エクソソームはさまざまな細胞から分泌される直径100 nm程度の細胞外小胞で、バイオマーカーとしての応用が期待されています。 エクソソームの分離・精製には、超遠心や限外ろ過などの手法が利用されますが、膜フラグメントやタンパク質凝集物などの夾雑物も含まれるため、エクソソームだけを見ることが難しいと考えられています。 超遠心法と PS※2アフィニティ法による精製を比較したところ、超遠心法精製(左図)では夾雑物も含んでいることが推測されますが、PS アフィニティ法による精製(右図)では、100 nm 付近にシャープな 分布が確認でき、高純度に精製されたエクソソームの粒子径と個数濃度の情報が得られ、精製状態の違いを確認できました。 ViewSizer3000は青、緑、赤色の3波長レーザを用いたワイドレンジ測定のため、このような粒子径分布が広い試料の測定に有効です。
(※1 PTA: パーティクルトラッキング法 ※2 PS:ホスファチジルセリン)
別の細胞分泌物から目的のエクソソームのみを蛍光標識し、個数濃度を測定を行いました。200nm付近に蛍光標識したエクソソームのピークが確認できました。また、全粒子の個数とエクソソームの個数を比較することで、濃度比も精度よく測定できました。 3波長の光源搭載により広範囲のナノ粒子径・個数濃度を同時に測定できます。動的光散乱法(DLS)では、検出しにくい低頻度の粒子情報の取得も可能です。
ナノ粒子径分布・濃度測定装置
蛍光フィルタ(オプション)を用いた測定により、蛍光標識したEVsのみを定量することができます。L. plantarum(乳酸菌)培養上清の粒子径分布測定の結果、50~800 nmの粒子が含まれ、約400 nmのEVsが多数存在することがわかりました。
ナノ粒子径分布・濃度測定装置
sEVの産生を制御できる低分子化合物は、sEVの機能解明や新たな治療薬として期待されています。 sEVの定量法の開発におけるsEV粒子の個数濃度計測の事例を紹介します。
マウスメラノーマ細胞B16BL6にGaussialuciferase(gLuc)レポータータンパク質*とsEVマーカー(CD63)発現遺伝子をトランスフェクションし、マーカータンパク質であるCD63に結合したgLucタンパク質を用いてsEV膜内を標識しました。B16BL6-CD63-gLuc細胞培養液を遠心し、ナノ粒子径分布・濃度測定装置ViewSizer3000を用いて、上清から分離したsEVの粒子数濃度を計測し、ルシフェラーゼ(gLuc)活性の定量を行いました。その結果、gLuc活性とsEV粒子数の間には、正の相関があり(図1) gLuc活性データは、sEV定量のための推定値として使用できることが実証されました。さらに、B16BL6細胞株とトランスフェクションしたB16BL6-CD63-gLuc細胞株間において、上清に分泌されたsEV数に有意差は認められないことがViewSizer3000を用いた粒子数計測から確認されました(図2)。
このことから、今回開発されたCD63-gLuc融合タンパク質を用いた定量方法は、最小限の前処理(2000 x g、20分)で、高感度でハイスループットにsEVを定量する方法として有効な手法であることが確認されました。
*生体発光反応するガウシアルシフェラーゼ(タンパク質)
参考文献:Yamamoto, A., Takahashi, Y., Inuki, S., Nakagawa, S., Nakao, K., Ohno, H., Doi, M., & Takakura, Y. (2022).
The Identification of novel small extracellular vesicle (sEV) production modulators using luciferase-based sEV quantification method. Journal of Extracellular Biology, 1(9), e62. & Supplementary Information
ナノ粒子径分布・濃度測定装置
バイオチップ表面に糖鎖結合タンパク質であるレクチン8 種とエクソソームマーカーであるCD9・CD63・CD81 のモノクローナル抗体を固定化し、ヒト血清由来のエクソソームを流すことで、エクソソームであることの確認と表面糖鎖のプロファイリングを行いました。 反応後のバイオチップ表面とインジェクション前の差分画像をリアルタイムに表示することで、リガンドとアナライトとの結合の定性的な結果が迅速に得られました。 また、反応速度論的パラメータを同時に求めることができ、相互作用による結合変化をリアルタイム、かつマルチチャンネルで計測できました。
SPRi(表面プラズモン共鳴イメージング)
高分子薬剤が腫瘍へ集積する特性をEPR(Enhanced Permeability and Retention)効果といい、治療的機能と診断的機能を併せ持ったTheranostics(Therapy + Diagnosis)製剤では、病巣へのEPR 効果を考慮して、リポソームの粒子サイズを20 ~ 200 nm になるように設計することが求められています。 nanoPartica SZ-100V2 でリポソームを測定したところ、光増感物質の含有量の増加に伴い、粒子径分布がブロードになるとともに、算術平均径も増加する結果が得られました。 これより、「脂質二分子膜を再構成する光増感物質の含有量」と「リポソームの粒子径」に関する知見(EPR 効果に関する)を得られることがわかりました。
