「沈降法」は歴史的には古い測定原理ですが、近年、急激に技術革新が行われました。粒子は沈降するときに、抵抗力と浮力を受け、大きい粒子が早く沈降し、小さい粒子はゆっくりと沈降します。この現象を用い、粒子を大きさごとに分けながら分析を行います。粒子の沈降速度は、大きさのほかに密度・溶媒の密度・粘度にも依存します。沈降法は大きく2 つに分け、重力による沈降を用いる「自然沈降法」と、遠心力を用いてより強い力で沈降を促す「遠心沈降法」があります。
遠心沈降法における粒子径は粒子が沈降する速度、「沈降速度」から計算されます。沈降速度はストークスの式で粒子径と関連づけられます。ここで、Vは沈降速度、ρは粒子の密度、ρ₀は溶媒の密度、g は加速度、η₀は溶媒の粘度、Dは粒子径です。
\(V=\frac{1}{18}\times\frac{\begin{pmatrix}ρ-ρ_0\end{pmatrix}g}{η_0} \times\text{D}^2\)
沈降速度は、粒子の沈降がスタートした地点から、粒子を検出した地点までの移動に要した時間を測ることで得られます。沈降のスタート地点は測定方法によって異なります(この次で解説します)。検出地点には、光源および検出器があり、光がどれだけ透過しているかを示す「吸光度」を測定します。吸光度は、粒子がほとんど存在しない場合は低く、粒子が多く存在していて濁っていれば高くなります。遠心沈降法では、この時間に対する吸光度が最初に得られるデータとなります。
「一様沈降法」は、懸濁液の状態から粒子の沈降をスタートさせる方法です。したがって、吸光度は最も高い(試料に混ざっている粒子が多い)状態から開始し、沈降が進むにつれて吸光度が下がる(粒子がなくなる)状態までを測定していきます。こうして得られた横軸が時間、 縦軸が吸光度のグラフに対して、沈降距離を用いて横軸を沈降速度に計算し直した後、ストークスの式を用いて粒子径に計算します。吸光度の変化量は粒子の量を示すため、微分を取ることにより面積基準の粒子径分布が得られます。
粒子が含まれていない密度勾配液を準備し、そこに上部から粒子を投入して沈降を開始させる方法です。粒子がない状態から開始しているため、吸光度は低い状態から開始し、粒子が測定領域に到達すると吸光度が上がります。横軸を粒子径にすることにより、粒子径分布が得られます。
この方法で得られた粒度分布は、面積基準の粒度分布となります。この結果を個数基準や体積基準に変換するには、粒子径による吸光度の補正を行う必要があります。粒子はその大きさごとに吸光度が異なるためです。粒子の屈折率の情報を用いて、吸光度補正を行うことで、通常用いられる粒度分布が計算されます。
「遠心沈降法」は、粒子を分級しながら測定を行うため、非常に分解能が高いことが特徴です。複数ピークや複雑な分布形状を持つ試料や、混合物などの詳細な粒度分布を得るのに適しています。測定レンジと測定時間は粒子と溶媒の密度に依存します。
この手法では、粒子と溶媒の密度差が大きいとき、ナノ粒子まで短時間で測定できる一方で、測定レンジの上限も数μm 程度になることがあります。逆に密度差が小さいときは、上限が数百μm まで測定できる一方で、小さい粒子の測定には時間がかかり、1 つの試料を測定するのに 1 日以上かかることもあります。
遠心式ナノ粒子解析装置 Partica CENTRIFUGE と典型的な測定例
ナノマテリアルと呼ばれる領域の粒子を測定するには、30,000G(重力の 30,000 倍の強度の加速度)程度の遠心力が最適とされています。遠心力が高いほど、測定時間は短くなりますが、より高い遠心力を得るには条件が厳しくなります。特に、ローターが回転することで空気との摩擦が生まれ装置が高温になり、これを抑えようとすると装置内を真空にしなければならず、簡便性が落ちます。また、粒子径の算出には溶媒の粘度もパラメータとして入っていますが、温度が変化すると溶媒の粘度も変わるため、正しい粒子径を算出できなくなります。したがって温度条件を一定に保ったまま測定することが重要です。
遠心式ナノ粒子解析装置 Partica CENTRIFUGE は、30,000G の遠心力を備えており、また内蔵の冷凍機によって一定温度での測定を実現しています。また、一様沈降法とラインスタート法の両方に対応していることも、特徴の 1 つです。
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