通常、粒子は集団で存在し、その大きさには分布があります。粒子の大きさを横軸に取り、縦軸を頻度としてヒストグラムを作ったものが「粒度分布」のグラフです。このとき、広い範囲を一度に表示するために、横軸には一般的に対数軸が用いられます。
粒度分布計を用いると簡単に粒度分布を測定できますが、この粒度分布を常にヒストグラムを用いて表現するのは不便なため、さらになるべく少ない値で表現する必要があります。中心となる粒子径だけを知るのであれば1 つの値で表現できますが、分布幅やより詳細な形状を表現するには、複数の値を用いる必要があります。粒度分布のヒストグラムからその粒子の特徴を示すようなある粒子径の値を、「代表径」と呼びます。
平均径
「平均径」とは、平均の操作で得られた代表径で、ヒストグラムの横軸である粒子径と、縦軸である頻度をそれぞれ掛け合わせて合計したものです。ここでの粒子径は分画の中心の値であり、粒度分布の横軸が対数で描かれているときには、分画の(上限の粒子径)×(下限の粒子径)の平方根である、幾何平均値が用いられます。また粒子径基準が変わると平均径も変わります。なお、粒子径基準についてはのちほど解説します。
メディアン径(中央値)
中央値とは、粒子全部のうち半分がこの値より上に、残りの半分がこの値より下に位置する値と定義されます。粒度分布の場合、この中央値の粒子径を「メディアン径」と呼び、積算の頻度が 50% という意味で、D50 とも呼ばれます。
モード径(最頻値)
最頻値とは、ヒストグラムのピークの値のことです。粒度分布の場合、この最頻値を取る粒子径を「モード径」と呼び、分布の中で最もよく見られる粒子径を表します。
メディアン径(中央値)、平均径、モード径(最頻値)の関係
図2 に示すような対称的な分布では、平均径=メディアン径=モード径となります。
図2 対称的な分布 平均径=メディアン径=モード径
非対称な分布の場合、平均径、メディアン径、モード径は、図3に示す3つの異なる値になります。
図3 非対称性のある分布 平均径、メディアン径、モード径は3つの異なる値になります。
分布幅
粒度分布の測定においては、多くの場合、中心値だけでなくその幅(分布幅)を含めて測定されます。そのため、分布幅をどう表現するかも重要となります。統計学では、分布の幅を記述するためにいくつかの計算方法が用いられますが、これらの計算は粒度分布でも使用されています。最も一般的なものは、「標準偏差(STD)」と「分散」です。標準偏差(STD)は正規分布の場合、図 4 に示すように、全体の 68.27% が ±1STD 以内にあり、95.45% が ±2STD 以内となるような値です。また、標準偏差を平均値で割った「変動係数(CV)」も用いられます。
図4 正規分布
粒度分布でよく用いられる分布幅の表現として、D50 と同じルールで定義される D10 や D90 があります。メディアン径である D50 は、母集団の半分がこの値より下にある直径という意味でした。同様に D90 は母集団の 90%がこの値より下にある直径、D10 は母集団の 10%がこの値よりも下にある直径で定義されます。また同じルールで D1 や D99 など、任意のパーセントに対応する粒子径を表現することができます。
図5 D10、D50、D90
HORIBAは、「Your Partner in Science」をテーマにオンラインセミナーで、各種分析の基礎やノウハウを紹介しています。皆様からのご視聴お申込みを心よりお待ち申し上げております。
粒子計測、蛍光X線分析、元素分析、分光分析、ラマン分光分析、蛍光分光分析、表面分析の基礎やノウハウを紹介したセミナー(アーカイブ動画)の一覧です。