ミクロンスケールの深さ方向分解能
皮膚表面から角層にかけての成分分布や構造情報を、ミクロンスケールの分解能で取得できます。水分量や脂質量の深さ方向プロファイルを可視化することで、表面観察や単一指標による評価では捉えにくい変化や内部構造の違いを把握できます。皮膚の構成成分を定性・定量評価
水分や脂質などの情報をラマンスペクトルから読み取ることで、皮膚中成分や皮膚構造を定性的および定量的に評価できます。非破壊での経時変化・浸透挙動の追跡
非破壊・非侵襲的な分析手法により、皮膚の同一部位を繰り返し測定できるため、成分の浸透挙動や時間変化をin vivoで評価できます。そのため、皮膚外用剤の処方比較や有効性検証における継続的なデータ取得に適しています。短時間で高品質なデータ取得が可能
単一スペクトルは数秒、深さ方向プロファイルは数分で取得できるため、迅速なデータ取得が可能です。リアルタイム性の高い測定により、評価業務の効率化とスループット向上に貢献します。多部位測定と被験者負担低減を両立する操作性と専用ソフトウェア
オプションの多関節アームを用いることで、被験者の負担が少ない姿勢でさまざまな部位へのアクセスが可能です。専用ソフトウェアは直感的なユーザーインターフェースとガイド機能を備え、ラマン分光装置の使用経験がないユーザーでも、測定からデータ解析までを効率的に行えます。

ラマンスペクトルから得られる皮膚の情報
光を物質に照射すると、光が物質と相互作用することで入射光と異なる波長にシフトしたラマン散乱光と呼ばれる光が発生します。その波長差は物質が持つ分子振動のエネルギー分に相当するため、ラマンスペクトルから物質の化学組成や構成分子の構造についての情報を得ることができます。 2500~4000 cm-1の高波数領域にはC-H結合やO-H結合の伸縮を示すピークが存在し、ここから脂質や水分の情報を得ることができます。指紋領域と呼ばれる400~1800 cm-1には様々な化学結合に対応したピークが存在し、蛋白質など皮膚を構成する物質や、皮膚に塗布した外用剤中成分などの情報を得ることができます。

アプリケーション
皮膚の水分量・脂質量の深さ方向測定
水分量の測定には経表皮水分蒸散量(TEWL)測定やインピーダンス法が用いられています。しかし、これらの手法では、角質層の表層から深層に至る局所的な水分量分布を直接評価するのは困難です。これに対し、In vivoラマン測定装置 RZ-660を用いることで、角質層内部における局所的な水分量を非侵襲的に評価することができます。本検討では、ラマンスペクトルデータを用いて、皮膚の深さ方向における水分量分布を算出・推定しました。水分量は、vOH(O-H伸縮振動:3350~3550 cm-1)とvCH(C-H伸縮振動:2910~2965 cm-1)のピーク強度比に相関することが知られており、これらの比を指標として深さ方向の水分量分布を評価しました。その結果、水分量は皮膚深部に向かうにつれて増加する傾向が確認されました。また、同様の手法で算出した脂質量については、水分量とは対照的に、皮膚深部に向かうにつれて減少する傾向が認められました。

グリセリンの経皮浸透観察
グリセリンの経皮浸透挙動を経時的に評価するため、グリセリン標品のラマンスペクトルと、塗布2分後および40分後の皮膚のスペクトルを取得しました。塗布2分後には皮膚内部においてグリセリン由来のラマンバンドは確認されませんでした。一方、塗布40分後にはグリセリン由来のラマンバンドが現れる領域の信号強度の増加が認められ、グリセリンが皮膚内部へ浸透していることが示唆されました。このように、成分の浸透挙動を非侵襲的かつ経時的に評価できるため、皮膚外用剤の処方設計、ならびに有効成分の浸透性や有効性の客観的な評価に有用です。

皮膚表面水分量の深さ分布からの角層厚推定
皮膚は表層から、表皮・真皮・皮下組織で構成されています。表皮は複数の細胞層からなる多層構造を有しており、その最外層からなる角層は皮膚のバリア機能を担っています。皮膚の各層では水分量が異なるため、深さ方向における水分量分布を解析することで角層厚を推定できます。水分量は皮膚表面から約10 μm付近までは深さとともに直線的に増加し、それ以深では増加が緩やかになり、ほぼ一定の値を示します。この変曲点の深さは、角層とその下層との境界に対応すると考えられており、角層厚の推定指標として利用できます。
