[報道発表] 掲載内容は発表日時点の情報です。

産学官で共同開発 世界で初めて雨水など正しいpH測定

2011年9月 5日


京大のゲル状イオン液体塩橋を採用「内部液が漏れない!」pH電極
世界のタブーを破る pHガラス電極『Pure IL』を10月発売

当社は、試料へ電極内部液の高濃度塩化カリウム(以下,KCl)が漏れることなく、pH測定できる世界初のpHガラス電極『Pure IL(ピュア アイエル)』を10月3日に発売します。本電極は、比較電極に京都大学垣内教授が発明した、試料と混合せず試料と電極内部液との間の電位を安定化するイオン液体塩橋(*1)を採用。そのため、業界の常識の"内部液が漏れることで、pH値に誤差が生じる"雨水や純水のような電気伝導率が低い溶液でもpHが正確に素早く測定でき、KClと反応する化合物を含む溶液のpHも測定できます。本製品の開発は、JST研究成果展開事業の一環で実施され、pH測定の100年の歴史を変える技術として、産学官共同で製品化に成功しました。今後、薬品や化学分野の研究開発向け専用の電極として新たな測定ニーズに対応していきます。

本電極開発の経緯

本電極は、京都大学大学院工学研究科物質エネルギー化学専攻、基礎エネルギー化学講座機能性材料化学分野、垣内隆教授の研究成果を実用化したものです。同教授の研究は、平成17年(2005年)~19年に独立行政法人 科学技術振興機構の研究成果展開事業【先端計測分析技術・機器開発プログラム】要素技術タイプの要素プログラムに採択され、同教授が考案した新規な塩橋の原理検証が行われました。当社もその参画機関として、同塩橋を搭載したpH測定用電極を試作し、従来電極では正確な測定が難しいとされてきた、雨水などの低電気伝導率試料において、正確かつ迅速な測定への可能性が見いだされました。その成果をもとに、当社では、平成20年(2008年)~22年に、同じく研究成果展開事業【先端計測分析技術・機器開発プログラム】プロトタイプ実証・実用化タイプに垣内教授との連携で参画し、要素プログラムでの成果の実用化のための研究開発を行いました。本プログラムでは、同教授が、新規な塩橋技術の改良と、本技術によって得られるpH測定値の妥当性について学術的な検証を行うとともに、当社において、改良された塩橋技術を搭載した電極の試作を行ってきました。また、同プログラムには、秋田大学資源工学科 小川信明教授、(財)日本環境衛生センター アジア大気汚染研究センター、株式会社 ウォーターエージェンシーも参画し、当社で試作した電極を用いて、降水・上水などの実試料での評価を積み重ねました。これらの成果を基礎として、従来にないpH測定用電極の製品化に成功しました。

pH電極の現状と、新規電極の優位性について

溶液の酸性・アルカリ性の指標であるpHは、溶液のpHに応答するガラス電極と電位差の基準となる比較電極の2本の電極間の電位差を測定することで得られます。正しくpH測定するには、比較電極がどんな試料溶液中でも一定の電位を示すことが求められます。測定試料と比較電極内部との間で自由に電子を受け渡す必要があるため、比較電極には小さな穴が空いています。比較電極の内部は、測定試料のpHに関わらず常に一定の電気伝導率を保つ溶液で満たされています。そのため、比較電極の内部液には、ガラス電極式pH計が実用化された100年以上前から、高濃度のKCl溶液が用いられてきました。しかし、雨水、河川水、純水のような電気伝導率が低い試料のpHを測定するために比較電極を試料中に浸すと、表面に空いている穴から高濃度KCl溶液が測定試料内へ流出し、試料のpHが変化してしまうという問題がありました。また、高濃度KClと電気伝導率が低い測定試料の間には液間電位差(*2)が生じるために比較電極の電位が一定せず、正確で安定な測定ができませんでした。さらに、試料中に高濃度KClと反応する化合物が含まれていると、比較電極から流出した高濃度KClと反応し、試料の性状を変化させてしまいます。
これに対して、イオン液体塩橋を搭載したPure ILは、イオン液体のわずかな溶出(従来濃度比1/10000以下)で比較電極として機能し、低電気伝導率水との液間電位差も抑制され、このようなKCl比較タイプのpH電極の問題点を解決できます。

イオン液体塩橋型pH電極の市場性

本電極の最も活用価値の高いニーズとして、低電気伝導率試料の正確かつ迅速な測定が求められる、大学・公的研究機関における環境研究分野が想定されます。これらの分野において、本電極を用いた研究成果が学術的に認められることにより、本電極の優位性がさらに認知されるものと期待されます。加えて、検体への高濃度KCl流出が抑制されるという利点から、KClと反応する化合物が含まれ、従来電極の適用が困難であった、製薬、食品業界の研究開発部門での薬剤化合物の研究開発や、飲料水の商品開発でのニーズを想定しています。
さらに将来的には、試料への高濃度KCl流出が抑制される利点を生かし、100μL~300μLの微量な検体でのpH測定に、幅広く適用されるようになることが期待されます。

主な特長

  1. 世界初のイオン液体塩橋を搭載したpHガラス複合電極
    「pHは比較電極の内部液が試料に流出して測定するものだ」という今までの常識を覆す画期的な発明で、当社が世界で初めて製品化に成功。
  2. 世界初 KClの漏れないpHガラス電極
    高濃度KClがまったく漏れないため、試料中に高濃度KClと反応する化合物が含まれる場合にも、試料の性状を変化させずpH測定が可能となる。
  3. 低電気伝導率水のpHを正確に素早く測定できる
    雨水、河川水、純水のような電気伝導率が低い試料でも、正確で安定な測定が可能である。

Pure ILの用途例

雨水、河川水、純水のような電気伝導率の低い試料や、高濃度KClと反応する化合物が含まれる試料のpH測定を必要とする研究開発

仕様

使用温度範囲:0-60℃
pH範囲 :0-14
液絡部:イオン液体ゲル<内部液補充は不要>

希望販売価格

税抜140,000円(税込147,000円)
なお、当社のpHメーター(本体)に接続し使用できます。

【用語解説】
(*1)イオン液体塩橋
イオン液体は100℃以下でイオンのみから成る液体で、イオン液体塩橋とは比較電極内部液と試料溶液間に挿入される第三の液体(塩橋)にイオン液体を用いた新しいタイプの塩橋。

(*2)液間電位差
異なる2つの溶液間に生じる電位差のこと。電位差測定におけるpH測定の場合、比較電極内部液と試料間に生じる電位差のこと。

リンク

JST研究成果展開事業(先端計測分析技術・機器開発プログラム)