水質計で「はかる」体験から、地球の未来を考える ー 高校生の探究支援プロジェクト <四日市高等学校編>

堀場アドバンスドテクノは、「はかる」を通じて身近な環境問題に関心を持ってもらいたいというおもいから、高校生の探究活動を支援する「高校生×HORIBA水質計みらい探究プロジェクト」を実施しました。本プロジェクトでは、次世代を担う高校生にHORIBAの水質計を貸し出し、水質測定を活用した探究活動をサポートしました。2025年から2026年にかけて、応募いただいた多くのテーマの中から選出した京都府立亀岡高等学校と三重県立四日市高等学校の2校が、それぞれ地域や身近な自然をテーマに研究に取り組みました。また、堀場アドバンスドテクノの社員も、水質測定データの読み解き方や考察の進め方などについて助言を行いながら、活動を支えてきました。今回は、三重県立四日市高等学校(以下、四日市高校)の探究活動について紹介します。

「三重県の真珠母貝」 アコヤガイとクロチョウガイ

伊勢湾に近い四日市高校では、三重県の伝統産業である真珠養殖に着目し、アコヤガイとクロチョウガイに関する探究活動を行いました。研究のきっかけとなったのは、海洋実習で本来三重県沿岸ではあまり見られないクロチョウガイが数多く確認されたことでした。なぜクロチョウガイが三重県の海に生息しているのかという疑問から、クロチョウガイの水質浄化作用や三重県の真珠産業・生態系への影響について研究に取り組みました。

黒潮大蛇行との関係に着目

クロチョウガイの北上には、近年の温暖化や「黒潮大蛇行」が関係していると言われています。温暖な海流が三重県沿岸に流れ込むことで海水温が上昇し、南方系のクロチョウガイが冬を越しやすい環境になったのではないかと考えられます。研究は、クロチョウガイの存在が三重の海にとって脅威なのか、それとも新たな可能性をもたらす存在なのかという視点から調査を進めました。アコヤガイとの生息域の競合や病気のリスクが懸念される一方で、新たな真珠生産や、海水温上昇への適応策としての役割も期待されています。生徒たちは実際に三重県南部の海岸で実験個体を採取し、校内でアコヤガイとクロチョウガイの飼育実験を行いました。

まず、海水に珪藻を加えて濁りを再現し、両種のろ過能力を目視で比較しました。その結果、クロチョウガイには高いろ過能力があり、水質浄化に寄与する可能性が確認されました。さらに、HORIBAの水質計を用いて、電気伝導率(EC)・カルシウムイオン濃度・硝酸イオン濃度・pH(ピーエッチ)・溶存酸素(DO)の5項目を測定しました。比較対象として、アコヤガイ+珪藻、クロチョウガイ+珪藻、珪藻のみ、アコヤガイ貝殻のみ、対照区(海水のみ)の条件を設定し、1週間にわたって観察を行いました。その結果、アコヤガイを添加した条件では、活発な代謝による溶存酸素の低下とpHの経時的な低下が確認されたほか、貝の存在が水中カルシウム濃度の安定化に関係している可能性が示されました。こうした結果から、生徒たちは貝類が成長するだけでなく、養殖環境の水質にも影響を及ぼす可能性を考察しました。また、環境変化に敏感とされるアコヤガイに対し、クロチョウガイは水質を浄化しながら環境へ適応する特性を持つことも見えてきました。研究を通じて、生徒たちはクロチョウガイを単なる環境変化の象徴として捉えるのではなく、将来の真珠産業を支える新たな資源として考える視点を得ることができました。

  

左:クロチョウガイを飼育している水槽の海水を測定する様子 右:HORIBA社員とのディスカッション

継続して測ることで深まった探究の視点

左から 山北 正也校長、伊藤 泰二先生

2026年3月には、プロジェクトの集大成として堀場アドバンスドテクノ本社で成果報告会・交流会を開催しました。生徒たちには研究成果の発表や、他校の生徒やHORIBA社員との交流を通じて、新たな気づきや学びを得る機会となりました。今回のプロジェクトについて先生方にお話を伺いました。

