現在レーザーや光学フィルタなどの技術向上により誰でも気軽にラマン分光測定が可能となり、ラマン分光分析でできることが日々広がっています。 半導体・ポリマー・カーボン材料・電池材料・医薬品・生命科学などの最先端分野で今やラマン分光は欠かせない分析技術となっています。
応力、不純物、超格子構造と欠陥の研究、ヘテロ構造、 ドーピング効果、超電導体など |
応力の評価
平面二軸応力が負荷されている単結晶シリコンの微小構造体周辺をマッピング測定しました。
得られたピークシフトを解析したところ、最大で約680MPaの平面二軸応力が負荷されていました。
薄膜評価
歪みシリコン(Si)や、シリコンゲルマ(SiGe)薄膜層はナノメートルオーダで形成され、その薄膜にかかる応力を評価するためには、試料の表面層だけを選択的に測定する必要があります。UVレーザーを使用すれば、Si、SiGeへの光の侵入長が小さいため、表面層のラマンスペクトルを選択的に測定することができます。633 nmのレーザーでは強い高波数側のSi基板由来のピークが支配的ですが、351nmのレーザーで測定したスペクトルでは、Siのラマンバンドはほとんどなく、最表面SiGe層のラマンバンドのみが測定されています。
多形同定、ブレンド材料の分布状態解析、 モノマーおよび異性体の分析、結晶性、配向性、 多層構造、重合反応のモニタリング、複合材料の解析、 純度および欠陥の研究、酸化、エージングなど |
フィルム評価
フィルムの強度や透明性、偏光などの特性はそのフィルムの分子配向性に依存し、偏光ラマン測定によりフィルムの分子配向性を評価することができます。
フィルムを作る際の延伸工程では、ランダムに並んでいた分子が
規則正しく延伸軸方向に配列します。
C-H結合の配向方向に対してレーザの偏光方向
((1)試料角度0°および(2)90°)が異なると、ラマン散乱励起効率に違いが出るため、その強度を比較することでフィルムの分子配向方向がわかります。
樹脂中のフィラー評価
樹脂とフィラーが同じ色の場合、光学画像では区別することが困難な場合が多く、またフィラーは無機物のものが多く低波数側にスペクトルが出るためFTIRには不向きです。ラマン分光法では分子の結合状態の違いを識別できるため、各成分の分布を分析することが可能です。
DLC(Diamond Like Carbon)、フラーレン、ナノチューブ、 ダイヤモンド、グラファイト、炭素薄膜品質分析、 ハードディスクコーティング、カーボンブラック、 複合材料および繊維など |
カーボン材料の評価
ダイヤモンドの特性が評価できます。マッピング測定を行えば、種々のパラメータでイメージングが可能です。
ラマン測定により、グラフェンの層数がわかります。
Gバンド、Dバンド、RBM*から、カーボンナノチューブを評価することが可能です。シングルウォールカーボンナノチューブでは、RBMを解析することで、カーボンナノチューブの直径、カイラリティを評価することができます。
* Radial Breathing Mode
(二次電池)電極スラリー、活物質結晶性、 全固体電池固体電解質、電極劣化、 (燃料電池)高分子電解質 |
電極材料劣化評価
充放電サイクル試験前後の三元系リチウムイオン電池断面の正極活物質Li (Co,Mn,Ni)O2のラマンスペクトルとラマンイメージです。充放電サイクル劣化に伴い,A1g振動モードのピーク強度が低下し,Eg振動モードのピーク強度が相対的に増加していることがラマンスペクトルより確認でき、このA1g振動モードのピーク強度をプロットしたラマンイメージングにより、サイクル劣化した活物質の分布の可視化が可能です。
錠剤中の薬剤分布、受入れ薬剤の検証(ベリフィケーション)、 結晶多形、結晶相の解析、不純物、コンビナトリアルケミストリー、 生分解ポリマー、ハイスループットスクリーニングなど |
錠剤中薬効成分分布評価
顕微ラマン分光法は、高い空間分解能を有することから、医薬品や生体試料などの微小領域の組成・構造の違いによる可視化に有効で、特定成分の分散性評価や各成分の分布を面積比率として算出することも可能です。
高速マッピング機能「SWIFT」と高感度検出器「EMCCD」により、医薬品錠剤の状態の分布を高速、正確に確認できます。
共焦点性能が高いためクリアな微小成分イメージングを実現できます。
錠剤中薬効成分定量評価
超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)と非常に相関性の高い定量結果が透過ラマン分光法で得ることができました。
近赤外吸収法(NIR)と比較しても、高感度かつ1試料あたり数秒という短時間で測定ができます。
生体適合性、DNA、免疫性タンパク、細胞内組織、 オリゴ糖、コレステロール、脂質、ガン細胞、 新陳代謝促進物質、生体外物質の侵入、病理学など |
細胞の分化状態判別
ラマンスペクトルを多変量解析による成分抽出、クラスタリング、および三次元座標上にプロットすることで、細胞腫の違いが明らかになりました。
細胞内薬物分布評価
ガン細胞に取り込まれた薬物 からのSERSスペクトルを観測 することで、 細胞内の薬物の分布情報をラマンイメージとして得ることが 可能です。
※SERS:Surface-Enhanced Raman Scattering
● Courtesy of Igor Chourpa, Pharmacy Faculty, University of Tours
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