能は発揮できなかったといっても過言ではありません。
例えば、彼から「コーヒー豆ぐらいの大きい粒子を見られるようにしたい」と言われました。このレンジの広さは、もともとお付き合いしてきた日本のお客様からはあまり聞かない要望でした。ですが、世界、特にアメリカでは画像による比較的大きな粒子の形状解析ニーズも大きく、アンダーソンからは「このままではいけない。より良い製品を」という鬼気迫るものを感じました。粒子を解析するには、測りたいサイズの数倍の面積を撮影する必要があります。現状の装置サイズを維持しつつ測定範囲を広げる難しさに苦戦しながらも、試行錯誤を重ねた結果、実現できました。このように、彼の高い要求に必死に応えていくうちに、もともとの計画よりもより良い仕様に進化していきました。

グローバル市場へ展開

森:
当社は、半導体や電子部品の材料に関する粒子の測定に強みを持っていますが、ParticaはHORIBAが中長期経営計画「MLMAP※32028」に掲げる3つの注力分野「環境・エネルギー」、「バイオ・ヘルスケア」、「先端材料・半導体」への展開をめざしています。これまで当社製品を活用していただいている既存のお客様への提案は変わらず続けながら、直近では製薬分野に力を入れていきたいと考えています。そのため、Particaには製薬業界に求められるデータインテグリティ機能も備えています。また、お客様のご要望に応じてロボットアームを取り付けて測定を自動化し、生産ラインに組み込むこともできます。このようなカスタマイズ性の高さも強みに、幅広い市場へ展開していきます。

※3 MLMAP(Mid-Long Term Management Plan)︓HORIBAグループでは中⻑期経営計画を「MLMAP」として推進しています

機能美をめざして

立脇:
ソフトウェア、ハードウェアともに、使いやすさと美しさを両立する「機能美」を追求しました。ソフトウェアにおいては、2つの測定原理(レーザー回折式と動的画像式)による複雑な処理を行い、グラフなどで視覚的にもわかりやすい測定結果を素早く提供します。初めて使う方にとっても使いやすく、玄人向けにはソフトウェア上でも多様なカスタマイズができる設計を取り入れました。
また、お客様に製品をお見せすると「ドアもいいね」とよく褒めていただきます。実はここもこだわりポイントの一つです。斜めに開閉する引き戸を採用することで、研究施設や工場などの限られたスペースでも設置できるよう占有スペースを減らし、かつ、滑らかに開閉できる構造にしました。この他にも、測定に用いる溶媒の希釈や試料を入れる容器洗浄の自動化など、こだわりは語り尽くせません。
 

お客様の価値創造を実現するパートナーに

森:
お客様とお話しすると、粒子測定の世界は奥が深いと気づかされます。
先日、セメント工場で働くお客様から、セメント材料の生産工程で同じ角度で同じような粉体材料を流した際に、なぜかきれいに粉が流れるラインとピタッと止まるラインがあると伺いました。その理由は材料粒子の形でした。材料粒子が丸いと淀みなく流れ、いびつなものが集まると止まってしまう。そして一度止まると、振るなり押すなりしない限りは材料が流れないので生産工程に時間のロスができてしまうということでした。
このような製造プロセスをはじめ、まだまだHORIBAの粒子測定技術が活躍できる場は大きく広がっていると感じました。今後、Particaの詳細な粒子解析技術やカスタマイズ性の高さが、さまざまな分野での新しい発見やイノベーションに貢献できると確信しています。
 

立脇:
お客様にParticaをご紹介すると、「おぉ、こんなデータも出るんだ」と驚かれ、「これも測定もできますか?」といった嬉しいご相談が増えています。やはり開発者として、「お客様のやってみたい」に応えられた時がすごく嬉しいです。Particaの販売を通じてお客様のニーズにしっかりと応え続けるとともに、これからもお客様の課題を解決する新製品開発をめざします。
 

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