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炭化シリコン(SiC)はシリコン(Si)と比べてバンドギャップが広く、絶縁破壊電界が約8倍と大きいため、電界効果トランジスタ(MOSFET)や絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)などのパワーデバイスの材料として使われており、SiCのトランジスタには薄膜と同じ材料であるSiC基板が多く用いられています。基板とその上の薄膜が同じ材料の場合一般的には光学定数(n&k)が等しく、光学的な手法では膜厚を求めることが困難です。SiやGaAsなどではドーピングの量と種類の違いによるキャリア密度の差が104cm-3以上無いと光学定数の差が見られませんが、SiCの場合、キャリア密度の差が102cm-3以上あれば、薄膜と基板の間にわずかな光学定数差が生じ測定データに小さい干渉が現れます。
分光エリプソメーターUVISEL Plusはこのようなわずかな干渉でも精度よく測定することができ、膜厚や光学定数と表面状態を求めることが可能になります。このSiC基板上のSiC薄膜を非破壊・非接触で評価できれば、パワーデバイスの研究開発や品質管理を行う上で非常に役立ちます。
本アプリケーションノートでは、分光エリプソメーターによるSiCホモエピタキシャル薄膜の膜厚評価について紹介いたします。
分光エリプソメトリーは、入射光と反射光の偏光状態の変化を波長ごとに計測し、得られた測定データをもとに光学モデルを作成、フィッティング計算をすることにより薄膜の膜厚および光学定数(屈折率n、消衰係数k)を非破壊、非接触で求める分析手法です。この手法を行う装置を分光エリプソメーターといいます。
図1 分光エリプソメーターの概要
図2 試料構造と光学モデルにより得られた膜厚
図3 測定データとフィッティングカーブ(全体)
図4 測定データとフィッティングカーブ(低エネルギー側拡大)
図5 SiCの光学定数(n&k)
試料構造と光学モデルにより得られた膜厚を図2に、測定データとフィッティングカーブの全体を図3に示します。低エネルギー側を拡大すると(図4)、ψ&Δの干渉縞の振幅は小さいもののはっきりと確認できます。これは基板と薄膜の光学定数がわずかに異なっているということを意味しています。この干渉の間隔よりSiC薄膜の膜厚が求められます。次にフィッティングにより得られたSiC基板と薄膜の光学定数(n&k)を図5に示します。1eV付近において屈折率(n)が0.010、消衰係数(k)が0.004と小さい差があることがわかりました。この程度の差があれば測定データに干渉が現れ、SiCホモエピタキシャル薄膜の膜厚を求めることが可能になります。
分光エリプソメーターUVISEL Plusは、わずかな光学定数差によってψ&Δスペクトルに現れる小さな干渉を精度よく測定することにより、SiCホモエピタキシャル薄膜の膜厚、屈折率、消衰係数を非破壊・非接触で評価することが可能です。内容に関するご質問はHORIBAはかるLABまでお問合せください。