英国の蛍光寿命測定装置専門会社を買収

|   ニュースリリース

当社のグループ会社で、光を応用して、半導体や理化学分野の計測機器を開発するジョバンイボン社(本社・フランス)は、このほど、物質の分子構造を測定する蛍光寿命測定装置の専門会社、IBH社(本社・英国)を買収しました。IBH社が持つ計測方式が製品群に加わることで、従来から得意とするバイオ関連に加え、有機ELやカーボンナノチューブ等の次世代新素材の計測で、幅広い顧客ニーズ対応が可能になります。また、当社とジョバンイボン社の販売ルートを活用することで、特に米国とアジア向けに新たな拡販が期待できます。今回の買収により、当社グループの蛍光寿命分析装置は、市場・販売ルートの両面で世界的なフルラインアップ体制が確立することになります。

  • 背景
    当社では、次世代新素材やバイオ関連の品質管理や研究開発向けの分析機器を、研究開発から製造・販売までグローバルに事業展開しています。なかでもフランスのジョバンイボン社(1997年買収)は、光を応用した分光分析技術において当社グループの中核を担い、その技術力とブランドで世界をリードする存在です。蛍光分析分野で30年以上ビジネスを行っており、物質の分子構造や状態を分析する蛍光寿命測定装置では、特に欧米で高い認知度を誇っています。
    一方、最近の市場では、カーボンナノチューブなどの次世代半導体材料や、有機ELなどの次世代素子の基礎研究に蛍光寿命測定が注目されています。特に、本格的な研究機関だけでなく、民間企業の研究開発にも使えるようなデータ解析が簡単で、取扱いの容易な蛍光寿命測定装置への需要が高まっています。特に、本格的な研究機関だけでなく、民間企業の研究開発にも使えるようなデータ解析が簡単で、取扱いの容易な蛍光寿命測定装置への需要が高まっていました。
  • 買収について
    今回買収したIBH社は、蛍光寿命測定装置の専門会社で、データ解析が簡単な取扱いに優れた製品群を独自開発しています。研究機関向けに強いジョバンイボン社製品に、計測手法が簡便なIBH社製品が加わることで、民間企業向けにもさらなる拡販が期待できます。また用途の面では、特にバイオ関連や生化学分析に強いジョバンイボン社製品に、次世代新素材分析に適したIBH社製品が加わることで、きめ細かい顧客ニーズへの対応が可能になります。さらに販売ルートの面でも、従来IBH社製品は欧州のみの販売でしたが、当社とジョバンイボン社の世界的な販売網を活用することで、特に米国、アジア市場に対しての新たな拡販が期待できます。
    今回の買収により、当社グループの蛍光寿命分析装置は、市場・販売ルートの両面で世界的なフルラインアップ体制が確立したことになります。これらの買収によるシナジー効果で、今後2年間で同分野の売上5億円を目指します。


参考資料

  • IBH社(IBH Consultants Ltd.)
    英国に本社を置く、蛍光寿命測定の専門会社。世界に名だたる、蛍光寿命測定の研究者を社員とする技術者集団。1977年に専門の研究者によって、蛍光寿命測定装置の設計・コンサルティング業を営むベンチャー企業として設立。1989年から自社製品の製造発売を開始し、現在まで、欧州では最も信頼性が高いとされる蛍光寿命測定装置を提供している。
    2002年度売上:795千英国ポンド(約154百万円)/従業員:10名
     
  • ジョバンイボン社(JOBIN YVON,S.A.S.)
    フランスに本社を置き、当社グループの分光分析技術の中核を担う。
    1819年創業とヨーロッパで最も長い歴史をもつ光学機器メーカー。世界トップレベルの光技術力と強いブランド力をもち、社名の「ジョバンイボン」は光分光の代名詞となっている。1997年に当社が買収。現在、半導体分野を中心に当社グループとの共同開発を展開中。蛍光分析事業はアメリカの子会社(JOBIN YVON,Inc.)に本拠を置く。
    2002年度売上:91百万ユーロ(約10,754百万円)/従業員:約530名
     
  • 蛍光分析
    物質に特定の波長の光を照射すると、光を吸収したのち、そのエネルギーを光として放出する。この光を蛍光といい、その波長や強さを測定することで、試料の性質や濃度を分析する方法。照射する光は、励起(れいき)光といい、光源としてキセノンランプやレーザーなどが用いられる。
    生化学、物質化学、半導体、医薬品、バイオ関連等の様々な分野において、分子や細胞の構造、生体内での新陳代謝物などの精密測定に用いられる。
     
  • 蛍光寿命測定
    蛍光寿命とは、励起光を吸収した物質が、一時的にエネルギーの高い状態(励起状態)に移り、次に蛍光を放出し元の状態に戻るまでの時間のこと。この時間は10億分の1秒程度と非常に短く、試料により異なる。また、試料から出る蛍光は、光を照射した直後が最も強く、時間とともに次第に弱くなる。蛍光の強さが時間経過とともに減衰していく変化を測定することで、物質の分子状態や特性がわかる。
    分子構造や特性、分子の置かれている状態を正確に測定する用途に適している。
     
  • ジョバンイボン社とIBH社製品の各計測方式の特徴
     
    • ジョバンイボン社製品:(位相差法/Frequency Domain法)
      通常の蛍光測定から蛍光寿命測定まで幅広くカバーする。
      光源にキセノンランプを使用し、微細な試料に与えるダメージが少ないため、バイオや生化学分野の測定に適する。
      価格は2500万円〜3000万円程度。
       
    • IBH社製品:(単一光子計数法/Time Domain法)
      蛍光寿命測定の専用機で、操作が容易。時間の経過と共に蛍光の減衰過程をグラフ表示し、データ解析しやすい。光源に強いレーザーを用いることができ、光の強度が必要な次世代半導体材料などの新素材測定に適する。価格は1000万円〜2000万円程度。