プラズマを、光で読み解く。フュージョンエネルギー研究の可能性|HONMAMON共創研究で広がる

フュージョンエネルギー(核融合発電)の実現に向けて欠かせないのが、プラズマを「つくる」「はかる」「制御する」技術です。
このうち、「はかる」ことにHONMAMON共創研究で挑んでいるのが、京都大学エネルギー理工学研究所の門 信一郎(かど しんいちろう)准教授です。核融合をめざしたプラズマの状態を、光から読み解く研究に取り組んでいます。

研究者本人の言葉で語る動画はこちら。 ▶ HONMAMON Storiesを視聴する

1/2000秒の現象を捉え、プラズマのふるまいを明らかにする

「燃料となる水素の氷のかけら(固体水素ペレット)をプラズマ中に入れたときに起こる一瞬の変化、その光っている時間は、およそ1/2000秒ほどしかありません」と門准教授は話します。この極めて短い時間のプラズマの光を連続的に画像データとして取り込み、さらにそれぞれの点で分光(物質固有の色・波長を計測)することで、密度の変化やふるまいをより正確に把握しようとしています。

プラズマを「見る」ための、チャレンジングな計測

実験装置でプラズマを発光させる様子

この研究の難しさは、プラズマを二次元の像として捉えながら、それを分光器の入射部に伝送して扱うために一次元へ並べ直す必要がある点にあります。 

「通常の分光では、一次元のスリットを通して光を測定しますが、プラズマは面として見たい対象です。二次元の情報をいかに限られた長さの一次元に並べ替え、しかも高速の分光分析につなげるかが大きな挑戦でした。」と門准教授は語ります。

その課題を解決するために、特殊な光ファイバーの開発に取り組み、プラズマの像をより高い解像度で捉えられるようになりました。これにより、データの質も大きく向上したといいます。

共創が研究を前に進めた

この研究を加速させた大きな要因の一つが、HONMAMON共創研究ならではの伴走支援です。 

門准教授は、「HORIBAの研究伴走者と連携することで、自分たちだけでは見つけにくかった光ファイバーの製造先とつながることができた。」と振り返ります。

研究者自身が仕様を考え、発注し、業者とやり取りを重ねても、実現できるメーカーがなかなか見つからないことは少なくありません。そうした中で、HORIBAが持つネットワークやものづくりの知見が橋渡しとなり、メーカーとの打ち合わせを重ねながら、新しい計測システムを形にすることができました。

門准教授は、「打ち合わせをしながらお互いに新しいものをつくる姿勢がとれたことが助けになった」と話します。 

単なる研究支援にとどまらず、研究を前に進める力そのものを生み出す関係が、この共創研究にはあります。

今後の展望

門准教授が見据えるのは、プラズマをより高温・高密度で安定的に閉じ込めるための物理研究への発展です。 

そのためには、燃料となる水素同位体だけでなく、プラズマ中に混入している炭素や金属元素などの不純物をどのように制御するかが重要になります。プラズマの中に不純物が多く入ると、電子のエネルギーが光として逃げてしまい、温度維持が難しくなるためです。

今後は、新しい不純物入射システムの実験室内での検証を進めたうえで、ヘリオトロン実験装置(写真右)に組み込み、不純物の発光やプラズマの特性をさらに詳しく調べていく計画です。 
光の色や減衰の時間を観測することで、どのような元素がどの状態で存在しているのか、そしてプラズマをどのくらい閉じ込められるのかを明らかにしていきます。

 

 

計測の未来を、次の価値へ

門准教授にとって、今回の研究は単に既存の計測を高度化するだけではありません。 
プラズマという極めて難しい対象に対して、新しい見方と新しい計測系をつくり出すことそのものが、将来のフュージョンエネルギー研究を支える基盤になると考えています。
そして、HORIBAの共同研究者にとっても、この共創研究は大きな学びの機会になっています。  計測器メーカーとして機器を作る立場から、実際にその機器がどのような対象に使われ、どのような価値を生み出すのかを、研究現場で深く理解できるからです。

門准教授の挑戦は、プラズマを「はかる」技術を一段引き上げるだけでなく、フュージョンエネルギーの早期実現に向けた重要な一歩にもつながっています。 共創研究によって生まれた新しい計測技術が、未来のエネルギー研究をどう変えていくのか。今後の展開が期待されます。

 

(インタビュー実施日:2026 年6月)
※掲載内容および文中記載の組織、所属、役職などの名称はすべてインタビュー実施時点のものになります。

Profile:

門  信一郎(かど しんいちろう)
京都大学 エネルギー理工学研究所 エネルギー生成研究部門 准教授

[経歴]
1997年4月~1999年12月  文部科学省核融合科学研究所 助手
2000年1月~2008年3月    東京大学高温プラズマ研究センター 助教授/准教授
2008年4月~2013年1月    東京大学大学院工学系研究科原子力国際専攻 准教授
2013年2月~現在      京都大学 エネルギー理工学研究所 准教授

HONMAMON共創研究とは

HONMAMON共創研究は、京都大学学内の革新的・独創的な基礎研究を公募し、将来の分析・計測・制御技術につなげることをめざしています。採択テーマにはHORIBAグループが支援を行います。期間は最長5年間で、成果の可能性に応じて1年ごとの継続審議が行われます。また、有望なテーマはテーマ設定型大型共同研究へ発展する設計です。

推進は京都大学オープンイノベーション機構内の包括連携推進室(HONMAMON連携室)が担い、京大側のクリエイティブマネージャーとHORIBA側のコーディネーターが協働して、共創研究の学内公募や採択、テーマ設定の企画、共創・共同研究の運営支援を行います。

この取り組みは、京都大学と堀場製作所が2023年10月1日に締結した包括連携協定に基づくもので、長期視点で未来社会に資する研究と若手研究者の人材育成をめざしています。

動画:HONMAMON Stories

「HONMAMON(ほんまもん)共創研究」に採択された研究者が登場する動画「HONMAMON Stories」。研究の舞台裏や共創の意義、未来につながる挑戦を、研究者自身の言葉でお届けします。

#2 ― プラズマを、光で読み解く。フュージョンエネルギー研究の可能性

#1 ― “見える”を、もっと先へ。材料評価の可能性

HORIBA Talk:HONMAMON共創研究で広がる

#1― “見える”を、もっと先へ。材料評価の可能性