原子・分子スケールで材料表面を「見る」走査トンネル顕微鏡。その可能性をさらに広げ、より多様な材料に適用できる新しい観察手法の確立に挑むのが、京都大学大学院工学研究科・材料工学専攻の黒川 修(くろかわ しゅう)准教授です。京都大学とHORIBAが連携して推進するHONMAMON共創研究に採択されたことで、挑戦的な研究は大きく加速しました。研究者と企業の伴走により、学術的な挑戦が社会につながる手応えも見え始めています。
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走査トンネル顕微鏡は、表面をなぞることで極めて高い空間分解能を得られる手法です。条件が整えば、分子を一つひとつ見分けられるほどの観察力を持っています。
一方で、観察できるのは主に表面であり、材料を構成する元素や内部の情報を十分に把握しにくいという課題もあります。
黒川准教授がHONMAMON共創研究で挑むのは、こうした限界を乗り越え、走査トンネル顕微鏡をより強力な材料評価手法へと発展させることです。
「表面を高い空間分解能で見られる」という強みを活かしながら、これまで見えにくかった情報にも迫ることで、材料の構造や生成過程の理解を一段深めたいと考えています。
HONMAMON共創研究に採択されたことで、その挑戦は大きく前進しました。
黒川准教授は、「今回の研究は初めての試みで、比較的挑戦的な内容も多かったのですが、支援をいただいたことで思い切って挑戦できました。研究が加速したと感じています」と振り返ります。
さらに、HORIBAの共同研究者との交流を通して、自ら開発している手法がどのような現場で役立ちうるのか、その出口をより具体的にイメージできるようになったといいます。装置を実際に見ながら意見交換を行うことで、企業側のニーズや応用の方向性も見えてきました。
「うまくいかなかった時に、別の方法の提案をもらえるのが大きかったです」と黒川准教授。
研究者の視点と企業の視点が交差することで、研究の着地点が単なる学術的な達成にとどまらず、将来的な実装や活用へとつながっていきます。そこに、HONMAMON共創研究ならではの価値があります。
採択から1年、研究は一定の成果を得ており、今後は対象とする材料をさらに広げ、より多くの研究者や技術者が使える手法へと育てていくことをめざしています。
試料作製から観察までに時間と手間がかかる現状を改善し、再現性や確度を高めることで、「見たい試料をより確実に観察できる」手法へ近づけたいと考えています。
黒川准教授が見据えるのは、原子・分子スケールで観察できる手法を、より広い材料に対して、より安定して実現できるようにすることです。その挑戦は、材料工学にとって重要な「見えないものを見る」力を、次の段階へ押し上げようとしています。
(インタビュー実施日:2026 年5月)
※掲載内容および文中記載の組織、所属、役職などの名称はすべてインタビュー実施時点のものになります。
※走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscope: STM)
非常に鋭く尖った探針を導電性の物質の表面やその表面上に吸着した分子に近づけ、探針と試料の間で流れるトンネル電流から表面の原子レベルの電子状態、構造など観測する計測装置
黒川 修 (くろかわ しゅう)
京都大学 工学研究科 材料工学専攻先端材料物性学講座 准教授
[経歴]
1998年~2002年 京都大学工学研究科 助手
2004年~2008年 京都大学国際融合創造センター 助教授
2008年~現在 京都大学工学研究科材料工学専攻 准教授
HONMAMON共創研究は、京都大学学内の革新的・独創的な基礎研究を公募し、将来の分析・計測・制御技術につなげることをめざしています。採択テーマにはHORIBAグループが支援を行います。期間は最長5年間で、成果の可能性に応じて1年ごとの継続審議が行われます。また、有望なテーマはテーマ設定型大型共同研究へ発展する設計です。
推進は京都大学オープンイノベーション機構内の包括連携推進室(HONMAMON連携室)が担い、京大側のクリエイティブマネージャーとHORIBA側のコーディネーターが協働して、共創研究の学内公募や採択、テーマ設定の企画、共創・共同研究の運営支援を行います。
この取り組みは、京都大学と堀場製作所が2023年10月1日に締結した包括連携協定に基づくもので、長期視点で未来社会に資する研究と若手研究者の人材育成をめざしています。
「HONMAMON(ほんまもん)共創研究」に採択された研究者が登場する動画「HONMAMON Stories」。研究の舞台裏や共創の意義、未来につながる挑戦を、研究者自身の言葉でお届けします。





