農業排水や下ベンゼンなど有害大気物質を連続測定大気汚染防止法の改正に照準

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(株)堀場製作所(本社・京都市,社長・堀場 厚)は、発がん性が指摘される有害大気汚染物質(HAPs)の内、近く環境基準の設定が予定されている、ベンゼンなど3物質を連続自動測定する、大気汚染監視用HAPs濃度測定装置を開発しました。環境庁の認可法人の(社)日本環境技術協会では、環境庁の委託を受けてHAPsの連続自動測定装置の実証試験を大阪,東京など4カ所で行っており、当社を含む6社が試作した装置の評価中です(当社装置は国設四條畷自動車交通環境測定所(大阪府四條畷市)にて実証試験)。現在のところ、当社装置では要求される連続測定データが得られており、有害大気汚染物質対策を盛り込んだ、改正大気汚染防止法の施行が予定されている来春に、他社に先駆けて製品化できる見込みです。

日本では、COやNOx,SOxなど直接的に人体に悪影響を及ぼす物質は、昭和40年代の「公害」が社会問題になった時代から規制され、今では世界的に見ても規制レベルは高い水準に至っています。一方、有毒性,蓄積性があり人間のみならず動植物に有害な影響を及ぼすものの、大気中には微量しか含まれないために今まで規制されていなかった有害大気汚染物質(HAPs)は、発がん性など人の生涯リスクの観点からも問題となるのは確実です。環境庁では、これらの有害物質の増大を未然に防止することを目的とした対策を策定中で、有害大気汚染物質として234物質をリストアップしています。中でも早急に規制的措置が必要な物質として、ベンゼン,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレンの3物質の環境基準の設定や、優先取組物質としての22物質を絞り対策の検討を行っています。対策を推進するためには、正確な濃度把握のための大気環境モニタリングの確立が重要となります。そのため、同庁の認可法人の(社)日本環境技術協会に、連続自動測定装置の実証試験を委託。同協会では、本年7月より来年1月まで大阪,東京など4カ所で6社の試作有機化合物測定装置の自動運転・評価を行っています。

実装評価を受けている試作装置は、通常研究室や実験室で使用されている汎用分析装置の流用が多い中、当社は22物質の中でも特に問題物質の、ベンゼン,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレンの3物質に絞った装置を専用に開発、試作しました。本装置は、当社が長年培ってきた乾式自動測定機の技術を利用しているため、汎用装置に比べて①専門的で繁雑な作業が不要②連続した自動測定が可能③テレメータと接続できデータ伝送が可能などの利点があり、現在のところ当社装置では、要求される連続測定データが得られています。

中央環境審議会から出された答申(10月18日付)を受けて環境庁では、昭和48年以来23年ぶりにベンゼンなど3物質について、年内中に環境基準を設ける予定です。これら新たな対象物質の対策を盛り込んだ改正大気汚染防止法は、来年4月にも施行される予定です。当社としては、来年春を目処に製品化を行い、業界の中でいち早く規制に対応した測定装置を提供する予定です。なお、現在の試作段階では3成分計のみですが、製品化段階では、他の測定成分にも対応させたシリーズ化を予定しています。

〈 主 な特 長 〉

  1. 大気中の有害大気汚染物質の内、ベンゼン,
    トリクロロエチレン,テトラクロロエチレンの3成分の濃度を、自動連続測定。
  2. 専用装置なので、従来の実験室用分析装置のように専門知識や繁雑な作業は不要。
  3. COやNOxなど既に規制されている物質の測定装置と同じ大きさなので、今ある測定システムとの組み合わせや追加が可能。テレメータとの接続による遠隔監視も可能。


〈 主 な 仕 様 〉
測定原理:ガスクロマトグラフ法(GC),光イオン化検出法(PDI)
測定範囲:0〜50ppbなど
測定時間:0.3ppb以下
外形寸法:430×221×550mm



参考資料

測定原理
GC法=Gas Chromatographの略。試料を気化しキャリアガス(測定に影響を与えない試料搬送用のガス)によって、カラム(試料分離管)内で展開させ、各成分に分離して濃度測定を行う装置。カラムには充填カラム,キャピラリーカラムなどがあり、吸着能の差やコーティングされた液相との気液平衡の差などを利用して分離する。PID法=Photo Ionization Detectorの略。紫外光を有機化合物に照射することにより生じるイオン化を利用した検出器。有機化合物が光エネルギーを吸収し励起状態となり、イオン化ポテンシャルが上昇すると、電子を放出しイオン化が起こる。このイオン電流を測定する。特に、芳香族炭化水素や有機塩素化合物などに感度が高い。

有害大気汚染物質(HAPs=Hazardous Air Pollutants)

  1. 大気中に存在する化学物質で人の健康に悪影響をきたし、
  2. その多くは人間の諸活動に由来し、
  3. 但し既存の大気汚染防止法により関連物質の排出規制が実施されている汚染物質(SO2,NO2,CO,浮遊粒子状物質,光化学オキシダント)は除く、というように定義される。特徴は発生源および排出形態が多様であることと、有害性として発がん性を有するものが少なくないこと。


優先取組物質
アクリロニトリル,アセトアルデヒド,塩化ビニルモノマー,クロロホルム,1、2-ジクロロエタン,ジクロロメタン,テトラクロロエチレン,トリクロロエチレン,1.3-ブタジエン,ベンゼン,ホルムアルデヒド,ニッケル化合物 他

(社)日本環境技術協会 環境庁の認可法人で、環境基準に必要な計測技術の開発・改良および体系化等の事業を行う団体。計測測定機器メーカや維持管理業者などから構成され東京に本部を置く。会長:風間 酉夫氏(東亜電波(株)社長)。

環境基準
各国において環境基準という目標を揚げて、各種対策が進められている。生活環境などに差があり単純比較はできないが、概して日本では比較的厳しい基準を設けている。現状の環境基準が定められている物質は「閾値」があるが、ベンゼンなど遺伝子毒性のある発がん性物質は閾値がないとされており、実質的に安全とみなすことができる生涯リスクレベルを設定される見込み。

ppb=10億分の1

テレメータ無線によるデータ伝送。大気汚染や水質汚染などの監視では、無人自動運転されている複数の測定局から一定周期でデータを監視センターなど一か所に伝送し監視が行われている。

(お問い合わせ先)
(株)堀場製作所
〒601京都市南区吉祥院宮の東町2
TEL075-313-8121
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(内線2011/075−315−6776直通)