液体窒素不要の有害物質検査専用機を2機種発売

|   ニュースリリース

当社は、欧州有害物質規制の検査専用機で、液体窒素を使わず電気的に冷却する検出器を内蔵した、有害元素蛍光エックス線検査装置「XGT−5100WR」(開発向け)と「XGT−1100WR」(生産ライン向け)の2機種を9月1日より発売します。有害物質検査装置で業界初の「パルスチューブ冷却方式」の検出器を採用、エックス線検出器をマイナス200度以下まで冷やすことができ、液体窒素使用時と同等以上の冷却温度と検出感度を実現しました。従来の液体窒素レス冷却方式と比べ、5〜20倍の高感度で測定できるため、約10倍のスピードで検査可能です。液体窒素の入手が困難な地域や、取扱いが難しい製造現場や海外工場でも、高感度で安全・短時間に測定できる装置です。有害物質規制強化への対応が各メーカーで急がれる中、安全・短時間測定できる2機種をラインアップに加えることで、同検査装置市場で、今年度35億円(前年度比2倍)の売上とトップシェアを狙います。

<有害物質検査の動向>
欧州有害物質規制における、各メーカーの検査対応は、主に部品の型式認定のために用いられる開発向けと、それらの部品の品質が維持されているか、量産体制の中で検査管理する生産ライン向けの2通りあります。最近では電機メーカー以外に、自動車メーカーも欧州の廃自動車指令に対応するため、有害物質検査に力を入れています。各自動車メーカーの本格対応はまさにこれからで、今後は電気メーカーと同じく、いかに多くの部品点数を検査できるかが重要になります。
また、測定を行う場所や人も、これまでの専門的な検査担当部門から、製造現場、購買部門、海外工場などへ広がりをみせています。これらの背景から、測定現場からはより早く、より簡単・安全に検査を行いたいというニーズがますます高まっています。

<液体窒素を使わない冷却方式>
有害物質検査に使われる蛍光エックス線分析装置は、高感度に測定するために、エックス線検出器を冷却する必要があります。一般的に検出器の冷却には液体窒素が使われていますが、液体窒素の取扱いには手間がかかり、安全性の面からも、従来から業界では液体窒素を使わない冷却方式(ペルチェ冷却)が用いられています。しかし、検出器の冷却能力がマイナス20度〜マイナス100度程度と、液体窒素の冷却温度(マイナス200度)までは達せず、液体窒素使用時と同等の検出感度と測定スピードは得られませんでした。

<発売2機種の特徴>
今回開発した2機種は、検出器の冷却に業界で初めて「パルスチューブ冷却方式」を採用しました。ヘリウムガスの圧力波を利用した冷凍機を用いることで、電気冷却式にもかかわらず液体窒素と同等以上の温度(マイナス200度以下)まで冷却可能です。検出感度も液体窒素使用タイプと同等のため、他の液体窒素を使わない冷却方式と比べ、約5〜20倍の高感度で測定できます。また、検出感度は測定に必要な時間にも影響するため、他の液体窒素を使わない冷却方式と比べ、約10倍のスピードで検査可能です。

液体窒素使用時と同じ検出感度を持ちながら、安全に短時間測定が可能な今回の2機種は、電気メーカー、自動車メーカーの部品の型式認定用の開発向け、また製造現場をはじめ、購買部門や海外工場での量産管理用の生産ライン向けに最適と考えます。今後ますます本格化する有害物質規制対応に今回の2機種をラインアップに加えることで、顧客の多様なニーズに対応し、同検査装置市場で、今年度35億円(前年度比2倍)の売上とトップシェアを狙います。

<主な特徴>

  1. 液体窒素使用時と同じ検出感度。
    (冷却到達温度がマイナス200度)
  2. 短時間測定。
    (他の液体窒素を使わない冷却方式と比べ、約10倍のスピード)
  3. 取扱いが簡単で安全。
    (液体窒素を使用しないため、管理が容易)


<標準価格>
「XGT−5100WR」(開発向け):2250万円
「XGT−1100WR」(生産ライン向け):1250万円

<販売目標台数>
初年度80台、次年度160台(2機種合計)
今年度335台、次年度350台(蛍光エックス線装置全体)

<主な仕様:液体窒素レス検出器>
検出素子:超高純度シリコン
冷却方式:パルスチューブ冷凍機
空冷コンプレッサ


<有害物質検査装置ラインアップ(全4機種)>
当社は2002年から有害物質検査に使用する、蛍光エックス線分析装置の専用機として、「XGT−5000WR」(開発向け)と「XGT−1000WR」(生産ライン向け)を開発販売してきました。いずれも、液体窒素で冷却する検出器を使用し、試料に照射するエックス線ビームを独自の技術で1.2mmに絞り込むことで、小さな部品を並べたり、切り刻まずに素早く測定できる点が特徴です。開発向けの機種は、測定結果を元素別に色分けし、有害元素の特定を容易にする面分析(マッピング)機能を備え、また生産ライン向けの機種は、現場で手軽に検査するため、直接手でサンプルを入れられる大型の試料室を採用するなど、2機種とも性能と使い勝手の面から有害物質検査専用機としての高い評価を受けています。



参考資料

  • パルスチューブ冷却タイプ検出器
    管内に高圧の気体を出し入れさせることで低温を生成する、パルスチューブ冷凍機を用いた検出器。コンプレッサーでヘリウムガスに圧力をかけ、パルス管内を出し入れさせる。その圧力差により、管の両端に低温端と高温端ができ、低温端を冷却に利用する。
    当社の検出器は、独自の技術である超高純度シリコンを検出器の素子(常温で保管しても性能劣化しない)を採用することで、使用時間帯のみ電源を入れておくことが可能。省エネルギーで必要な時にすぐ使える、使い勝手の良さが特徴。
  • 検出器の冷却
    蛍光エックス線分析装置は、試料から発生する蛍光エックス線を検出器に取り込んで測定する。高感度分析のためには、熱雑音(電子の熱運動によっておこる雑音)をおさえる必要があり、検出器の液体窒素温度レベルまでの冷却が必要となる。