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『2015堀場雅夫賞』受賞者決定 / 授賞式は10月16日

2015年7月28日


-社外の「分析計測技術」研究者の奨励賞-

当社は、このほど、国内外の大学または公的研究機関の研究開発者を対象とした「分析計測技術」に関する研究奨励賞『堀場雅夫賞』の2015年度の受賞者を決定しました。
2003年の本賞創設から12回目となる今回の選考テーマは、”ナノ粒子計測”です。本年4月から5月にかけて公募し、海外含め21件の応募がありました。これらの応募に対し、募集分野において権威ある研究者を中心に9名で構成する審査委員会が、将来性や独創性、ユニークな計測機器への発展性に重点を置いて評価し、以下の3名を堀場雅夫賞受賞者、1名を特別賞受賞者に決定しました。受賞記念セミナーならびに授賞式は、学究界および行政関係から出席者をお招きし、10月16日(金)京都大学 芝蘭会館にて執り行います。

堀場雅夫賞について

堀場雅夫賞は、当社創業者の故堀場雅夫により、2003年に堀場製作所創立50周年を記念し、計測技術研究に従事する若手研究者を対象として創設されました。本賞は、画期的な分析・計測技術の創生が期待される研究開発に従事する国内外の研究者・技術者を支援し、科学技術における計測技術の地位をより一層高めることに貢献しようというものです。分析・計測技術の中でも堀場製作所が育んできた原理や要素技術を中心に毎年対象分野を定め、ユニークかつその成果や今後の発展性を世界にアピールすべき研究・開発にスポットを当てています。堀場雅夫は2015年7月死去。
本年は「ナノ粒子計測」というテーマで、4月1日から5月22日まで公募し、計21件(国内17件/海外4件)の応募がありました。2015の堀場雅夫賞受賞者の3名、特別賞受賞者の1名は、その応募の中から、画期的でユニークな分析・計測技術の創生が期待される研究開発に従事し、将来の分析計測技術発展の担い手になるという観点で、実績と将来性を審査委員会で審議し選考されたものです。

2015堀場雅夫賞 募集分野について

ナノ粒子を活用するナノテクノロジーは、IT・情報通信、ライフサイエンス、環境・エネルギーの分野における科学技術の進歩や課題解決に貢献する重要な技術です。たとえば、分子認識材料であるナノ粒子を用いた生体反応バイオセンサーや、患部へ特定の薬物を輸送するドラッグデリバリーシステム、優れた白色性や紫外線吸収力を持つ酸化チタンナノ粒子を用いた白色顔料などもナノテクノロジーによるものです。ナノ粒子に特異な機能を持たせるにはナノ粒子の粒径をはじめ、その形状や物性など、ナノ粒子の実態を把握してコントロールする必要があり、ナノ粒子計測がナノテクノロジーの進展を左右するといっても過言ではありません。2015堀場雅夫賞では、この重要なナノ粒子計測を募集分野に設定しました。

<受賞者ご紹介>

[堀場雅夫賞]

則末 智久氏 
京都工芸繊維大学 大学院工芸科学研究科  准教授

「動的超音波散乱法による懸濁微粒子溶液のダイナミクス解析」

溶液中に分散したナノ粒子の粒径や分散状態を計測するには、試料にあてた光が粒子によって散乱する様子をみる「動的光散乱(DLS)法」が一般的である。ただし、粒子濃度の高い不透明な試料では光が透過しないため、DLS法の応用は困難であった。則末氏は、光の代わりに「超音波」を試料に照射する「動的超音波散乱(DSS)法」をこのような高濃度試料に適用し、さらに当初マイクロメートル(μm)オーダーであった検出下限を数十ナノメートル(nm)まで伸ばすことに成功した。加えて、超音波を様々な波長成分に分解することで、空間情報の取得や運動様式の識別も可能である。この研究は、インクや半導体粒子、機能性ゲルなど不透明な分散系の構造・分散状態の解析への応用が期待される。

