小型電極式血糖測定機器「アントセンスIII」開発

|   ニュースリリース

当社は、糖尿病などの診断や外科手術・透析の際に必要となる、血液中のブドウ糖(グルコース量)測定に用いる「小型電極式血糖測定機器アントセンスIII」を開発しました。
当社は、2000年に三共株式会社から小型血糖測定機器「アントセンスII」の生産を受託し、本年の3月31日に事業買収を完了しています。本製品は、これまでOEM供給してきた経験と生産技術を生かし、診療現場の要望に応えるため、初の自社ブランド血糖測定機器として新たに開発したものです。機器本体はポータブルタイプで医師・看護師が測定する際、必要な場所に持ち運ぶことができ、検査室に設置されている大型装置と同等の正確な測定結果を50秒以内で迅速に提供します。
1987年に医用分野に本格参入して以来、フランスのグループ会社ABX社と共に、血球計数装置や生化学検査装置を主力としてきましたが、今回新たに自社ブランド化した小型血糖測定器を市場に投入することで、医用事業の第2の柱に育てていきます。

=本製品は、5月13日〜15日 東京フォーラムで開催の「日本糖尿病学会年次学術集会」、また5月14日〜15日 富山国際会議場で開催の「日本医学検査学会」に出品し、7月に発売を予定しています。=

<開発のねらい>
当社の血糖測定機器は、2000年に三共株式会社から小型血糖測定機器「アントセンスII」の生産を受託して以来、国内市場で約7000台を出荷しています。本年の3月31日に同事業の買収を完了し(昨年10月に基本合意)、自社ブランドによる血糖測定機器の投入が可能になりました。
OEM供給で蓄積してきた生産技術を生かし、診療現場から寄せられていた様々な要望に応えるべく、初の自社ブランドによる血糖測定機器として本製品を開発しました。診療現場のニーズに合わせて新開発した本製品を投入することで、糖尿病検査事業を医用ビジネスの第2の柱に育てていきます。

<血糖測定について>
現在、国内で糖尿病が強く疑われる人は740万人、予備軍を含めると1620万人(日本の人口の約12%)と推定されています。糖尿病に代表されるように体内中の血糖コントロールが不十分になると、高血糖状態では血管障害や心疾患などを発症するリスクが高くなり、低血糖状態では意識喪失など重篤な事態になるため、血液中のブドウ糖(グルコース量)を正確にモニターする必要性がますます増えると考えられます。

<今回開発した製品>
本製品は、ICU(集中治療室)、CCU(冠動脈疾患集中治療室)など体内の血液中のブドウ糖(グルコース量)を適正にコントロールする必要のある場面で、血液を前処理することなく、わずか1滴(=5μL。1μは100万分の1。)で50秒以内に測定結果を表示することができます。従来製品に対して、100mg/dL以下の低濃度域の性能を向上させ、繰り返し貼りはがしできる用紙に印字するプリンタを新たに備えました。また、病院・医院のオンラインシステムと接続できる端子をもち、電子カルテなどのIT化を検討している施設にも対応できる機能を新たに追加しています。小型・迅速測定・高精度測定という特長を活かし、病院・医院でプロフェッショナル向けとして医師・看護師に利用され、幅広い分野(病院検査室、ICU、CCU、ベッドサイド、病棟詰め所、手術室、救急救命室、外来、医院)の医療現場で診療に貢献できる製品です。

<従来製品との比較>

  • アントセンスIII
    測定下限:10mg/dL(50%向上)
    プリンタ:内蔵式(標準設定)
    外部出力:RS-232C(標準設定)
    外形寸法(mm):200×180×65
    重量(g):800
  • アントセンスII
    測定下限:20mg/dL
    プリンタ:外付けオプション
    外部出力:なし
    外形寸法(mm):200×120×50
    重量(g):800



<主な特徴>

  1. 幅広い測定範囲を実現。低濃度10mg/dLから測定可能。
    特に測定頻度の高い10mg/dL〜250mg/dLの血糖値の精度を向上。
  2. プリンターを標準搭載。
    測定値を手書きで記録する手間が要らない。
    付箋のように繰返し貼ってはがせる用紙。
    印字後は、カルテにそのまま貼るだけ。
  3. 外部出力にRS-232Cを標準搭載。
    オンラインシステムや電子カルテ化に対応可能。


<主な仕様>
測定項目:血中グルコース(ブドウ糖)
測定原理:酵素電極法
測定検体:全血(静脈血・動脈血・末梢血)
測定時間:50秒以内
測定範囲:10〜1000mg/dL


参考資料

  • 測定原理:酵素電極法
    血中のブドウ糖は、ブドウ糖酸化酵素を固定化したキャップ膜を透過する際に、その触媒作用により、グルコン酸と過酸化水素を生じる。過酸化水素は電極表面で分解され、この時電極に電流が流れる。この電流を検出することにより血液中のブドウ糖(グルコース量)を測定する。
  • 血中グルコース(ブドウ糖)
    自然のエネルギーによって合成された糖類栄養素の1つ。
    これらの糖類が細胞内で酸化することで熱エネルギーを得て生理作用に利用される。
    通常、血中グルコースはホルモンや神経により70mg/dL(空腹時)〜140mg/dL(食後)の範囲にコントロールされている。糖尿病は、ホルモンによる調節能力が低下して血中に残るグルコース量が多い(高血糖)状態が続く慢性的な代謝疾患こと。