被曝なしで骨密度を定量評価

|   ニュースリリース

弾性定数を世界で初めて提供
超音波骨密度装置を京都産学連携で実用化

当社は、応用電機株式会社(本社:城陽市)が、JST(独立行政法人科学技術振興機構)の支援を受けて、超音波式でヒトの骨を構成する皮質骨と海綿骨それぞれの厚みや骨密度および弾性の定量評価を、世界で初めて実現した骨密度測定装置の実用化に、同志社大学 大谷名誉教授と共に技術協力のかたちで参画し、このほど開発に成功しました。
骨粗鬆症の検査に使われ、さらに、薬の副作用による急激な骨の強度劣化をモニターするなど、測定値の定量評価を可能にした事により、新たな骨密度測定の利用が期待されます。
応用電機株式会社は、京都府より元気印企業にも認定されており、京都の産学で連携し実用化に成功した今回の装置で得られる測定データの有用性について普及活動が行われ、当社も協力していきます。

(以下、応用電機=応用 同志社大学 大谷名誉教授=大谷 堀場製作所=堀場と記載)

 

世界初の骨密度測定装置を開発

これまで、骨密度測定は主に骨粗鬆症が原因で弱まった骨の強度診断に活用されていました。一方で、その被曝性や定量性などの課題解決が求められてきました。現在、骨の強度の測定にはX線と超音波の2種類の測定原理があります。X線測定は、皮質骨と海綿骨の分離計測が可能で骨密度や骨厚を測定しますが、放射線での被曝の危険性があります。一方、超音波測定は被曝がなく発がん性リスクはありませんが、測定結果の定量評価ができず直接骨密度を測っているのではないので、正確な測定結果を求められません。このたび、2波検出法という超音波測定方法を開発したことで、被曝なしに、皮質骨と海綿骨の分離測定や、骨密度や骨厚を測定する装置を世界で初めて実用化しました。
今後、新たに薬効モニターのような繰り返し測定する骨密度測定ニーズに対応できる装置として、医療現場ではその用途の領域拡大が期待されています。 


装置概要

外寸/質量:430(W) × 550(D) × 644(H)mm / 52Kg(本体)
測定原理 :超音波2波検出法
測定部位 :手首(とう骨) 
測定項目 :透過波減衰[dB]、とう骨厚[mm]、皮質骨厚[mm]、海綿骨密度[mg/cm3]、海綿骨弾性定数[GPa]

 

超音波2波検出法について

手首にあるとう骨に超音波を照射した際に生じる2波を検出し、骨密度と骨厚を求める世界で初めての測定方式。海綿骨に超音波をあてた際、骨梁に依存して伝搬する"高速波"と粘弾性のある骨髄 に依存し伝搬する"低速波"の2波に分かれる特異現象が発生します。現行の超音波法ではその2波を分けておらず、伝搬する超音波を一緒に解析し骨密度を求める方式で定量評価することができません。このたび、独自の演算システムの開発と高感度なセンサーの搭載により、2波それぞれの音速や減衰率など伝搬特性の個別解析に成功したことで骨密度と骨厚の定量評価に成功。また、骨質の指標として注目されている海綿骨の弾性も測定し、骨密度に加えて複合的に骨の強度を測定します。

 

共同開発の経緯

1990年代に超音波の伝搬法則などを専門に研究し、超音波2波検出法の基礎理論を持つ大谷と堀場の特許をもとに、2001年応用がJSTから補助金助成を受けて開発に着手し、2004年に試作機を完成させ実用化に成功。そして、2005年に医療現場から安全性や有効性などの科学的データが得られ、2009年に医療器具としてX線骨密度測定装置との高い相関が厚生労働省の審査で認められました。応用が京都府元気印中小企業に認定制度の支援を受けており、ステロイド薬の服用による急激な骨の強度劣化をモニターするなど、骨密度測定の新たな活用法として期待されています。

 

会社概要・研究者概要

●応用電機 株式会社の概要
本社所在地:京都府城陽市
代 表 者:代表取締役 茶屋誠一
事業内容:電子・光学を応用した測定・計測機器,メカトロ機器,医用機器の開発,設計,製造
売 上 高:42億円(2009年6月期実績)
従業員数:430名
電話番号:0774-55-1101(代)

応用電機株式会社

●同志社大学 大谷隆彦名誉教授
所  属:同志社大学 名誉教授(理学博士)
研究内容:医用超音波、海洋音響学、非破壊検査、超音波波動伝搬理論、超音波エレクトロニクス