『2011堀場雅夫賞』受賞者決定/10月受賞式典

-社外の「分析計測技術」研究者の奨励賞-

当社は、国内外の大学または公的研究機関の研究開発者を対象とした、「分析計測技術」に関する研究奨励賞『堀場雅夫賞』の2011年受賞者をこのほど決定しました。
この賞は2003年に創設され、8回目となる今回の選考テーマは、"電磁波(近赤外~X線)を用いた分析・計測技術の超高感度化・超高速化"です。本年4月から5月にかけて公募し、海外含め31件の応募がありました。これらの応募に対し、募集分野において権威ある研究者を中心に、8名で構成する審査委員会が、将来性や独創性、ユニークな計測機器への発展性に重点を置いて評価し、以下の4名に受賞者を決定しました。

受賞記念セミナーならびに授賞式は、学究界のみならず、行政関係からの参加者をお招きし、10月17日(月)京都大学の芝蘭会館にて行います。

 

2011堀場雅夫賞受賞研究について

2011堀場雅夫賞は、最近の科学技術において最も注目を集める先端材料とライフサイエンスの両分野において、どの研究内容も最先端といえる分析・計測技術が選ばれました。受賞研究は、医療・環境・エネルギーなどの各分野に貢献するだけでなく、分析科学自体に大きな発展をもたらすものです。その業績の実現の根幹には、既存の概念に捉われないユニークな発想と、計測・分析の原理原則に基づいた着実な取り組みがあるものと考えられます。

 

受賞者と受賞研究内容

(堀場雅夫賞受賞者)

  • 独立行政法人理化学研究所 専任研究員 山口 祥一(やまぐち しょういち)氏
    『新しい高感度非線形レーザー分光法の開発と界面分子構造研究への応用』

    超短パルスレーザー技術を駆使して、水溶液中においても、液中の界面だけを選択的に観察できる非線形レーザー分光法を次々に開発した。開発した手法により、従来法では実現できなかった、物質全体から得られるスペクトルに匹敵する情報量を、界面のみのスペクトルから得ることに世界で初めて成功した。この測定法により、界面分子の電子状態、振動状態、およびその時間的変化を、自由自在に評価できるようになった。今後、本手法を利用した分析は、電池内や細胞表面の化学反応の理解など、様々な界面科学分野に応用されることが期待される。

     

  • 独立行政法人産業技術総合研究所 主任研究員 伊藤 民武(いとう たみたけ)氏
    『表面増強ラマン散乱の電磁増強機構の実証と生細胞表面タンパク質の単分子リアルタイム検出への応用』

    非常に高い感度でラマンスペクトルが得られることが知られている表面増強ラマン散乱(SERS)の原理を明らかにするため、新しい単一ナノ粒子凝集体顕微分光法を開発した。これにより、これまで明確ではなかったSERSの原理を解明するとともに、SERSの分子識別能の高さを活かした表面タンパク質1分子のリアルタイム検出に初めて成功した。この研究は、大腸菌やピロリ菌のような生体組織や細菌などを特徴付けるタンパク質分子の高感度検出法や生細胞中の生体関連物質分子のリアルタイム分析手法への応用が期待できる。

     

  • 名古屋大学大学院工学研究科 准教授 渡慶次 学(とけし まなぶ)氏
    『レーザー分光法とマイクロデバイスを組み合わせた超高感度迅速分析法の研究』

    レーザー分光法(熱レンズ法や蛍光法)とマイクロデバイス技術とを組み合せることで、微量の生体由来物質を超高感度に迅速分析する技術を開発した。非蛍光性分子の単分子レベルの定量に世界で初めて成功したほか、熱レンズと蛍光検出のハイブリッド化や全自動小型免疫分析装置の実現など、革新的な検査技術確立のための研究・開発を行った。
    これまでに実際の血液試料の測定において良好な結果を得ており、テーラーメイド医療をはじめ今後の医療・ライフサイエンス分野での貢献が期待される。

     

(特別賞受賞者)

  • フランス国立科学研究センター 研究員 ヨアン・ルピオ 氏
    (Dr. Yoann Roupioz, Centre National de la Recherche Scientifique)
    『細胞を用いたラベルフリーバイオセンサーおよびバイオチップ-医療診断や食品安全性評価の切り札になり得るか?-』
    (「Label-free Cell-based Biosensors & Biochips: a Gold Mine Toward Diagnostic and Food Safety Issues?」)

    電気化学的手法によってチップ上に抗体のアレイを形成し、表面プラズモン共鳴イメージングによって血中細胞や細菌を無標識で検出する手法を考案した。さらに、微細加工技術で形成したマイクロペンシルを用いて直径 5~10μm程度の微小範囲に抗体をアレイ化する技術を開発し、超小型チップによる細胞の検出を実現した。現在は、この技術を応用し、さまざまな細胞をリアルタイムで識別する技術などを開発中である。医療・食品・環境分野において重要な次世代の細胞検出技術として、今後の進展が期待される。