深紫外で迫る、超ワイドバンドギャップ半導体材料の可能性 | HONMAMON共創研究で広がる

次世代の光・電子・量子材料として注目される超ワイドバンドギャップ半導体。その中でも、京都大学大学院工学研究科・電気電子デジタル理工学専攻の石井 良太 (いしい りょうた)助教が挑むのが、深紫外分光法の開拓と、それによる超ワイドバンドギャップ半導体窒化アルミニウムの光・電子物性の解明です。

研究者本人の言葉で語る動画はこちら。 ▶ HONMAMON Storiesを視聴する

深紫外分光で、超ワイドバンドギャップ半導体窒化アルミニウムの物性に迫る

「窒化アルミニウムは、将来の光・電子・量子材料の一つとして注目されていますが、その物性が十分に分かっていないことが、応用可能性を広げるうえでの課題になっています。物性を理解するには計測が欠かせませんが、窒化アルミニウムの物性計測技術である深紫外分光技術がまだ発展途上ということが問題として立ちはだかっています」と石井助教は語ります。

そこで石井助教は、深紫外分光法そのものを開拓しながら、それによって窒化アルミニウムの物性解明にも取り組んでいます 。

 

「測れるようにする」ことが新しい発見につながる

石井助教がこの研究に取り組む背景には、基礎と応用の両方を見据えた問題意識があります。 

「超ワイドバンドギャップ半導体光・電子物性には長年の未解決問題がたくさんあります。大学人として、この未知の学理を明らかにする基礎研究を遂行することはとても大事と考えています。一方、応用の観点からは、窒化アルミニウムの物性が明らかになれば、これまでにない深紫外光源の開発などにつながり、将来の深紫外光分析・計測技術の発展に結びつくと考えています。そして、このような計測技術の深化は、きっとさらなる未知の物理現象の発見・解明を促すと信じており、この基礎から応用に渡る循環を生み出したいと考えています。」

 窒化アルミニウムの物性を明らかにするために、世の中にない深紫外分光システムを実際に構築しようとすると、多くの改善点や課題に気づいたといいます。石井助教は、その気づきこそが重要だと考えており、実際に自ら苦労しながら計測装置を開発することで、将来の分析・計測技術の革新につながるとしています。

HONMAMON共創研究で、長期視点の挑戦が前進した

石井助教が手がける研究テーマは2024年度に本共創研究に採択され、現在は3年目を迎えています。1年目は完全に狙い通りの結果は得られなかったものの、HONMAMON共創研究が掲げる長期的な視野に立った価値創出の考え方のもとで継続採択され、2年目の終わりごろにようやく狙い通りの成果が見え始めたといいます。

「短期的な成果にとらわれずに研究を支えるHONMAMON共創研究の姿勢が、今回の結果につながった」と石井助教は振り返ります。

また、新しい検出器の導入や分光システム最適化の過程でもHORIBAの共同研究者が大きく尽力し、研究の立ち上げを後押ししました。

石井助教が実際に構築した深紫外磁場下分光測定系では、堀場製作所の分光器や検出器が活用されています。研究装置は、つくって終わりではありません。実際に動かし、測定し、最適化しながら、研究の狙いに近づけていく必要があります。その意味で、技術を理解し、現場に寄り添いながら進められる共創の力は、この研究にとって大きな推進力になっています。

 

  

今後の展望

石井助教が見据えるのは、深紫外分光技術の深化と、それにより窒化アルミニウムやダイヤモンドといった超ワイドバンドギャップ半導体の物性を一つずつ明らかにし、基礎と応用の両面から社会に貢献していくことです。

これらの材料は、直近ではなくとも、そう遠くない未来の社会を支える重要な材料になると考えています。しかしながら、現時点ではその材料物性に未解明の部分が多く、深紫外分光技術もなお発展途上です。

石井助教は、工学部に身を置く研究者として、ものづくりへの意識と同時に、物事の本質を自分の目でしっかり見ることも大切だと考えています。

「今後も、まだ分からないことの多い超ワイドバンドギャップ半導体材料の物性を一つずつ明らかにし、新たな応用可能性を探ることで、未来の分析・計測技術へとつなげていきたいと考えています」と石井助教は話します。

計測技術の先に、材料の未来がある

石井助教の挑戦は、単に新しい測定装置をつくることにとどまりません。 深紫外分光という計測技術を磨くことで、材料の本質に迫り、さらには深紫外光源や分析技術そのものの可能性を広げていくことにあります。 

「測れるようにする」ことが、「分かるようにする」ことにつながり、やがて「使えるようにする」ことへ発展していく。そこに、この研究の大きな魅力があります。

 

(インタビュー実施日:2026 年6月)
※掲載内容および文中記載の組織、所属、役職などの名称はすべてインタビュー実施時点のものになります。

Profile:

石井 良太(いしい りょうた)
京都大学大学院工学研究科・電気電子デジタル理工学専攻 助教

[経歴]
2026年4月~現在 京都大学大学院工学研究科電気電子デジタル理工学専攻 助教
2014年4月~2026年3月 京都大学大学院工学研究科電子工学専攻 助教
2019年5月~2019年6月 モンペリエ大学シャルルクーロン研究所 客員研究員
2013年4月~2014年3月 京都大学大学院工学研究科電子工学専攻 特別研究員
2010年4月~2013年3月 京都大学大学院工学研究科博士課程修了
2008年4月~2010年3月 京都大学大学院工学研究科修士課程修了

HONMAMON共創研究とは

HONMAMON共創研究は、京都大学学内の革新的・独創的な基礎研究を公募し、将来の分析・計測・制御技術につなげることをめざしています。採択テーマにはHORIBAグループが支援を行います。期間は最長5年間で、成果の可能性に応じて1年ごとの継続審議が行われます。また、有望なテーマはテーマ設定型大型共同研究へ発展する設計です。

推進は京都大学オープンイノベーション機構内の包括連携推進室(HONMAMON連携室)が担い、京大側のクリエイティブマネージャーとHORIBA側のコーディネーターが協働して、共創研究の学内公募や採択、テーマ設定の企画、共創・共同研究の運営支援を行います。

この取り組みは、京都大学と堀場製作所が2023年10月1日に締結した包括連携協定に基づくもので、長期視点で未来社会に資する研究と若手研究者の人材育成をめざしています。

動画:HONMAMON Stories

「HONMAMON(ほんまもん)共創研究」に採択された研究者が登場する動画「HONMAMON Stories」。研究の舞台裏や共創の意義、未来につながる挑戦を、研究者自身の言葉でお届けします。

#3 ― 深紫外で迫る、超ワイドバンドギャップ半導体材料の可能性

 

#2 ― プラズマを、光で読み解く。フュージョンエネルギー研究の可能性

#1 ― “見える”を、もっと先へ。材料評価の可能性

HORIBA Talk:HONMAMON共創研究で広がる

#1― “見える”を、もっと先へ。材料評価の可能性
#2―プラズマを、光で読み解く。フュージョンエネルギー研究の可能性