Components & Modules

スペースフライト用回折格子

HJYでは、ホログラフィック式/刻線式の反射型および透過型スペースフライト用回折格子を長年製造しています。
2年間で、刻線回折格子の製造において我々が限界と考えてきた一線を、2つの大型プロジェクトによって超えることができました。

木星赤外線オーロラマッピング装置(JIRAM)向け回折格子

Figure 6 Picture of the JUNO Spacecraft including the HJY grating in the JIRAM

Figure 6 Picture of the JUNO Spacecraft including the HJY grating in the JIRAM

プロジェクトの1つはNASA木星ミッションです。木星大気の高解像度画像の撮影、および2〜5 μmの近中赤外線領域におけるスペクトル特性の取得でした。JIRAMはこのミッションにおける機器の1つであり、低密度でブレーズ角の小さな回折格子を同機器のために作成する必要がありました。そのような刻線回折格子の作成は、ダイヤモンドに大きな負荷が掛かることから困難とされます。その負荷量は1 cm2あたり数トンに相当します。これにより、刻線回折格子が本来持つあらゆる特性を得ることが、従来品(1 mmあたりの溝数が数百本の中密度、およびブレーズ角が中程度のもの)よりも難しくなります。溝の形状(効率に影響)と溝の真直度(波面誤差に影響)が最も決定的な要素となります。

この回折格子の寸法は60×32 mmで溝本数は30.3本/mm、ブレーズ角は非常に小さいです。顧客は最大50%の相対効率を期待していましたが、フライト用モデルについては絶対値で90%以上、認定試験用モデルについては絶対値で85%にまで達しました。 迷光の総量に関しても、溝位置の不揃いにより生じる誤差がわずか18 nm RMSと小さいことが主な理由となり、これよりずっと大きな数値を刻線回析格子に期待していた顧客を良い意味で驚かせることとなりました。波面誤差の許容値λはλ/8にまで圧縮されました。

苛酷な環境試験の後でも、これらの性能は全て維持されました。70℃〜-175℃の温度サイクル試験および温度50℃、相対湿度95%の24時間試験における光学的特性および性能への影響はなく、我々の製作したマスターグレーティングが宇宙条件に耐えられることが証明されました。4トンの探査機ジュノーは2011年8月5日、アトラスVロケットに搭載され、ケープ・カナベラルから打ち上げられました。木星上空への到達予定は2016年6月となっています[4] (Figure 6)。

可視赤外線ハイパースペクトル撮像装置(VIHI)向け回折格子

JIRAMの成功後、HJYに顧客から、ブレーズ角が小さく、溝密度が低く、非常に広いスペクトル領域を持つ、さらに難度の高い回折格子の製作依頼がありました。

機器はVIHI(可視赤外線ハイパースペクトル撮像装置)と呼ばれ、水星表面観測の国際ミッション「ベピ・コロンボ(BepiColombo)」に使用される数々の機器の一部です。VIHIの光学機器は望遠鏡と分光器により構成されており、400〜2000 nmのスペクトル領域(スペクトルサンプリング:6.25 nm)で、近水点での空間サンプリング間隔を100mとした、ハイパースペクトルイメージングによる惑星表面画像の取得が可能となります。対象波長が位置するスペクトルの両端において効率が最高となる、単一の回折格子の作成が課題となりました。最終的にはスペクトルの中間部を無視し、400 nmでは顧客が期待する数値のほぼ2倍、2000 nmでは数値を50%上回る効率を実現する回折格子を設計、製造しました。JIRAMの場合と同様、この回折格子は光学的特性の低下もなく全ての環境試験に合格し、我々のプロセス・品質がまたも実証されました。この宇宙探査機はアリアンV打上げロケットで2017年に打ち上げられ、2024年に軌道に到達する予定です[5]

Arnaud COTEL
Scientific Gratings Technical Sales & M arketing
Manager
HORIBA Jobin Yvon SAS
Ph. D

Pierre PICHON
Diffraction Gratings R&D Engineer
Optical Component Division
HORIBA Jobin Yvon SAS
Ph. D

Audray LIARD
Diffraction Gratings Production Manager
Optical Component Division
HORIBA Jobin Yvon SAS

Yann BERNARD
Project Manager
Optical Component Division
HORIBA Jobin Yvon SAS

Frédéric DESSEROUER
Scientific Gratings Engineering Manager
Optical Component Division
HORIBA Jobin Yvon S.A.S.

Olivier NICOLLE
Director of the Optical Component Division
HORIBA Jobin Yvon SAS

参考文献

[ 1 ]  D. Strickland and G. Mourou, Opt. Comm., 56, 219(1985).
[ 2 ]  J. H. Sung, S. K. Lee, T. J. Yu, T. M. Jeong and J. Lee, Opt. Letters, 35, No.18, 3021(2010).
[ 3 ]  S. Laux et al, Opt. Letters, 37, No. 11, 1913(2012)
[ 4 ]  http://www.nasa.gov/mission_pages/juno/main/index.html (09/07/2015)
[ 5 ]  http://sci.esa.int/science-e/www/area/index.cfm?fareaid=30 (09/07/2015)

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