
JAMSTEC 高野淑識先生
HORIBAは、創業以来、科学技術や産業発展に欠かせない基礎である「はかる」技術で社会課題の解決に取り組んできました。
この「はかる」ことのおもしろさや可能性を多くの方に知ってもらいたい――そのような想いから、2025年8月21日に「“はかる”が解き明かすサイエンスセミナー」を開催しました。
今回のセミナーのテーマは宇宙。
私たちが作り出す「はかる」技術は、水道水の水質測定のような私たちの生活に身近なものに関わっているだけではなく、宇宙の謎を解く力を持っています。セミナーでは、HORIBAが「はやぶさ2プロジェクト」でともに研究を行った、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の高野淑識(たかの よしのり)先生をお迎えし、宇宙科学の魅力や「はかる」ことのおもしろさについて、ご講演いただきました。
講演は「なぜ宇宙に興味を持ったのですか?」という、高野先生への素朴な問いから始まり、科学者の道を歩むきっかけや、HORIBAとの出会い、小惑星リュウグウからサンプルを持ち帰るまでの様子、分析に至るまでの挑戦や苦労、プロジェクトを通じて得られた科学的な成果のハイライト、大事な仲間とのチームワーク、そして今後の展望まで深く語っていただきました。
JAMSTECは、海、地球、人間圏の総合的な理解をめざしています。その中で高野先生は、見えないものを可視化し、自然界の法則性を読み解くための研究開発を行っています。未知の物質や成分の発見には綿密な準備が必要であり、困難も伴いますが、プロジェクトが成功したときの達成感や高揚感は計り知れない、と高野先生は振り返ります。
また「『ほんまもん』のコアテクノロジーが、世界最高のサンプルと掛け算されることで、私たちがまだ見たことのない知見が得られる」と語られました。HORIBAの「ほんまもん」の精神※と技術力に共感していただいたことが、研究をともに進めるきっかけにつながったと考えています。
地球に帰還したサンプルの回収から分析に至るまでの過程や舞台裏を活き活きと語られ、会場の関心が高まりました。
参加者からは、
「地球を理解するために地球の外へ冒険する高野先生の熱意がかっこいいと感じました」
「高野先生のお話から、先生が心から好奇心を持って研究されていることが伝わり、心を動かされました」
「自分の進路を決めるうえでとても参考になりました」
といった感想が寄せられました。
休憩時間やセミナー終了後には、中学生、高校生、大学生が高野先生のもとへ集まり、進路や研究内容について談義され、会場全体に熱気が漂っていました。
セミナーの後半では、HORIBAの社員から極微量かつ、未知のリュウグウサンプルの分析に挑むエピソードを紹介し、当時の緊張感や興奮が伝わる内容とともに、「はかる」ことのおもしろさを参加者にお伝えしました。
また、会場では実際にプロジェクトで使われた分析装置や、はやぶさの模型が展示され、参加者が熱心に展示物を見学する姿も見受けられました。
宇宙研究という壮大な分野は、未知を解き明かすには複数の世代に渡って知識と技術が引き継がれていく必要があり、2世代プロジェクトともいわれます。だからこそ、未来のサイエンティストやエンジニアの存在が非常に重要だと高野先生は語ります。
「好奇心を持ち、無我夢中になれるものを見つけ、精一杯打ち込んでほしい」という言葉は、次世代への力強いメッセージとなりました。
若い世代に向けたメッセージを伝える高野先生
私たちはこれからも、「はかる」技術の魅力を伝え、若い世代が科学の世界に挑戦するきっかけ作りに貢献していきます。
高野先生との記念撮影
※ 本物(ほんもの)から派生した、京都で使われている言葉。HORIBAでは、ほんまもんは本物を超え、「心をこめてより良いものを追い求めつづけた先に生まれる、唯一無二の価値」と捉えています。
▼ 高野先生スペシャルインタビュー
太陽系の大航海時代、好奇心は無限大
2014年12月、種子島宇宙センターより旅立った「はやぶさ2」。52億キロもの大航海を経て、2020年12月に小惑星リュウグウの砂や石などの試料が入った玉手箱を地球へと送り届けました。その試料分析によって、太陽系物質の起源や有機分子の進化の謎に迫ることが期待されています。スペシャルインタビュー最終回は、リュウグウの試料採取の要である「サンプラーチーム」、さらに「初期分析 有機物分析チーム/揮発性ガス分析チーム」の一員でもある海洋研究開発機構(JAMSTEC)高野 淑識先生に初期分析の取り組みや科学者として研究にかける思いを伺いました。
▼ 高野先生インタビュー動画(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=LBJPxA1vTq0
本動画では、高野先生にリュウグウのサンプルを分析することになった経緯や、HORIBAと共同研究を行うきっかけ、実際のリュウグウサンプル抽出物のpH測定の様子、そして研究結果についてお話いただきました。貴重なお話が詰まったインタビューを、ぜひご覧ください。
▼ 「はやぶさ2プロジェクト」 HORIBA分析技術者インタビュー
小惑星「リュウグウ」試料から塩の成分などを発見-分析技術者らに聞く-
国⽴研究開発法⼈ 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」が採取した小惑星リュウグウの砂などから、ナトリウムや有機硫黄分子群が発見されました。ナトリウムイオンは、塩の主成分であり、人体にとっても不可欠なミネラルの一種です。本研究成果は、地球や海、そして生命を構成する物質の起源や進化の解明に向けた大事な一歩になりました。
HORIBAは、国⽴研究開発法⼈ 海洋研究開発機構(JAMSTEC)をはじめとする研究チームの一員として本研究に参画。2021年末には、JAMSTECの高野 淑識先生とともに、HORIBAの水質計で、リュウグウの試料から熱水に溶けやすい成分を抽出した液体のpH(水素イオン濃度)を測定しました。
今回は、本研究にかかわった分析・計測のエキスパートである、堀場テクノサービス 田中 悟さんと堀場アドバンスドテクノ 吉川 剛明さんに取組みを聞きました。