 

ー 授業や探究活動では、普段からどのようなことを意識されていますか。また、活動はどのように進められていたのでしょうか。

まずは生徒自身に疑問を持たせることを大事にしています。単に知識を教えるのではなく、「なぜそうなるのか」「研究者ならどう考えるか」といった視点を持たせることで、生徒が自分で考え続けられるようにしたいと思っています。探究活動では、できるだけ生徒主体で進めてもらいました。こちらが手取り足取り導くというより、生徒の可能性を狭めないように見守りながら、必要な場面だけサポートする形です。堀場アドバンスドテクノとのやり取りも生徒自身が学べるように任せていました。締め切りだけはしっかり伝えて、そこまでに形にするよう促していました。

HORIBA社員とのでディスカッションで、研究内容について相談する様子

ー 生徒たちが特に興味を示したのは、どんな場面でしたか。

調べたい項目の数値が実際に出たときです。見た目では分かっていた変化が、電気伝導率やカルシウムイオン濃度などのデータとして見えたことで、生徒たちはとても喜んでいました。数値で確認できると、研究への納得感がぐっと高まるのだと思います。

ー 今回の研究では、どのあたりが特に印象的でしたか。

クロチョウガイが海水を浄化する力を持っていることが、実験を通して見えてきた点です。最初は「なぜ三重の海に存在するのか」という疑問から始まりましたが、調べていくうちに、単なる外来種としてではなく、海の環境の変化と向き合う新しい可能性が見えてきました。

ー 研究を進めるなかで、生徒たちにどんな変化がありましたか。

終盤になるにつれて、考察の内容が深くなっていきました。最初は知識も少なく、何をどう考えればよいか分からない様子でしたが、少しずつデータと現象を結びつけて考えられるようになっていきました。全体を俯瞰して見る力が身についたのは、大きな成長だったと思います。

ー 交流会や成果報告会はいかがでしたか。

とても良い機会でした。発表だけでなく、工場見学やSDGsをテーマにした対話の場もあり、生徒たちにとって刺激になったと思います。特に、企業の方が一人ひとりに優しく接してくださったので、生徒たちも安心して質問していました。外部の方から評価していただけたことは、自信にもつながったはずです。

 

ー今後、HORIBAの水質計はどのように活用したいですか。

今年の探究活動でも、化学や生物のテーマで活用していきたいと考えています。たとえば水に関するテーマや、森と海のつながりを調べるような探究にも応用できそうです。今後も、ほかの生徒たちが新しいテーマに挑戦する際に、ぜひ活用させていただきたいと考えています

ー 今後の探究活動の展望を教えてください。

国際学会での発表や英語論文への挑戦にもつなげたいです。高校生のうちから、より広い舞台で発信できる経験があると、とても大きな力になると思います。探究活動を、進路や将来につながる学びとして育てていきたいですね。

※本プロジェクトの取り組みに対し、四日市高等学校様より感謝状を頂戴しました。
今後も「はかる」を通じて、次世代を担う学生の探究活動や環境学習を支援してまいります。

感謝状贈呈式の様子は、四日市高等学校様のホームページでもご紹介いただいております。

三重県立四日市高等学校|最新のお知らせ(外部リンク)

 

導入授業の様子はこちら

成果報告会・交流会イベント当日の様子についてはこちら

京都府立亀岡高等学校の研究テーマはこちら

関連情報

高校生×HORIBA水質計 みらい探究プロジェクト 2025 (本プロジェクト特設サイト)

堀場アドバンスドテクノのサステナビリティ

新たな社会貢献活動の創出 ーサステナビリティ推進プロジェクト 「Project Colors」ー

本活動に関連するSDGs