測っちゃいました Vol.18 花火

8月に入り、全国各地で花火大会が開催されています。家族や友人と一緒に花火を楽しむ方も多いのではないでしょうか?夜空に大きく描かれるカラフルな光の芸術は、わずかな寿命のはかなさも手伝って見る人の感動を呼ぶものです。

さて、この花火の色は原料の火薬に含まれている金属元素の発色によって決まります。元素は、熱などによってエネルギーが高くなると、一時的に高いエネルギー状態になります。その後、元のエネルギー状態に戻るときに、余分なエネルギーを光として放出することで発色します。 エネルギーが高くなった状態と元の状態のエネルギー差、つまり、放出される光エネルギーの大きさは元素によって違うので、目に見える色も元素ごとに異なります。この現象は炎色反応と呼ばれ、これを応用した元素分析装置も開発されています。

打ち上げ花火には、2種類の火薬が使われています。金属が含まれていて空中で光り輝くのは『星』と呼ばれる火薬です。そして、この『星』を勢いよく飛ばすための火薬を『割薬』と呼んでいます。多くの打ち上げ花火の玉は球形で、中心部に『割薬』があり、その周囲に同心円状に『星』と『割薬』が配置されています。打ち上げ時に導火線へ点火されると、上空で最初に中心部分に配置された『割薬』に着火します。『星』は光を放ちながら、『割薬』の爆発によって放射状に勢いよく飛び出します。この『星』の軌跡が光の残像として、観客を楽しませているのです。

どの色の『星』をどのくらいの勢いで飛ばすかを計算し、『割薬』の量や配置を考えて花火玉を作成するのが、『花火師』と呼ばれる職人です。彼らは、小さな球状に固めた『星』に『割薬』をどのように配置すればよいか緻密な計算をします。花火師は花火という作品を作る芸術家であると同時に、火薬の化学反応に対する知識を持ったエンジニアでもあるわけです。

『星』の元素分析を行うと、見た目はほとんど同じでも、それぞれに含まれる金属の種類が異なっていることが分かります。たとえば、赤く光る『星』にはストロンチウム、緑にはバリウム、青には銅、黄色にはナトリウムが含まれています。また、いくつかの金属を組み合わせて作られた『星』もあります。多くの金属は塩化物の形で含まれており、分析では塩素も検出されます。塩化物は保管時に比較的安定であり、着火すると速やかにガス化する性質を持っています。

打ち上げ花火で重要なのは、上空に打ち上げて高い地点で『割薬』に着火することです。打ち上げには、『煙火筒』という花火玉のサイズに合わせた筒を使います。この『煙火筒』の底に打ち上げ用の火薬『発射薬』を入れ、その上に導火線、そして花火玉を入れます。『発射薬』に点火すると花火玉が上空に打ち上げられると同時に導火線に火が付き、適切な位置で花火玉の『割薬』に着火して花火が開きます。

夏の夜、のんびり花火見物は楽しいものですが、花火を完成させる裏側には花火師の高い技術が隠されていたのですね!

<参考リンク>
XGT-9000 Pro/Expert微小部X線分析装置 (X線分析顕微鏡)
マーカス型高周波グロー放電発光表面分析(GD-OES)
ICP発光分析