表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance:SPR)とは、分子間の相互作用(結合)をラベルフリーで観察できる原理です。 この原理を用いることにより、分子間相互作用の動的プロセス(結合定数および解離定数)、結合親和性、分析対象の濃度に関する情報を得ることができます。
SPRを理解するには、まず最初に、エバネッセント波の概念を知る必要があります。 ここで、2種類の媒質1と2の界面を考え、媒質1の屈折率をn₁、媒質2の屈折率をn₂(n₁>n₂)とします。 ここに媒質1側から光が入射した場合、入射角が臨界角よりも大きいと、入射光は媒質1と2の界面で全反射し、媒質2の表面に、電磁波であるエバネッセント波が発生します。 エバネッセント波は、その強度が界面までの距離に対して指数関数的に減衰する非伝搬波であり、界面近傍(入射光の波長程度の範囲)にのみ留まるため、屈折率、膜厚、または表面での分子吸着の変化など、媒質の境界面で発生する物理現象をリアルタイムに測定する有効なツールとなります。 ガラスと液体の間に金の薄膜層があると、金の表面プラズモン(=電子の集団振動)が光に強く反応し、表面プラズモン波を発生します。 表面プラズモンは、光が全反射する状況では、エバネセント波と組み合わさり共鳴します。 表面プラズモンの共鳴に至る条件は、入射光の波長、偏光状態、入射角により異なり、金属層の特性および表面の上にある媒質によっても異なります。
図に示すように、バイオチップ下部のプリズム部分に(臨界角以上の範囲で)入射角を変えながら光を照射し、反射光の強度を測定すると強度が最小になるポイントが見られます。この曲線はプラズモン曲線と呼ばれ、強度が最も小さくなる角度は共鳴角度(Resonance Angle)と呼ばれています。 共鳴角度は表面の金属およびそこに固定化された物質(リガンド)に固有のもので、バイオチップ上のリガンドを変える、またはリガンドと他の分子が結合するなどの変化によって屈折率、プラズモン曲線が変化し、それに伴い共鳴角度も変化します。プラズモン曲線や共鳴角度の変化を経時的に検出することによって、金表面で生じる物理化学的変化、例えば、分子間相互作用をリアルタイムでモニタリングすることができます。 SPRを利用するバイオセンサーが信号として用いている物理量は、以下のいずれかです。
HORIBA OpenPlexはΔRを信号として用いています。
HORIBAの表面プラズモン共鳴イメージング装置 は、SPRにイメージング機能を加えたもので、SPRイメージング(SPRi)法と呼ばれる原理に基づいています。 本装置は、ラベルフリーで生体分子間相互作用を検出できるSPRの長所に、マイクロアレイが持つハイスループットな処理能力を一体化し、さらに、個々の相互作用を可視化できるイメージング機能まで付加しています。 バイオチップはプリズム結合型のものを用いており、入射光(平行光)はプリズムを通ってチップ表面全体に照射され、反射した光はCCD検出器で検出されます。 CCDの各ピクセルはチップ上の所定の位置に対応しており、2Dスキャンは不要です。本装置では、数十から数百の相互作用を同時に検出することが可能で、それらは相互作用した部分だけが明るく変化した画像として観察されます。
また、可動部は走査ミラーのみという独自の光学構成によってシンプルな構成と精密なイメージング機能を両立しています。(走査ミラーを動作させて入射角を変え、プラズモン曲線を得る。)測定時には得られたプラズモン曲線から作用角(Working Angle)と呼ばれる角度を設定します。 本装置では、同時多検体測定を実現するため、特定の角度における反射率の時間変化(ΔR)を信号としており、作用角はプラズモン曲線の変化が最大になる角度を選択することによって高感度に相互作用を測定することができます。
【準備】
【測定】
【結果】