*1 株式会社堀場製作所, *2 HORIBA MIRA Ltd.
デジタルツイン(Digital Twin)とは,現実世界の物理的な対象(リアル)である製品やシステム,あるいはプロセスを,デジタル空間上で高精度に再現したデジタルなコピーである。これにより各種実験,性能評価,状態監視,保守・整備といった作業において,対象の物理実体と機能的に同等の役割を果たすデジタルモデル(カウンターパート)として機能する。本技術の導入により,現実の開発対象を模擬した「デジタル製品」あるいは「デジタルシステム」に対して,実時間を凌駕する速度でのシミュレーションおよび解析が可能となることから,開発プロセス全体の効率化ならびに開発期間の短縮などが期待されている。実際,排ガス規制に適合するために,自動車OEMではエンジンベンチやシャシベンチで膨大な作業を行っており,これが開発コストの増大と開発期間の長期化につながっている。HORIBAでは,この課題を解決するために,表題の研究において,バーチャルエンジニアリングツールセットを活用し,複数の最新エンジンシステムを対象とする経験的デジタルツイン(Empirical Digital Twin, EDT)の構築を実施してきた。本研究で構築したEDTは,自動車のパワートレインおよび車両の設計開発,性能適合,最適化,さらには認証プロセスにおいて,従来の実環境下での試験手法を補完あるいは部分的に代替し得る技術基盤として機能する可能性を有している。本稿ではHORIBAが構築したEDTの有効性と応用可能性について述べる。
