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『2012堀場雅夫賞』受賞者決定/授賞式は10月17日

2012年7月30日


-社外の「分析計測技術」研究者の奨励賞-

当社は、このほど、国内外の大学または公的研究機関の研究開発者を対象とした「分析計測技術」に関する研究奨励賞『堀場雅夫賞』の2012年受賞者を決定しました。
この賞は2003年に創設し、9回目となる今回の選考テーマは、"放射線計測"です。本年4月から5月にかけて公募し、海外含め32件の応募がありました。これらの応募に対し、募集分野において権威ある研究者を中心に9名で構成する審査委員会が、将来性や独創性、ユニークな計測機器への発展性に重点を置いて評価し、以下の3名を堀場雅夫賞受賞者、1名を特別賞受賞者に決定しました。受賞記念セミナーならびに授賞式は、学究界および行政関係から出席者をお招きし、10月17日(水)京都大学 芝蘭会館にて執り行います。

2012堀場雅夫賞受賞研究について

放射線はレントゲンや放射線治療など医療分野で欠かせないものとなっています。また、半導体製造や材料加工、厚み計測、液面計測といった工業分野をはじめ、品種改良や害虫駆除など農業分野でも応用されています。その一方、過度の放射線を浴びたり、摂取したりすることは、ガンの発生をはじめとする健康リスクを高めることが懸念されます。そのため、放射線を利用する上で、被ばく量の計測・管理が重要視されてきました。
弊社では、設立からわずか3年後の1956年、放射線計測のキーとなる放射線検出器材料(ヨウ化ナトリウム結晶)の生産を開始し、国内外へ広く供給してきました。その後、ヨウ化セシウム(CsI(Tl))結晶の生産およびその応用製品である環境放射線計測機器を製品化するなど、放射線計測の普及に長年寄与してきました。
東日本大震災の発生以降、放射線計測の必要性が高まっており、放射線を短時間で高感度に検出する技術の重要性が改めて認識されています。このため、その基盤となる、検出器の材料や検出素子、イメージング技術など信号処理の研究開発には、大きな期待が寄せられています。
このような背景から、『2012堀場雅夫賞』では、放射線の検出・計測の基本要素技術の研究開発にスポットライトを当てました。

受賞者と受賞研究内容

(堀場雅夫賞 受賞者)

山谷 泰賀(やまや たいが)氏 独立行政法人 放射線医学総合研究所 チームリーダー
『がん診断と放射線治療を融合する開放型PETイメージング手法および装置の開発』
陽電子断層撮像法(PET)はがん診断、放射線治療はがん治療に用いられるが、それぞれ独立した技術である。山谷氏はこれら技術の融合をめざし、PETによるイメージングと同時に放射線治療を行なえる、患者を覆う面積を少なくした新しいPET装置「OpenPET」を提案した。新たに開発した3次元放射線位置検出器を用いることでPET装置を小型化し、治療ビームを通すのに十分な隙間の確保に成功した。あわせて、放射線治療との融合に必要な画像処理技術も検証している。OpenPETは「PETでがんの様子を観察しながらの放射線治療」など、効果的な放射線治療への貢献が期待できる。
※PET: Positron emission tomography(陽電子断層撮像法)。画像診断装置の一種。ごく微量の放射性物質を体内に取り込み、そこからの放射線(陽電子)の分布を検出して、コンピュータ処理で画像化(イメージング)する技術。

中野 敏行(なかの としゆき)氏 名古屋大学 大学院理学研究科 助教
『超高速原子核乾板自動飛跡読取装置の開発とその応用』
「原子核乾板」は、感光現象を利用して、放射線が通過した跡(飛跡)をサブマイクロ(1万分の1ミリ)単位で記録できる。中野氏は、この原子核乾板に記録された飛跡を機械的かつ自動で読み取る装置の実用化に、世界で初めて成功した。以来、装置構造や画像処理技術の改良により、読み取り速度の高速化を進めている。読み取り速度は、現在までに開発当初と比べて約1万倍と飛躍的に向上し、「世界最高速」を実現している。この装置はニュートリノの研究など多くの分野に貢献しており、将来的には、原子核乾板をもちいた火山や溶鉱炉、原子炉などの調査研究への応用も期待される。

越水 正典(こしみず まさのり)氏 東北大学 大学院工学研究科 応用化学専攻 准教授
『ナノ構造を有するシンチレータ材料の開発』
放射線があたると発光する蛍光物質はシンチレータと呼ばれ、その感度の高さや応答の速さにより、基礎科学研究から環境モニタリングに至る幅広い分野で放射線検出器として使用されている。その一方、シンチレータとして利用されてきた既存の材料には、現状以上の応答高速化が困難という問題点があった。越水氏は、シンチレータ材料開発に際して、ナノメートルスケールの微細な構造(ナノ構造)を構築するという手法を確立し、より高速な応答を示すシンチレータ材料を開発した。ナノ構造の導入によってシンチレータ設計の自由度が格段にあがり、より広い用途に応用できる高性能のシンチレータ開発へつながることが期待される。

(特別賞 受賞者)

スティーブン  ペイン 氏  米国 オークリッジ国立研究所 物理部門 研究員
Dr. Steven Pain, Physics Division, Oak Ridge National Laboratory
『エキゾチック原子核の構造解析用検出器(オークリッジ・ラトガース式円筒型検出器)の開発』
『Development of the Oak Ridge Rutgers University Barrel Array - a detector for studying the single-particle structure of exotic nuclei』 
原子核を構成する陽子と中性子の数は原子ごとに決まっているが、人工的に作り出された中性子の数が極端に多い「エキゾチック原子核」も存在する。エキゾチック原子核は非常に不安定で寿命が短いため、その構造や性質を調べるのが難しかった。オークリッジ国立研究所とラトガース大学のグループは、加速器内でエキゾチック原子核を生成し、瞬時に重水素に衝突させる手法で研究を行っている。この方法では、衝突で飛び出す陽子のエネルギーや方向を高精度で特定することが重要である。ペイン氏は、円筒型検出器を開発することにより、この課題を解決した。エキゾチック原子核の研究は、未解明とされる宇宙で起こる元素生成プロセスの解明など、宇宙の成り立ちの究明に貢献すると期待されている。