ナノ粒子解析装置
粒子集団全体から得られる散乱光の解析により、粒子径分布の測定を行います。さらに、ゼータ電位の測定により静電的相互作用の評価も可能です。
粒子径分布測定により、荷電比0.5の条件下では、ラメラ構造に由来すると考えられる1 μmを超える粒子が検出されました (a)。さらに、ゼータ電位測定により、荷電比0.5の条件下では、ゼータ電位は0 mV付近となり、静電的相互作用によって凝集が起こったと考えられます(b)。
ナノ粒子解析装置
異なる分散媒を用いて分散させたリポソーム製剤の粒子径分布の経時変化を、サイズごとに分級しながら測定できる遠心沈降法を用いて測定しました。非推奨分散媒で分散した製剤において、180 nm 前後の頻度が高くなり、経時的に粒子径分布が変化する様子を捉えることができました。
遠心式ナノ粒子解析装置
ブラウン運動のイメージング解析により、粒子径・個数濃度測定を行ないます。粒子一つずつを観察し、その動きを追跡するため、個数基準の粒子径分布が得られます。
粒子径分布測定の結果から、粒子の大半が200 nm程度のものであることが確認されました(a)。また、個数濃度・平均径測定結果から、荷電比0.5付近の場合に平均粒子径が大きくなり、同時に個数濃度が減少していることが確認されました(b)。このことから、粒子同士が凝集することで平均粒子径が増加し、それに伴って個数濃度が減少したことが裏付けられました。
アプリケーションデータご協力:星薬科大学 薬品物理化学研究室
ナノ粒子径分布・濃度測定装置
DDSの形態の一つとして、生体内で物質輸送の役割を担うエクソソームに薬剤を内包させる手法が注目されています。エクソソームが細胞に取り込まれる際、脂質膜のホスファチジルセリン(PS) と細胞表面にある受容体(Tim4) の特異的な結合における相互作用が関与することが分かっています。さらに、この相互作用の親和性に脂質小胞の膜流動性が関わっている可能性が考えられていました。そこで、人工的に作製した脂質小胞であるリポソームをモデル系として、膜成分の違いによるリポソームの膜流動性変化がこの相互作用にどのような影響を与えるかをOpenPlexを用いて評価しました。
受容体(Tim4)と膜組成が異なる4種類のリポソームの解離速度定数(kd)と蛍光物質を用いて測定した膜流動性の評価により、膜流動性が高いほどリポソームと受容体の相互作用が強くなることが示唆されました。
参考文献:HIROSE, Mio, et al. Enhancing the Endocytosis of Phosphatidylserine Containing Liposomes through Tim4 by Modulation of Membran e Fluidity. Molecular Pharmaceutics ,2021.
SPRi(表面プラズモン共鳴イメージング)
マイクロ流路を用いて作製したLNPの粒子径分布と粒子数を測定しました。有機相と水相の流量比が変わると、LNP粒子(A、B)の粒子径と製造量に違いが生じることを評価できました。
ナノ粒子径分布・濃度測定装置
生体吸収性ハイドロゲルは、DDS において、低分子薬物の徐放キャリアとして利用が期待されています。これまでは、大型施設で中性子散乱法を用いて分析するか、急速凍結したゲルをクライオ走査電子顕微鏡で観察するといった手法しかなく、実際にキャリアとして使用する状態で評価することができませんでした。動的光散乱法を用いて計測した網目サイズと密度の相関から機能性ゲルの設計に必要なゲルの網目サイズと温度変化といったゲルの内部構造の評価指標が得られました。
セルロースナノファイバー(CNF)ハイドロゲルは、濃度が上がると密度が高くなり、網目サイズが細かくなります。濃度の違うCNFハイドロゲルを測定し、CNFの濃度とゲルの網目サイズに相関性があることを確認しました。
ナノ粒子解析装置
ホストポリマーであるβ-シクロデキストリン(β-CD)を平均約20個持つ 鎖をバイオチップのカルボン酸基と結合するようにアミンで官能基化 し、リガンドとして固定しました。ポリエチレングリコールの4本腕の末端に アダマンチル基を有したゲストポリマーをアナライトとしてリアルタ イムで相互作用を測定しました(図1)。結果、包接錯体としてのホストポリ マー量とゲストポリマーの重合を得るには、ホスト・ゲストポリマー の濃度0.5g/L、1g/Lが最適な濃度であることがわかりました。
ホストポリマーとゲストポリマー間の相互作用をリアルタイム測定することで、ポリマーを効率よく重合できる濃度を決定できました。耐水性と界面活性剤溶液にさらすと容易に縮合するという特徴を持っている化粧品材料用ポリマー、医薬品・食品分野に使用されるポリマーの研究に役立ちます。
参考文献:Methodology to study polymers interaction by surface plasmon resonance imaging N.Vollmer et al. MethodsX 2 (2015) 14–18
SPRi(表面プラズモン共鳴イメージング)