[報道発表] 掲載内容は発表日時点の情報です。

超微量PM分析装置を開発

2001年5月21日


当社は、自動車から排出される物質で最近注目を集めているPM(粒子状物質)の量を、従来法では1日以上かかっていたものをわずか4分と短時間で、さらに0.2μgと超高感度で計測する装置の開発に成功しました。自動車での研究開発に、迅速な計測データを提供できます。

=今回開発した技術を、以下の学会ならびに付設の展示会にて発表します。=
2001年5月25日(金) 自動車技術会 春季大会(会場 パシフィコ横浜)

< 背景 >
地球環境問題の観点から、世界の自動車メーカーは自動車からのPM排出量を低減するための開発に力を入れており、成分の測定量も年々微量化の傾向にあります。
また自動車開発においてPM全体のみならず、PM中の各成分(SOF、soot、サルフェート)ごとの詳細な情報はエンジンの燃焼状態やPM排出量を知る点で重要であり、これら成分ごとの測定まで含めて短時間で計測・分析する要求が高まっています。

従来からのPMの測定法は、「重量法」と呼ばれるものでフィルタにPMを集め、フィルタの重さを天秤で計ってPM量を求める手作業的な分析プロセスで行なわれています。そのため測定対象のPMが超微量になると、様々な測定誤差要因の影響を受けやすくなります。また、PM成分の分離測定には溶剤などを用いるプロセスも含まれ、通常2〜3日かかっています。自動車排ガス計測装置でトップシェアの当社には、世界の自動車メーカーから超微量のPMを短時間で計測できる装置の開発要求が寄せられていました。

<本装置について>
今回開発した装置は、従来法では困難であった超微量PM測定と、PM成分の分離測定を圧倒的な短時間で同時に実現します。具体的には、業界で初めてSOF、soot、サルフェートの3成分を同時に、かつ0.2μgまでの超微量域まで測定することが可能です。

測定時間も、従来まで2〜3日かかっていたものが、わずか4分と圧倒的に短時間です。

「重量法」の手法にのっとったPMの測定がNOxなど他の排出成分と同じように短時間で可能になれば、測定データを素早くフィードバックすることができ、開発の効率化に役立ちます。

この市場ニーズに合致した装置開発を可能にしたのは、測定法に採用した「気化・酸化還元法」と当社のガス成分分析における長年にわたる技術ノウハウです。「気化・酸化還元法」は、フィルタで集められたPMを気化させ、酸化・還元により発生するガス濃度からPM質量を測定するため、湿度などの誤差要因の影響が極めて少なく、PM成分の分離測定も簡単に行えます。そして、ガス分析を用いた微量成分分析は、環境分野や理化学分野用など、当社が最も得意とする技術シーズのひとつです。今回開発した装置が、世界の最先端の自動車開発において、特に測定業務の効率化の面で大きく貢献できるものと期待しています。

−測定原理「気化・酸化還元法」−
気化・酸化・還元プロセスにより各成分の質量測定を行う方法で、従来からの測定法である「重量法」との相関に優れているのが特徴。
具体的には、PMを捕集したフィルタを窒素が流れている980℃の炉に挿入し、このとき気化するSOF成分を酸化し、CO2として検出する。つぎに、炉内に酸素を流すと、soot成分が酸化され、同じくCO2として検出できる。また高温化での還元作用により、サルフェートもSO2の形で測定することができる。ガス分析計で得られたCO2質量とSO2質量からsoot質量、SOF質量、sulfate質量を算出する。


参考資料

−用語説明−

  • 自動車技術会
    1947年(昭和22年)に設立以来、自動車に関して社会的に要請の高い課題や将来技術に取り組み、調査研究の成果をシンポジウム等でより広く社会に提供している。
    自動車技術会の主要な事業活動のうちの一つに学術講演会があり、エンジン、安全、交通システム、リサイクル等自動車に関する最新研究成果が発表される。
    今回の春季大会では併設展示会として「自動車技術展 人とくるまのテクノロジー展」が開催される。今回開発した本装置も、展示会に出品の予定。
  • PM(Particulate Matter:粒子状物質)
    固体、または液体の粒子から成る物質で、エンジンから排出されるすす、燃料やエンジンオイルの燃えかすなどの総称。各国では総重量での排出量だけではなく、特に径の小さなPM粒子を問題とする動きが出てきている。このため、PM成分ごとの分析が特に重要になっている。
  • PM成分について
    =各成分ごとにはかる意義=
    PMの各成分は、エンジンの燃焼状況により排出量や比率が変わるため、エンジンや触媒など自動車関連の研究開発では、PM中の各成分の質量をみながら進められる。
    そのため各成分の分離測定結果は重要な要素であり、そのデータは企業ノウハウとして蓄積される。

    • SOF(Soluble Organic Fraction:有機溶媒可溶成分)燃料や潤滑油の不完全燃焼により発生する。特にジクロロメタンなどの有機溶剤に溶ける成分のことをいう。
    • soot(スート:すす)
      炭素を主成分とするエンジン排出物質。
    • 酸素の非常に少ない高温下で、燃料が蒸し焼きにされて発生すると考えられている。
    • サルフェート(sulfate)
      燃料中の硫黄が化学変化して硫酸や硫酸塩になることで生成される。