藤原 正澄氏
関西学院大学 理工学部 環境・応用化学科  助教

「ナノ光ファイバを用いた蛍光性ナノ粒子の一粒子計測」

蛍光性ナノ粒子の一粒子計測技術は、光通信や生体組織の観察など幅広い応用が期待されている。しかし、計測機にナノ粒子からの光を効率よく集めることが困難であった。藤原氏は、直径 300ナノメートル(nm) という極細のナノ光ファイバの作製に成功し、その表面に蛍光性ナノ粒子を接触させることで、ナノ粒子から生じた光子を効率よく集める手法を世界に先駆けて確立した。この方法による一粒子蛍光検出は、従来の手法に比べて約 10 倍の集光効率を達成している。この研究は、高効率集光デバイスとして、量子情報科学や生命科学の分野における新しいセンシングへの応用が期待される。

【用語解説】

  • ナノ光ファイバ: 通常の光ファイバを、直径が数百ナノメートル(nm)まで微細化したもの。
  • 蛍光性ナノ粒子: 半導体人工原子(量子ドット)に代表される、特定の波長に強い蛍光を示す粒子。

湯川 博氏
名古屋大学 先端ナノバイオデバイス研究センター 特任講師

「量子ドット蛍光計測・元素分析による移植幹細胞 in vivo イメージング診断法の構築」

再生医療として注目を集めている幹細胞移植において、生体内へ移植した後の細胞を追跡する技術は極めて重要である。しかし、移植細胞は小さいため、これまでの一般的な測定機器(レントゲン、CT、MRIなど)では、十分な追跡ができなかった。湯川氏は、「量子ドット」を幹細胞に効率よく取り込ませる技術を確立し、近赤外領域の蛍光を発する量子ドットを使用することで、移植後の幹細胞の長期にわたる定量的な追跡を実現した。さらに、蛍光の波長がそれぞれ異なる量子ドットを組み合わせ、移植された細胞を判別することも可能にした。この研究は、iPS細胞に代表される幹細胞の移植技術の進歩に貢献すると期待される。

【用語解説】

  • 量子ドット: 主に半導体材料からなるナノ粒子であり、電子がナノ空間に3次元全ての方向から閉じ込められた状態のものをいう。決まった波長の光(励起光)をあてることで、強い蛍光     を発する。また、同じ励起光をあてた場合でも、量子ドットの粒径により放出される蛍     光の波長が異なるという特徴を持つ。
  • 幹細胞:組織・臓器に特有な細胞に変化する前の「未分化」の細胞。他の細胞に変化する能力を持つ。
  • in vivo:「生体内」を意味する。

[特別賞]

チン・ユウ氏(陈勇:Yong Chen,)
パデュー大学 ブリック・ナノテクノロジー・センター 准教授

「グラフェン・ナノ物質の顕微ラマン分光解析」

炭素系ナノ材料として期待されるグラフェンの実用化には、詳細な物性情報の把握が不可欠である。チェン氏は、グラフェンそのものや、グラフェンでできた電子部品の物性評価を目的に、試料の温度・圧力制御など専用の機構を備えたラマン顕微鏡を構築し、グラフェンのCVD膜成長やグラフェン製の電子部品の性能を解析することに成功した。あわせて、大面積グラフェンや二層グラフェンなど、電子部品への応用により適したグラフェンの開発でも成果をあげている。今後、さらに高品質で優れた特性をもつ特殊なグラフェン(グラフェン単結晶や抵抗可変グラフェン)の開発などを通じて、グラフェンの実用化に貢献することが期待される。

【用語解説】

  • グラフェン:   炭素原子が蜂の巣のような六角格子の形で結合して、一層のシート状の形をとったもの。非常に電気を伝えやすい(電気伝導度が高い)ことをはじめ、電子部品の材料として期待される多くの特長をもつ。
  • ラマン顕微鏡:試料にレーザ光をあてたときに放出される「ラマン散乱光」を利用し、分子の構造を調べる手法を「ラマン分光」という。ラマン顕微鏡では、試料の極めて狭い領域にレーザをあてて、局所的なラマン分光解析が可能。
  • CVD(化学気相成長): ガスを原料として、基板表面や気相中で化学反応によって薄膜を成長させる手法。

関連情報 堀場雅夫賞ウェブサイト