DNWの最先端自動車試験にHORIBAの風洞試験ノウハウが活きる

DNW(ドイツ・オランダ共同運営の風洞試験機関)のマネージングディレクターであるアンドレアス・ベルグマン(Andreas Bergmann)氏に、風洞試験の重要性とDNWの最先端自動車試験技術についてお話いただきました。DNWがこの革新的な自動車試験技術を実現するまでに直面した課題、HORIBAとの協力により導いたソリューションついてお伺いしました。

 

DNWについて教えてください

DNWは、オランダ・マルクネッセに本社を構える非営利団体であり、航空宇宙および自動車産業向けに高品質で革新的な風洞試験を提供する、ヨーロッパ屈指の専門機関です。亜音速、遷音速、超音速施設を含む7つの風洞試験設備を保有し、実験的な空力シミュレーションもオプションとして提供しています。これらの風洞試験設備は、オランダとドイツの4拠点(マルクネッセ、アムステルダム、ブラウンシュヴァイク、ゲッティンゲン)に配置されています。

 

大型車両用試験設備のアイデアはどのようにして思いついたのですか?

排出ガスや燃費試験の方法としてWLTPが導入されたことにより、SUV、バン、小型商用車(LCV)などの車両の走行抵抗(空気抵抗や転がり抵抗など)を高精度で測定する必要性が高まっています。空気抵抗を求めるためには、コンピューターシミュレーションだけでは十分ではありません。シミュレーションでは、ボディパネルの隙間やシーリング、タイヤなどの動作環境を正確に再現することが難しく、さらに車両の製造公差をシミュレーションモデルに反映させることもできません。そのため空気抵抗係数※2を測定するには風洞試験が不可欠です。
しかし、既存の風洞試験設備は主に乗用車やSUVを対象に設計されているため、バンやLCVなどの大型車両を計測するには十分なスペースがありません。さらに、多くの自動車メーカーは、これらの大型車両を収容して計測できる風洞試験設備を保有していないのが実情です。

 

HORIBAをパートナーに選ばれた理由は?

風洞天秤やロードロード※3シミュレーションシステム(シャシダイナモメータ)は、非常に専門性の高い分野であり、高い知識と技術を持つサプライヤーは限られています。HORIBAとは信頼できるパートナーとして長年にわたり協力してきた中で、この分野における豊富な経験と優れた技術を有していることを認識していました。また、HORIBAが世界中で納入してきた自動車試験システムの実績に基づき、今回のプロジェクトに最適なカスタムソリューションを提供できると確信していました。

このプロジェクトでの課題や苦労されたことを教えてください。

このプロジェクトは非常に複雑であり、初めからすべての問題を完全に予測することはできませんでした。しかし、HORIBAは経験と知識が豊富な信頼できるパートナーであり、発生した課題に対して迅速かつ適切な解決策を提供してくれました。

DNWのLLF(Large Low speed Facility)※4は、ヨーロッパ最大規模の風洞試験設備であり、フルスケールのトラックをテストできる特別な施設です。この施設には、いくつかの重要な課題あり、その一つがシステムの巨大さです。トラックをテストするには大規模な設備が必要ですが、精度やテスト条件に対する柔軟性を犠牲にすることは許されません。システム全体の規模は、長さ約19.5m、幅約14m、高さ約8mで、総重量は400トンに達します。また、DNWのLLFでは自動車試験と航空試験の設備構成を簡単に切り替えられることが求められていました。このため、自動車試験エリアはエアクッションの上に設置され、風洞内の試験エリアから駐車場まで移動できる仕組みが採用されています。

 

認証プロセスでは、車両の総走行抵抗を計算するために、空気抵抗だけでなく転がり抵抗や駆動系のフリクションも測定する必要があります。この点について、どのようにアプローチしましたか?

今回のプロジェクトでは、空力試験に加えて、認証に必要なすべての測定を同じテスト環境と条件で行えることをめざしました。認証プロセスに必要な測定項目をパッケージ化して提供することが可能となり、コーストダウンテスト※5や他の施設への移動が不要となりました。さらに、転がり抵抗と車両のフリクション※6を正確に再現できるHORIBAの自動化システムを導入し、包括的な自動車試験システムの提供を実現しました。このソリューションを実現した当施設は、昨年TÜV※7認証を取得し、品質と信頼性を保証しています。

このプロジェクトの成果を教えてください。

2024年12月に始動した自動車試験エリアは、今年に入りすでに多くのお客様にご利用いただいています。お客様から高い評価をいただいていることを非常に嬉しく思っています。


ーありがとうございました。

(インタビュー実施日:2025年4月)
※掲載内容および文中記載の組織、所属、役職などの名称はすべてインタビュー実施時点のものになります。

Profile:

Dr. Ing. Andreas Bergmann, Director of DNW (German-Dutch Wind Tunnels), is an accomplished aerospace engineer with a robust career in aerodynamics, wind tunnel testing, and facility management, making significant contributions to both commercial and defense sectors.

 

Education: Graduated in Aerospace Engineering (Dipl.-Ing) from Technical University, Braunschweig, 1988

Career Path:
1988: Began as a scientific assistant at the Institute of Fluid Mechanics, Technical University Braunschweig
1996: Obtained doctorate in Mechanical Engineering
          Post-Doctorate: Project manager for Wind Tunnel Testing at the Institute for Aerodynamics and Flow Physics, DLR
1998: Joined DNW as Head of Low-Speed Facility DNW-NWB
2012-2015: Consultant for large facility design and engineering in the car industry for DNW
2015: Became Business-Unit Manager for all DNW Wind Tunnels in Germany
2018-Present: Director of DNW

Expertise: 
Extensive managerial experience
Specialized in system development in Wind Tunnel environments
Conceptualized and realized several advanced Wind Tunnel facilities and systems

注釈:

※1) WLTP:Worldwide harmonized Light duty driving Test Procedure の頭文字で、日本では「乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法」
※2) ドラッグ係数:抗力係数のこと。流体中を移動する物体に働く抗力を定量化するための無次元数。物体の空気力学的特性または流体力学的特性を表す
※3) ロードロード: Road Load(R/L)のこと。 舗装された水平の道路を一定の速度で走った際に受ける抵抗
※4) LLF:大規模低速施設 (LLF) は、低速領域用の産業用風洞
※5) コーストダウンテスト:アメリカの排気ガス試験のシャシーダイナモの負荷を設定するために用いられる惰行試験
※6) フリクション:エンジン内部でピストンやクランクシャフトなどの部品が動く際に、互いに擦れ合うことで生まれる抵抗のこと
※7) TÜV:ドイツの技術検査協会(Technischer Überwachungs-Verein)」の略称で、主に技術や安全性の認証を行う機関。TÜV認証を取得することで、技術力、サービス品質及び安全性の証明につながる

関連サイト:

Wind Tunnel Balance for Precise Aerodynamic Testing - HORIBA